超大型連続百名店小説『世界を変える方法』第6章:働いて休んで働いて休んで休もう 3話

フランス帰りのカケルは、「アパーランドの皇帝」として問題だらけのこの国に革命を起こそうとする。かつてカリスマ的人気を集め社会を変革しかけたアイドルグループ・Écluneをプロパガンダに利用しながら。
第6あらすじ
有名企業「サンクスインターナショナル株式会社」(通称:TI社)で若手女性社員・黒澤ユウカの過労自殺事件が発生した。社長の真黒は謝罪するどころか黒澤を甘ったれと批判し大炎上。さらに、あけぼの大学法学部教授の石竹が真黒の考えを全面的に支持し黒澤を中傷する投稿をしてこれまた大炎上していた。
カケルはTI社に対し「働いて5班」を、あけぼの大学に対し「休んで4班」を結成、真黒と石竹にじわじわと迫り罪を与える作戦を開始した。

*この作品は完全なるフィクションです。実在の人物・店・団体、そして著者の思想とは全く関係ありません。こんなことしようものなら国は潰れます。

  

この日のカケルは「休んで4班」を動かすためあけぼの大学に班長新井と班員見山を遣わした。大学は秋学期の真っ最中であり、渦中の石竹教授が担当する憲法学の講義に潜り込む。

  

え〜プログラム規定説とは、25条の文はあくまでも社会的指針を示したものに過ぎずこれを基に権利を認めることはできないとする…
「ふあ〜、眠くなってきた〜。何だあの退屈な喋り方」
「大学の教授って大体ああですよ」
「教えるというよりただのオタク話。内容が入ってこないからみんな眠くなってる」
「教授も学生もやる気が無さすぎる。だからこの国の大学生は世界からナメられ…」
「そこ!私語を慎みなさい!」
「ヤバいキレられた」
「名前は?試験で減点しといてやる」
「逃げるぞ」
「出てけ出てけ。真面目に受講している学生の邪魔だ」

  

「まったく、話はダラダラしてるくせにキレる時だけ一丁前なんだから」
「でも私語は良くなかったです」
「そうだな。そういえば受講生少なかったよね。やっぱりあの発言の影響?」

  

すると講義室から1人の学生が出てきた。
「あ、怒られて出てった人だ」
「ごめんな邪魔して。思わず本音こぼれてさ」
「ですよね。あの教授、俺も大嫌いです」
「おぉ、そうか……」
「みんな嫌いですよ。あの発言の前から嫌われ者だったけど、完全に好感度ゼロになりましたね」
「やっぱり。授業もつまらんし」
「憲法ならみんな春学期の講義取りますね。春学期に落単した人の救済みたいなものです」
「そうなんだ。あ、もし2限無かったら、お騒がせしたお詫びにランチ奢ろうか?」
「えっ……じゃあお言葉に甘えて」
「カキフライはどう?」
「好きですよ。もしかしてあそこ?早く行かないと混みます」

  

あけぼの大学の近くにある人気定食屋。春夏はとんかつなどを出す普通の定食屋なのだが、秋冬になるとカキフライしか提供しない思い切った業態へと変貌する。行列店として知られるが、冷え込み厳しくなった木曜10:42頃の到着で9番目であった。少し前までは同じくらいの時間で20人超の大行列だったというから幸運である。

  

「それにしてもあなた達は何をされているんですか?」
「会社員ですけど、ゆる〜くやってます」
「石竹教授がどんな奴か見たくなってね、ふらっと」
「珍しいですよ、こんな大鬼教授の講義にモグリなんて」
「大鬼か」
「教授への口コミみたいなのがあって、良い教授は神、悪いのは鬼。鬼の中でも特に怖いとか独りよがりとか、試験難しくて単位くれなかったりする教授は大鬼と評されます」
「面白そうだな。じゃあ石竹も」
「かなり厳しいです。生活指導の教師並みに授業態度にはうるさい」
「大学だと大体その辺緩くなるもんね」
「説教じみた雑談するわ、自分の政治思想を垂れて押し付けるわで余計評判が悪いです。試験も難しいし、噂によれば自分の思想にそぐわないこと書くと減点だそうです」
「それが事実だとしたら大問題じゃん」

  

後続の客も疎らであり、この日は開店5分前に到着すれば余裕で1巡目に入れる状況であった。1人客の場合はカウンターに座れない場合、掘り炬燵で相席になる。

  

前金制のため財布を取り出して順番を待つ。その感店からは油の香りがしてきて、その中になんとなく牡蠣の香りも感じ取った。

  

「それでも受ける人いるんだね、石竹の講義」
「受けなきゃいけないんです、教職取る人は。だからみんな必死で春学期に単位取ります」
「そっちの教授は怖くないんだ」
「鬼ではないですね。でもその教授もう退官だから来年は春も石竹がやるとか」
「それ最悪じゃん。でも今回の発言は流石に問題すぎる。大学側も止めるんじゃない?」
「止めないっすよ。石竹は幹部との癒着が激しいから、逆らうようなことはしないでしょうね」
「もどかしい」
「あまり自浄作用無いからな、うちの大学。世間からの印象も下がる一方。就活にも影響するかもしれない。不安すぎる……」

  

カキフライの登場。2個か3個か選べて、食べ盛りの学生は3個にしていたが新井と見山は2個で我慢する。それでも1個が拳骨の大きさであり食べ応え満点である。

  

中には6〜7粒の牡蠣が固められて入っている。そのため、牡蠣の膨らんだ部分から旨味たっぷりの汁が溢れ出す感覚よりも、牡蠣の襞のグニグニした食感の方が支配的、という印象である。ヴォリュームを求める人、口いっぱいに牡蠣を詰め込みたい人にとっては嬉しい料理である一方、牡蠣1粒1粒を楽しみたい人にとっては拍子抜けかもしれない。

  

「そんなに不安なら、自分でその不安拭おうぜ」
「えっ?どういうこと?」
「アパーランドに聞いてみたら?何か手打ってくれるかも」
「確かに動くかもだけど、怖くね?」
「嘆くだけじゃ状況は変わらない。闘わないと」

  

迷った末、その学生はアパーランドに問い合わせをした。新井と見山はすぐそれを受領し、皇帝カケルの指示を仰ぐ。
「静かなる抵抗をしよう。そう、ボイコットだ」
「講義を中止に追い込むんですね」
「でも難しそう」
「そうだな。学生くんには他の受講生を説得しつつ、こちらも悪戯を考えておくよ」

  

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