連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』117杯目(流。/十条)

人気女性アイドルグループ「綱の手引き坂46」の元メンバー・京子と、綱の手引き坂→TO-NA特別アンバサダーを務めるグルメ芸人・タテル。2人がラーメンについて語り合うYouTubeチャンネル『僕たちはキョコってる』が人気を博している。今宵、日曜ゴールデンの番組『浜千鳥の神連チャン』に2度目の出演。サビを音程を外さず10曲連続で歌い切ったら200万円が貰える人気企画に挑む。
(各曲のレベルはオマージュ元に準拠。オマージュ元未登場の曲は某まとめWikiの予想曲リストを参照して掲載)

  

ナレーション「神連チャン達成、そして結婚&浜千鳥ご祝儀まで残り2曲。続いてレベル9、何を選ぶ?」

  

〜LEVEL9〜
①STEADY/SPEED
②逢いたくていま/MISIA
First Love/宇多田ヒカル *過去失敗
④プロミスザスター/BiSH
⑤やさしいキスをして/DREAMS COME TRUE

京子「結婚する前に解決しないとですね。宇多田ヒカルさんの『First Love』でお願いします」

  

濱内「いいね!めっちゃ聴きたい」
ドアノブ「過去失敗しとんや。歌いやすそうだけど」
山家「ドアノブさんが言うことじゃないです」
ナレーション「超高音にも関わらず揺れ動く音程を捉えるのが鬼ムズい!そしてこの曲ではかつて」
〜京子の過去の挑戦プレイバック〜
ナレーション「熱語りの末失敗した経験がある!」

  

京子「磯野ワカメです」
大吾「やっと知ってるのが来た」
京子「かつて舞台サザエさんで演じた大切な役です。身が引き締まりますね。前回最後の『love song』直後のフェイクで低く入っちゃって、今回はそこを重点的に練習しました。前回より歌う範囲が2倍になっているので、そこがちょっと心配ですね…」

  

タテル「ワカメちゃん〜!」
京子「堀川くん!」
ドアノブ「なんかまた変なことやりそう」

  

〜京子のグッズを多数持って現れる堀川タテル〜
京子「ねぇ〜、恥ずかしいんだけど」
タテル「僕の部屋には『京子コーナー』というスペースがあるんだ。そこにあるグッズを持ってきた。トートバッグに入れて、サイリウム、うちわ、生写真、ステッカー、ラーメンの丼、あと抱き枕も持ってきちゃった。この写真が特にお気に入りなんだ、頭のてっぺんから足の裏まで全部可愛くてウヘヘ…」
大吾「気持ち悪っ」
京子「私のこと大好きなのはありがたい。でもちょっとやりすぎかな」
タテル「そう?じゃあ大漁旗作ってくれば良かったね。振って応援して」
ドアノブ「もう訳わからん…」

  

タテル「僕、京子ちゃんのお父さんお母さんにお願いがあってさ、京子ちゃんの夫としての振る舞いを教わりたい」
京子「いや、急に言われても…」
タテル「僕は足立区出身で行儀も決して良いとは言えず…」
ドアノブ「怒られろ全足立区民に」
タテル「身なりや姿勢、食事マナーなどを、スマートな女性を育て上げた京子ちゃんの親御さんに教わりたいのです」
大吾「情けないやろ」

  

京子「それは違うと思う」
タテル「そっか。じゃあその代わりに最高級の錦鯉送ります」
京子「何でそうなるの」
タテル「名前はキョウコね。キョウコはキョウコでも深田恭子の恭子」
京子「話進めないで!嫌だ!」
ドアノブ「誰か摘み出せよ、このサイコパス男」

  

———

  

1月3日の昼、御節料理に飽きたタテルと京子は新年初のラーメンウォークに出かける。
「ねえねえ、ここ行かない?2日3日限定の振る舞い酒があるってよ」
「お酒目当て?まあいいけどさ、飲み過ぎだよタテルくん」
「正月くらいいいじゃん」
「じゃあ4日からは禁酒ね。また肝臓病で倒れたら後が大変だから」

  

振る舞い酒を出すラーメン屋とは、十条駅の赤羽寄りホームの裏手にある「流。」である。御節料理に飽きたと思しき人々が4人並んでいた。その4人が一気に入店し、列の先頭に来たタテルと京子はかなり待たされた挙句後ろの2組と同時入店となった。恐らくロット制が敷かれているのだろう。幸先の悪いスタートだとタテルは感じた。

  

無料の振る舞い酒を所望したタテル。銘柄はインスタで紹介されていたが、その中から出てきたのは天美であった。鳳凰美田を期待していたタテルは勝手にがっかりする。さらに目の前にあるレンゲが少し濡れていて、タテルは臍を曲げてしまう。

  

「タテルくん、新年早々嫌な顔しないで。良い年にしたいのに」
「ごめんごめん、発作が出てしまった」
「私といるだけで幸せだ、って言ってたよね?その気持ち、変わってないよね?」
「変わってない。俺には京子がいる。それだけで十分幸せだよな…」
「いちいち拗ねない。わかった?」
タテルの両頬を軽く掴み、クイっと自分の方に向ける京子。
「わかったよ」

  

トッピング全部のせのラーメンがやってきた。旧年は10軒近く食べ歩いてきた煮干しラーメンであるが、それらとの大きな違いはやはり麺であろう。細くプチプチとした麺を合わせるのが定石な中、こちらはツルっとした中太麺を合わせている。結果として、麺を啜り上げるとスープの明るさが際立つ。チャーシューも肉厚で柔らかく食べ応え満点。色々文句を垂れていたが、出てくるラーメンは結局美味しくて参ってしまうものである。

  

「良かったじゃんタテルくん!いつの間にか大行列だよ!」
「ホントだ。中途半端な時間なのにこんな並ぶんだ」
「今年も美味しいラーメン、いっぱい食べようね」
「京子と一緒なら何でも美味しいさ。今年もよろしくな」

  

———

  

タテル「結婚式は代官山のフレンチでやるんだ」
京子「えそれは嬉しいかも」
ドアノブ「日曜ゴールデンで結婚式の話し合いすな」
タテル「僕が毎月のように通ってたフレンチの店があって…」
山家「金持ちだなタテル」
タテル「その支配人さんが今そこでウェディングのマネジャーやってるんだ。もう5年前から伝えてたからね支配人さんに、佐藤京子と結婚しますって」
京子「えっ⁈」
ドアノブ「おぞましい!シンプルにキモい」
山家「反応困るやろ。支配人さん苦笑いしただろうな」
タテル「言霊というものがありますからね。何事も言っておかないと」
ドアノブ「身分考えろ」
京子「でも冗談じゃなくて本気で思ってくれてたのがすごく嬉しい」
ナレーション「そしてここで、京子が2人の出逢いを語り始める」

  

京子「タテルくんがガツガツ来たように見えるかもしれないんですけど、最初に声かけたのは私なんです。タテルくん戸惑ってたけど付き合ってくれて。そこからYouTubeやったりライヴやったりして絆を深めてきました」
濱内「そうなんや」
京子「タテルくん、こう見えてめっちゃ寡黙なんですよ。でもその分自分の好きに正直で。グルメや旅や鉄道、そしてTO-NAのことを心から楽しんでいるタテルくんの姿を見て、私も自分らしくいようと思えた。バラエティは好きだけど得意ではなくて、それでもタテルくんは『笑いを取ろうとしなくていい、偶にふと現れる京子らしさが堪らなく面白いんだ』と真っ直ぐな目で言ってくれた」
大吾「説得力ないな」
京子「病気がちな私を看病してくれたり、役作りに付き合ってくれたり、悩みを聴いてくれたりと、私に尽くしてくれるタテルくん。タテルくんの『好き』の一員に、私もなれているのかな」
タテル「なれてるさ。京子といない人生なんて考えられない」
京子「タテルくんとだったら、つらいことも乗り越えられる。この曲の最高音、私の音域よりも高いんですけど、意地でも当てます。絶対にクリアして、タテルくんに運命を繋ぎます」

  

ナレーション「シャイで口下手で、ちょっとクセが強くて、1人だと何もできなくて、愛情表現が重い男。だけど誰よりも自分らしさを尊重してくれる、そんなパートナーを得て強くなれた京子。レベル9、宇多田ヒカルの高音曲、リベンジなるか?」

  

ドアノブ「タテルは堀川くんというより、雛形あきこさんの旦那っぽいな」
山家「天野さん?」
ドアノブ「そうそう。本人いるのに本人のグッズ買いまくる」
〽︎You will always be inside my heart…
濱内「メカとは全然違うね。しっかり自分のものにしてる」

  

〽︎You are always gonna be my love…
山家「結構しんどいなこの曲。浜千鳥のお2人にはわからんでしょうけど」
ドアノブ「おいナメんな!」

  

〽︎You are always gonna be the one…
濱内「くるぞくるぞ!イェイイェイイェイだ!」

  

〽︎悲しいlove song Yeah…
濱内「越えた!」

  

〽︎Now and forever ah…
京子「やったあ!」
タテル「さすが京子!上手かったよ…」
ドアノブ「これで京子ちゃんはノーミスか。やっぱ上手や」
スタッフ「神連チャンまであと1曲となりました」
タテル「プレッシャーはあるけど、まあ大丈夫でしょう」
京子「おかまたちさん、神連チャンしたら披露宴に招待しますね!」
おかまたち「あいよ!」
浜千鳥「俺らも誘えよ」
山家「行きます、お2人?」
ドアノブ「行かないけど!」

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