超大型連続百名店小説『世界を変える方法』第6章:働いて休んで働いて休んで休もう 5話

フランス帰りのカケルは、「アパーランドの皇帝」として問題だらけのこの国に革命を起こそうとする。かつてカリスマ的人気を集め社会を変革しかけたアイドルグループ・Écluneをプロパガンダに利用しながら。
第6章あらすじ
有名企業「サンクスインターナショナル株式会社」(通称:TI社)で若手女性社員・黒澤ユウカの過労自殺事件が発生した。社長の真黒は謝罪するどころか黒澤を甘ったれと批判し大炎上。さらに、あけぼの大学法学部教授の石竹が真黒の考えを全面的に支持し黒澤を中傷する投稿をしてこれまた大炎上していた。
カケルはTI社に対し「働いて5班」を、あけぼの大学に対し「休んで4班」を結成、真黒と石竹にじわじわと迫り罪を与える作戦を開始した。

*この作品は完全なるフィクションです。実在の人物・店・団体、そして著者の思想とは全く関係ありません。こんなことしようものなら国は潰れます。

  

社に戻った白石は相変わらず上司に詰られる。
「お前さ、何回やればまともに案件取って来れんの?」
「申し訳ございません!リサーチが甘かったと思います!」
「もっと具体的に言え!そんなんじゃいつまで経ってもポンコツ営業のままなんだよ。どこが甘くてどうやったら改善できるんだ、言え!」
「それは……」
「すぐ気づいて言えないようじゃ無理だね。ノルマどうするの?下げる?併せて給料も下がるけど」
「そのままで……」
「じゃあちゃんとやれよ。お前には寝てる暇なんてない。休日も返上だ。いいな!」

  

「見ているこっちまで胸糞悪くなる」
「これはただの支配欲ですね。叱り飛ばす自分かっけぇ、って勘違いしてるんですよ」
「病気だな。そういうお前は仕事できんのかよ」

  

営業部長は仕事できる人なのか、白石に問うてみたカケル。深夜3時に返信が来ていた。

  

できる人ではあるみたいです。ただ、勝ち目のある営業を選んで担当して、部下には断られること前提の案件を押し付けているとの噂は聞いています。あくまでも「チャレンジ枠」だ、能力があれば商談成立に持っていける、と主張するのですが、先方から嫌味言われるのが嫌なだけなんだと思います。

  

「じゃあアンタがやってみろよ、って話だよな」
「禿同です。自分の出世しか考えていない」
「部下に鞭打って社長にはぺこぺこ。存在意義を見出せないね」

  

しごでき学校を想起させる大声朝礼は耳栓をしながら流し見する。9時になると真黒社長が入ってきて激励する。
「TI社は今やブラックのレッテルを貼られている。それを覆すには結果が不可欠だ。圧倒的な業績で批判の声を抑え込め。いいな?」
「はい!我が部署は全力で新規顧客をかき集め、既存の顧客からも新規取引を獲得します!セールストークのロープレを強化し、臆することなくお客様にアタックします!みんなも良いな?ノルマは最低限だ!ノルマを超えていけ!」
「はい!」

  

「良く言えば熱血だけど、悪く言えばカルト宗教。大体何だよノルマって」
「必要なものではあるけど、社員を詰める道具と化しているのが問題なんですよね」
「足りていないのなら一緒に対処法考えてあげるべき。至らぬ点は指摘すべきだが圧をかけるのは違う」
「それが理想ですよね」
「もし俺にハラスメントの素振りがあったら指摘してな。風通しの良い社会にするのがアパーランドの役目だからな」

  

白石が外出したのを確認して、カケルは休んで4班に注目を移す。新井と見山が打ち解けアパーランドに繋いだ学生・神田が、他の受講生全員からボイコットへの協力を得られた、との連絡を受けていた。昨日のうちに隠しカメラを忍ばせており、学生のいない講義室を見て石竹がどういうリアクションをするか観察していた。
「どうだ、面食らったか石竹」
「それが平然としてますね。授業時間の半分過ぎてますけどまだ立ってます。手元のメモをひたすら確認しながら」
「根性論押し付けるだけあるな。そこだけは褒めてやる」

  

このように、ボイコットだけで石竹を下ろすことは困難である。誰も講義を聴かないからクビ、なんて単純な話でないことは承知しているカケル。

  

一方、見山はアパーランドの顔を一旦封じ、神田およびボイコットに協力してくれた学生2人と合流した。
「よっす!」
「見山さん、お疲れ様です。ボイコット作戦、取り敢えず動き出しは順調です」
「アイツらこの後何するんだろうね」
「さあ」

  

この日の一行は3限が空きコマであったためゆっくりランチを摂ることとする。彼らが指定したのは意外にも魚定食の店。粕漬の魚を看板商品とする老舗のイートインである。
定番商品は銀鱈京粕漬・銀鮭京粕漬・鰆酒粕白味噌漬、およびそれら3点盛りの定食。時間はかかるがその他色々な魚も頼める。金目鯛が気になる見山であったが他が皆3点盛りを選ぶから同調してしまった。
「渋いね」
「偶には魚食べないと、栄養が偏るので」
「たしかに俺、学生の頃は揚げ物ばっかだったなぁ」
「腕白しちゃいますよね。でこの2人は食事に真剣なんです。時間かけて食べたいんだよね?」
「はい。じっくり味わいたいです」
「時間に追われたくないですね」
「そうなると社会人になった時大変だな。1時間って長いようで短いから」
「おかしいですよねその制度。自分が納得いくまで休ませてほしい」
「よくぞ言ってくれた!この国の働き方にはマジで余裕が無い」
「ですよね。石竹なんて論外中の論外」

  

定食がやってきた。鰆から食べてみる。ふっくらした身のコアに味噌のコクが篭っており絶品。
紅鮭。酒粕の味は最初こそ強く感じるがすぐ慣れる。こちらも水分を飛ばしすぎず、ご飯に合う美味しい鮭となっている。
そして鱈。この日は少し脂のりが控えめに感じられた。ただ皮目の部分には脂がしっかりあり、酒粕と合わさって大立ち回り。ご飯が進む。これに限っては単品で頼んだ方が、皮の比重も高まって鱈を鱈腹楽しめるかもしれない。
「小鉢はよくわからん食べ物だな」
「でも体には良いですよ。ここでしか食べられないでしょうし」
「素晴らしい定食だ。次来た時は絶対他の魚も食べよう」

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