連続氷菓小説『アイツはゴーラーでコイツはジェラ』②(壽々喜園/浅草)

不定期連載『アイツはゴーラーでコイツはジェラ』
アイドルグループ「綱の手引き坂46」の特別アンバサダーを務めるタテル(25、通称「コイツ」)は、メンバー随一のゴーラー(かき氷好き)・マリモ(19、通称「アイツ」「天才」)を誘い出し、美味しい氷菓探しの旅をしている。

  

次の店は浅草寺の裏手にある。観音通りを北進する2人。

「コイツさん、中華そば屋さん行きません?」

「行かないよ。お昼ちゃんと食べたし」

「あ!焼肉屋さんありますよ」

「だから食べないって」

「もんじゃ屋さん!美味しそう」

「食い意地張りすぎだろアイツちゃん」

「だって浅草来るの初めてですもの」

「次のジェラートだって、浅草を象徴する食べ物だぞ」

  

浅草寺の傍を通り抜けて言問通りを渡る。左に向かい、反対側に病院のある辺りが目当ての店である。

「混んでいますね…」

「ここはすごい有名店だからな。上手く隙間見つけて位置取りする必要がある」

  

名物はもちろん抹茶ジェラート。7段階の濃さがあり、最高レベルのNO.7ともなると茶葉をそのまま舐るのと遜色ない。ただシングルにしろダブルにしろ、NO.7を入れてしまうと値段が急にはね上がる。その一つ手前のNO.6でも十分濃く、コスパを考えるとこれが最も妥当だろう。

「マリモちゃん大丈夫?濃すぎない?」

「ちょっと大人の味ですね。これは大食いできないです」

「まさかここでも2周しようとした?」

「思ってましたけど、難しいですね…」

「そりゃそうだ。ここは用量守ろうぜ」

  

ダブルにしてもう一つの味を選ぶ場合、抹茶以外でもほうじ茶や玄米茶、和紅茶といったお茶系が中心であり、あとは黒胡麻、小豆、いちごくらいしかない。いちごを選んだ子供っぽいマリモを尻目に、大人ぶるタテルは和紅茶を選択した。これもやはりお茶の味が確実にする。お茶をスイーツにするなら、余分な味が加わらないジェラートが最適だと実感した。

  

「どうだマリモ、これが抹茶だ。今まで食べた抹茶スイーツは抹茶じゃない」

「そんな言い切らないであげてください。確かにこれは最強の抹茶スイーツだと思いますが」

「これでジェラートの沼にハマってくれたね」

「はい。でもやはりかき氷も食べたいです…」

「じゃあ次の旅はかき氷にしようか」

  

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