妄想連続百名店小説『彩とLOVE AFFAIR』2.SEA OF LOVE(レナーズ/みなとみらい)

グルメタレント・TATERU(25)が、モデルとしても活躍するアイドル・アヤ(24・綱の手引き坂46)と繰り広げる、夢のような禁断の横浜デート。全7話。

  

ポロシャツに着替えたタテルと、ワンピースに着替えたアヤ。ホテルの玄関を出ると、恋人たちでごった返す、いつものみなとみらいが広がっていた。コスモパニックと大観覧車、インターコンコンチ、ランドまーくんタワー、億葉倶楽部、カップラーメンミュージアム。多数の名所を眺めながら、2人はワールドポーターズに到着した。
「なんか地元のイオンモール感…一気に現実の雰囲気ですね」
「安心しろ、キミの地元よりも華やかだぞここは」
「秦野をバカにしないで!ルナっしーの地元なんだから」
「大丈夫よ、俺の足立区にはイオンモールすらないから。ここで見る夢は、ハワイの夢だ」
「ハワイの夢?いいな行きたいなハワイ、茂一さんみたいに頻繁に行きたい」

  

「えーっと、レナーズは…ん?1階だよな?フロアマップにない…」
「なんかデカデカと『Hawaiian Town』って書いてありますよ」
「そこか!わかりづらいなぁ」

  

ハワイアンタウンに行くと、レナーズはいとも簡単に見つかった。ピンク色の壁に、Leonard’sと大きく書いてあった。
しかし行列ができていた。イートインスペースは4組座ってしまえば満杯になる。休日は覚悟した方がいい。ハワイの夢に入るのは、そう簡単なことではないのだ。

  

ここで売られているのは、ハワイのドーナツであるマラサダ。ハワイに行ったことのない2人にとっては初体験のスイーツだった。プレーンのマラサダシュガーの他、シナモンシュガー、カスタードクリーム、季節限定のクリームの4種類がある。カロリーを気にするアヤはプレーンを、クリーム大好きなタテルはカスタードを選択した。

  

「うわぁ何コレ!めっちゃ柔らかい!」
「そしてめっちゃとろける〜」
「カスタードクリームは花の香りがする。マジで俺今お花畑にいるのかもしれない。すごいことしてくるな」
2人はすっかり、ハワイにいる夢に浸っていた。ここがショッピングモールの一角であることはすっかり忘れていたようだ。

  

夢から醒めた2人は、少し体を動かしたくなった。
「5階にクライミングジムがありますね」
「あ、そうか。SASUKEでおなじみ川口のやつが開いたクライミングジムだ。サスケファンなら行かなくちゃ」

  

ベテルギウスクライミングジム。貸靴・貸チョークがあるため、手ぶらでも楽しむことができる。
「アヤは運動のイメージないけど、どう?」
「苦手かも」
「でもサスケに出てる人って、意外と他のスポーツできなかったりするから。やってみないとわからない」

  

「え?どこ掴むのコレ?」
「ダメだ、足がかからない」
「アヤ、そこは持っちゃダメ」
「あはは!タテルさん体重たそう」
やってみた結果、2人とも下手くそだった。
「おかしいな。いつも神田明神に行く途中のクライミングジムでいろんな人の登りっぷり見るのが趣味なのに」
「見るのとやるのでは大違い。ってか何ですかその趣味」

  

「このあと元町の方に行くけど、どっか行きたいとこある?」
「赤レンガ倉庫って近い?」
「近い近い。行ってみよう」

  

「ここが赤レンガ倉庫か!」
「神奈川県民でも来たことないものなのね」
「秦野からだと来にくいから」
「そっか…」
タテルはしばし沈黙する。

  

「タテルさん?」
「あ、いや、赤レンガ倉庫来てもすることが思いつかなくて。特段美味い店があるわけでもないし、赤レンガ倉庫にある夢、僕は知らない」
「私は赤レンガ倉庫に来ること自体が夢でした。恋人と一緒に…」
「え?」
「ごめんなさい、『恋人』は良くなかった。そんな気分、タテルさんと味わいたいなってだけ」
「俺でいいのか?」
「うん。じゃあ写真撮ろう」
「撮ろう撮ろう!」

  

夢追う2人の笑顔、その奥にある空と海は青く澄み渡っていた。
「この写真は秘密にしておくんだよ、さもなければキミのアイドル生命が危ない」

  

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