連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』夏休み厚木SP 1杯目(麺や食堂/本厚木)

綱の手引き坂46特別アンバサダーを務めるタテル(25)は、エースメンバー・京子(25)とラーメンYouTube『僕たちはキョコってる』を運営している。いつもは都内のラーメン店を巡っているが、今回は夏休み特別編として、同じグループのメンバー・スズカ(22)と厚木市内のラーメンを食べ尽くす。

  

宮崎台駅に降り立ったタテル・京子・スタッフ大石田。
そこへ1台のシビックがやってきた。
「待たせたな!」
「久しぶりだねスズカ。ポルペッティ!」
「ポルペッティ!」
「覚えてくれてた、良かった」
「タテルくん、何それ?ギャグ?」
「前ドライブデートした時スズカがやってくれたんだ」
「へぇ。かわいいじゃんスズカ」
「照れますね…じゃあ厚木に向かって、しゅっぱーつしんこー!」
「メロンの奈良漬け〜!」

  

〽︎ハニホハニホハニホニホハニホハニホハニホハニホハニホトイロハ
東名高速の入口。綱の手引き坂の代表曲『ハニホトイロハ』で夏に入る一行。
「2人とも、この前の神レンチャンお疲れ様」
「ありがとうございます」
「結果は残念だったけど、やっぱ2人ともいい歌声してるよね」
「そう言ってもらえて何よりです。でもやっぱ神レンチャンしたい」
「いつも届きそうで届かないよね。でもスズカの歌声たくさん聴けて嬉しい」
「この番組のおかげでミュージカル出演も決まったし、本当にありがたいです」

  

〽︎愛をこめて花束を〜
「スズカ最高!もう幸せすぎる」
「私だって負けていられない」

  

〽︎ずっとずっとそばにいて〜
「京子も相変わらず上手いな。真夏なのに雪が降ってきそうだよ」

  

その後も絶えず歌声の響く車内。浜千鳥とおかまたちはじめ多くの人々を虜にしてきた京子とスズカの歌唱。それを贅沢にも独り占めし耳福のタテル。
「タテルくんも歌いなよ」京子が提案する。
「2人の前で聴かせられるレベルじゃない」
「構いませんよ!何か歌ってください!」スズカからもお願いされた。歌わないわけにはいかない。

  

「じゃあ厚木といえばの夏うたを」
〽︎Hold me tight 夢とちゃうのかい こんな出逢いは
「あれ?タテルくんってハイトーン出るんだ」
「パワフル!音程もよくとれてますし」
「さすがヘッドボイサータテルくん。歌手目指したら?」
「歌動画やってみようかな〜」

  

大和トンネルで案の定渋滞が発生した。ここでタテルは、大和出身のロックシンガー・河村隆一の曲を歌う。
〽︎つかまえていてね いつまでむぅ
「…あれ?」
「いつまで『も』ですよね」
「わかってるんだけど、口が『むぅ』になってしまうんだ」
「どうして…」
「隆一さんみたいなエロス出したかったのに…まあいいや、他の曲歌おうか!」

  

〽︎カラダぐぅ
「…あれ?」
「カラダ『が』ですよね」
「カラダぐぅ…夏にナル、カゲキどぅ…何でこうなるんだ⁈」
「何かに取り憑かれてるんじゃないですか?」
「冗談よしてよスズカ」

  

〽︎飛翔いたら戻らないと言って〜
海老名JCTから圏央道に少し入って海老名ICで降りる。相模川を渡ればすぐ厚木市に入り、交差点を左に曲がればすぐ最初の目的地に到着する。
「やったー!ついに京子さんとラーメン食べれる!」
「あれ、懐かしいゲーム機がある…」
店内もまた、漫画が揃っているなどして古風な雰囲気。餃子や唐揚げ、ミニ丼がかなり充実していてそそられるが、次の店に行くことを考えシンプルな中華そばを選択した。
「面白い雰囲気の店だね」
「確かに。都内にはないタイプだな」
「京子さんとタテルさんって、似てるとこ結構ありますよね」
「そうだね。1997年東京生まれの東京育ち、血液型はA型」
「虫や自然が苦手なところとか、本が読めないところも同じ」
「タテルさん本苦手なんですね。意外です」
「東大生にしては珍しいよね。マジで活字苦手。読破したのは京子の写真集くらい」
「読書のうちに入らないでしょそれ!」

  

ラーメンがやってきた。街の食堂レヴェルのラーメンかと高を括っていたが、麺を啜り上げると醤油の香りと出汁の香りがフワッと立つ一流の味わい。薄めで古風な豚チャーシューとプリっとした今風の鶏チャーシューはどちらも魅力的である。おまけに黒胡椒を纏ったメンマがおつまみ感覚でクセになる。

  

〆には少量だが黒烏龍茶が無料で供された。ラーメン三昧の1泊2日を乗り切るにはありがたい存在である。

  

「早速素晴らしいラーメンをいただけて嬉しいです」晴れやかな顔のスズカが言う。
「でしょ?世界観も素晴らしいし、良いスタート切れた気がするよ」満足げな京子。
「じゃあここで業務連絡です。まず駄菓子を買いましょう。1人300円までです」
「遠足みたい。懐かしいな」
「そして、スズカさんは初めてなので改めて説明しますが、この旅では1軒につき誰か1人に食事代を全額払ってもらいます。誰が払うかはゲームで決めます」
「絶対負けたくない…」負け顔に定評のあるスズカは不安げだった。
「また今回は3人いるので、1位にはボーナスがあります」
「何だろうボーナスって」
「ここでは一旦私大石田が立て替えますので、店出たらレトロゲーム対決やりましょう」

  

店外にあるパックマンで対決を行う。通常は順番待ちをしている人の暇つぶし用として無料開放されているが、今回は許可を得てやらせてもらう。
「パックマンって何ですか?」世代的に知らないスズカと京子。
「キャラクターを操作して、ゴーストを避けつつクッキーを食べさせるんだ」世代的に知らないはずのタテルが何故か解説する。

  

各々1回ずつ練習し本番へ。唯一の経験者であるタテルが最初のプレイヤーとなった。
「大きなクッキーを食べたらゴーストが青くなるから、それは逆に食いつぶしていい。そうすると得点が増すからな。でも食いつぶされて元の色に戻った奴には捕まっちゃダメだ」
解説を加えながら手際よくゲームを進めるタテルは、ラウンド9の途中で失敗した。
「8レンチャンか。やっぱ神レンチャンは難しいね」

  

続いて京子が挑む。
「こっちにクッキーが…ダメだ敵がいる」
「京子、左の通路から右へワープできるぞ」
「行く。あ、捕まっちゃった…」
「京子さん、1面もクリアできず!」
「タテルくんのせいです!」
「俺は良かれと思って言っただけだ」
「もう…」
「プク顔かわいいから許すけど」

  

最後はスズカ。
「難しいコレ…あぁ!」
「自分から捕まりに行ってる」
「スズカさん、最下位なので自腹決定!駄菓子代も払ってもらいます!」
「いきなり⁈ショック…」
「洗礼浴びたね。ようこそ『キョコってる』へ!」
「嬉しいような、悲しいような…」負け顔が美しいスズカ。
「そして1位のタテルさんは旅館での夕食がアップグレードされます!」
「やったー!」
「グルメなタテルさんには相応しいご褒美ですね」
「それ負け惜しみ?」

  

「素敵な1日を!」朗らかに一同を送り出す店主。
「じゃあいよいよ七沢温泉へ!」
「楽しみ!」

  

しかしこの先に待つ恐怖を、一同は未だ知らなかったのです。

  

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