ポケンモマスターの道を歩み始めた、ヨコハマシティヤマシタタウンに住む18歳の少女・スミレ。優しい心の持ち主にしか姿を見せない希少ポケンモ・カビンゴを筆頭に個性豊かなポケンモ達を揃えた。新米トレーナーの登竜門・ビギナーズコンペへ向けファイトを重ねる日々を描く。
☆スミレの手持ちポケンモ(現時点)
・外に出てスミレと共に歩く
カビンゴ(アブノーマル派)
・カプセルに入れて持ち歩き
ムゲンシャ(ほむら派)
スーミュラ(アイス派)
ハムライピ(ダーク派)
ムテキロウ(アルティマ派)
・そもそも自分自身
スミレジェ(ぶりっ子派)
ビギコンが間近に迫ったある日の朝。
「カビンゴちゃん、朝9時になったよ。付き合おう!」
「ンゴ⁈…ンゴォ!」
「おはよう!今日も可愛いねカビンゴちゃん」
「おはようだンゴ。ムゲンシャが気になるンゴ」
「ムゲンシャちゃん?あ、昨日より炎が強くなってる!もしかしてこれは、進化の先ぶれ?」
「そうだと思われるンゴ。今日はムゲンシャにファイトさせるンゴ」
「そうだね。1匹くらい進化させてからビギコンに挑まないと、だもんね」
「あらみんな、おはよう〜。今日の朝ご飯は外食にしましょう」
「もしかして、エルトンジョンソンスのパンケーキ?」
「パンケーキも良いんだけど、今日はもうちょっとヘルシーにお粥なんてどう?」
「お粥も美味しいよね。でもカビンゴちゃんはお腹満たされないかもしれない」
「大丈夫だンゴ。どうせお昼ご飯も食べるンゴ」
「ありがとう!そしたらアンキクラブがいいかな」

朝10時、チャイナストリートの路地にあるアンキクラブは開店時刻になっても開いておらず、前に1組が待機していた。
「お休みかな?」
「中に人いるから休みではなさそうね。開店が遅れているのかも」
そこへ店主アンキ(cv.渡辺真知子)が出てきた。
「すみませんね、もう少ししたら開けますね。あ、もしかしてファイトご希望ですか?」
「はい。うちのムゲンシャを闘わせます」
「それならお粥食べた後ファイトとしましょうか。後で私の手持ちポケンモ見せますね」
「はい、ありがとうございます!」
このクラブ自慢の粥は11種類。牛豚鶏、内臓系、海鮮系、野菜と多様なラインナップだが、そのうち貝柱粥はアルティマ派ポケンモ並にレアものであり、この日も入荷が無く注文できなかった。カビンゴは大人しく三鮮粥(かいせんるいかゆ)を選択する。
「もつも名物っぽいンゴ。朝っぱらだけど頼めるのかンゴ?」
「訊いてみようか。すみません、もつ皿も頼めますか?」
「頼めますよ」
「3皿くださいンゴ」
カビンゴがもつ皿を頼むと、先客も思い出したかのようにもつ皿やレバ皿を追加注文する。
「カビンゴちゃんがいるとみんな食欲全開だね」
「食べることは楽しいンゴ。我慢なんてしなくていいンゴ」
「いっぱい食べていっぱい寝て、カビンゴちゃんは幸せ者だねぇ」
「万歳ンゴ」
ここでアンキより手持ちポケンモの紹介がなされる。
「私の手持ちはほむら派が中心ですね。ムゲンシャの最終進化形カタナカジをはじめ4匹にほむら派が入っています」
「なるほど。ほむら派のポケンモとは前もファイトしたことあるんですよね。別派閥の方が良いかな…」
「そしたら敢えて相性の悪いポケンモと闘ってみますか?アクア・フライ派のカミョメです」
「カミョメ!大好きなポケンモです!」
———
「カミョメが跳んだ〜、カミョメが跳んだ〜!」
スーミュラ役のスズカがアドリブで、しかも本家を目の前にして歌い出した。
「すごい肝の据わり…」
「スズカちゃん!素晴らしい歌声だわ」
「ありがとうございます…」
「噂には聞いていましたが想像以上に整った声でいらして。一緒にライヴ回りたいわ」
「畏れ多いです」
「良かったですねスズカさん」
「流石だスズカ。でもあまり人をびっくりさせないでな。歌い出すの突然だったから」
———

まずもつ皿から戴く。「もつ」とは言うが小腸ではなく、第二胃ハチノスを茹でたものである。プリプリしていて、且つもったりとした旨味も感じられる。ちょいとスモーキーさも覚え、中華醤油のさっぱりとした味付けでスイスイと食べてしまえる。
その頃ボケット団は、寝ぼけ眼を擦りながらチャイナストリートを歩いていた。
「かったるい。あ〜あ、カビンゴがその角から飛び出して来ないかな」
「来る訳ないでしょ、アタイらみたいな性格じゃ。他人のカビンゴ掻っ攫うくらいしか手に入れる方法ないの」
「いいじゃん夢見るくらい」
「現実見ろよサッチー。アザトトガールのカビンゴを捕まえる、これがアタイらの目標よ」
「段階踏んでやればいいじゃん。まずはムゲンシャから…」
「悠長なこと言うなよ」
「失敗続きのくせに」
「0か100なんだよアタイらは」
「いいように言うな!」
No.021 カミョメ アクア派/フライ派
かもめポケンモ
ハーバーライトが朝日に変わる頃飛び立つ。知名度の割には正しい姿を思い浮かべられる者は少ない。

近くでボケット団が喧嘩していると知らないスミレ一行は海鮮粥を食べる。まず粥自体は控えめで優しい出汁に、米が円やかにとろけてコクを生む。

海鮮のラインナップは海老、烏賊、そしてつぶ貝。つぶ貝は旨味も磯の風味もたっぷり詰まっていて、海鮮味の下地を成している。海老も身が引き締まっていて少し磯の風味がある。烏賊は完全には火が通っておらずプリプリで、やはり磯の風味を纏う。
「揚げパンが美味しいンゴ。油感と甘みあって最高だンゴ」
「これだけ単品注文もできるみたいね。次は揚げパンマシマシにして食べようかな」
「それではスミレ様、私のカミョメとファイトいたしましょう」
「楽しみですね」
チャイナストリート公園にてファイトを始める。
「先攻はスミレ様のムゲンシャからどうぞ」
「はい。いけムゲンシャ、ナインダトイフだ!」
「ミョーーッ!」
「なるほど、確かにお強い。カミョメ、スイヘーリーベーだ!」
「シャーーーッ!」
「アクア派の技だからダメージが大きい…ムゲンシャ、ひのわくうやだ!」
「ミョーッ!」
「カミョメ、ありあけのハーバーだ!」
「シャーーーーーッ!」
「嘘でしょ…もう負けちゃったのムゲンシャ⁈」
唖然とするスミレ。すると突如、カミョメが光に包まれる。
「これは…進化ですよ進化!」
「カミョメが進化すると…マーサマーサだ!進化したのはムゲンシャちゃんじゃなかった…」
「スミレ様、ファイトして下さってありがとうございます。お陰様で進化できました〜!」
感謝されても本望ではないため戸惑うスミレ。その時、ボケット団が現れてマーサマーサとカビンゴを檻に捕える。
「ボケット団!貴女達何を⁈」
「貴女達何を、と言われたら!」
「答えてあげるが使命なり!」
「世界の腐敗を防ぐため」
「世界の秩序を守るため」
「不器用でヘタレな悪を貫く」
「ちょっと憎めぬ敵役」
「ミッチー!」
「サッチー!」
「陸海空を駆け回るボケット団の二人には」
「スノウカントリー白い明日が待ってるぜ」
「ニャンちゃって!」
「まあ何と酷いことを。人のポケンモ奪って何が楽しいのでしょう」
「楽しかねぇよ。仕事なんだよアタイらの」
「そんな仕事辞めておしまい」
「あれぇ?今日はヤンキーやらないんですかアザトトガールさん?」
「うるさい…」
敗北のショックか、小さな声で言い返すのが精一杯のスミレ。檻の中のマーサマーサとカビンゴも、必死で抵抗するが破れない。
「ヘッ、これで漸く勝利ですな我々の。ボスも大喜び間違い無し」
「ムゲンシャはどうする?」
「いらねぇよこんな弱っちいの。たった2発技食らっただけで倒れるんだぜ?」
「カビンゴの価値が下がるもんな。放っておこう
「このまま活躍もせずに捨てられるかもね。アタイらが知ったことじゃないけど」
「カビンゴ以外は二流二流!おいでカビンゴちゃん、アタイらが強くしてあげるからね〜」
No.022 マーサマーサ フライ派/メタル派
うたロボポケンモ
歌わせる時は伸び伸びと歌わせてあげよう。音程を合わせるよう言いつけすぎるとメカみたいな味気ない歌声になるぞ。
自分、そして主スミレをバカにされたムゲンシャは炎を強める。檻の壁はやがて溶けて穴が空き、力技を決めたカビンゴがマーサマーサと共に脱出した。
「待って、何で出てきてんのよ⁈」
「ムゲンシャを馬鹿にするなんて許さないンゴ」
「マーサマーサ!」
「スミレさんも元気出すンゴ」
「ありがとうカビンゴちゃん…」
「ムゲンシャ、君の力でボケット団を倒すンゴ。安心して、君は強いンゴ」
「シャー…」
「ムゲンシャ、ひかりのたばよ!」
「シャーーー!」
「お喋りが長すぎたのよサッチー!」
「こうなるなんて思わないだろ〜!」
「いやーんばかーん!」
元気を取り戻したスミレは、いつものように笛を吹きヴァイオレットカードを出す。
「ムゲンシャちゃん、頑張ってくれてありがとう」
するとムゲンシャが光に包まれる。
「もしかして…進化?」
ムゲンシャはユーカクに進化した。
「カクー!」
「進化おめでとう!」
「おめでとうだンゴ」
「カクー!」
「スミレ様のユーカクはお強いと思います。私のマーサマーサを救って下さりましたからね。燃え盛るその炎で、ビギコンも勝ち抜いて下さい」
「ありがとうございました!あ〜やった〜、初めての進化だぁ」
ビギコン間近にして遂に手持ちポケンモの進化をみたスミレ。敗北の悔しさは強さとなって実力に蓄積されていく。いよいよ次回、ビギコン開幕。スミレは人々の期待に応え、優勝を勝ち取れるか?乞うご期待。
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