連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』37杯目(ほん田/秋葉原)

グルメすぎる芸人・TATERUと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共25歳の同い年で、生まれも育ちも東京。ひょんなことから出会ってしまった2人の、ラーメンと共に育まれる恋のような話。

  

この日はピアノの調律をしてもらう日だった。夕方に業者が来るため、それまでの時間は秋葉原にラーメンを食べに行く。
タテルは鉄道沿線食べ歩き旅の罰ゲームとして乗り物の利用を禁じられていた。6km強歩いて基地に到着した時点で既に汗だくであった。
「鉄道沿線食べ歩き旅っていうのやってて、東京に戻っている間は乗り物に乗る回数が制限されるんだ。よりによって一番厳しい『0回』を引いてしまって…」
「変な企画ね」

  

「それにしても、こっからまた歩くの?」
「そうだよ」
「じゃあ私も歩く」
「暑いけど大丈夫?」
「うん。秋葉原くらいなら歩けるよ」
「ありがとう…」

  

さらに4kmの徒歩は、ピアノの話題とかで盛り上がりあっという間だった。
「調律済ませばとりあえず弾けるようになるのかな?」
「たぶん」
「どんな曲弾きたい?」
「クラシックとかはわからないから、やっぱポップスかな」
「俺もそれがいいと思うな。京子は歌いっぱい知ってるし、エモい恋の歌いっぱい弾いてほしい」
「ありがとう。頑張るよ」
「そういえば大石田さん、コラボするピアノYouTuberって見つかりそうですか?」
「既に何人かには声をかけてる。まんまるさんとかとみぃさんとか」
「えすごい、みんな知ってる!」
「京子知ってるのか」
「めっちゃ有名。タテルくん知らないんだ東大卒なのに」
「また言ってる。東大生だからって何でも知ってるわけじゃないから」

  

秋葉原駅の小汚いガード下にある名店、ほん田。当然行列ができていた。しかし回転が早めで、思ったほど待たずに入れた。ちなみに水曜日全日と月曜日夜が定休日だが、予告なしの臨時休業が月曜中心に結構あるようなので注意だ。
「あそうだ、今度夏休みとるからさ、スズカと温泉行こうと思ってるんだ」
「いいね、楽しんできて」
「いやいや、タテルくんも行くの」
「へっ⁈」
「ラーメン旅でもあるから。もちろん動画も回すよ」
「いいのかよ一緒に温泉なんて」
「同じ部屋に泊まるわけじゃないし、いいでしょ。混浴とかナシよ」
「そんないやらしいこと考えてないって。でもめちゃくちゃ楽しみだな」

  

ラーメンがやってきた。多彩なチャーシューの載った醤油ラーメン。スープはもちろん美味しいのだが、これまで数多の百名店ラーメンを食べ歩いてきたタテルの印象には残らないものだった。どちらかというとチャーシューを楽しむ1杯なのだろう。

  

京子の奢りだからと調子に乗ってチャーシュー丼まで頼んだタテル。ラーメンに載っているものと同じく多様なチャーシューをごちゃ混ぜにし唐辛子とネギと共にいただく。美味しいに決まっているが、これだけ食べたら長距離歩いたタテルでも満腹である。
「お腹いっぱいだぁ」
「言わんこっちゃない。調子乗りすぎだよ」
「いっぱい歩いたからいっぱい食べられると思って…」
「言い訳しても無駄。しょうがない、ヨドバシで少し休もうか。気になる家電あるから見させて」

  

「大石田さん、花火の日基地で何か作ります?」
「基地では何も食べないルールじゃなかったっけ?」
「手持ちぶたさなのもアレなので…」
「手持ち無沙汰(ぶさた)、ね。わかった、肉焼こう」
「いいですね!」

  

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