連続百名店小説スピンオフ『個人面談』マリモ&ニコ編①(めん奏心/島田市金谷)

ある冬の日のTO-NAハウス。自主練に明け暮れるメンバーが多い中、プロデューサータテルと2人のメンバー・マリモとニコはショルダーバッグひとつで地下駐車場の車に乗り込む。TO-NA専属ドライバーに東京駅まで送ってもらい、そこから新幹線に乗る。向かう先は静岡県。タテルが2人への面談ついでの食事に、日本一食べログ評価の高いフレンチを予約していた。それまでたっぷり時間があるので、静岡で最も食べログ評価の高いラーメン屋を訪れることにした。

  

マリモとニコは大の旅行好きである。マリモは隙あらばすぐ海外旅行に行く。韓国や台湾くらいなら日帰りで、まとまった休みがあればすぐヨーロッパ行きの航空券を購入して飛んで行く。一方のニコは世界遺産マニアである。元来裕福な家庭であり、西欧諸国は一通り訪れたと云う。世界遺産検定1級、次はマイスターを目指して勉強中である。

  

そんな2人でも不案内なのが日本国内の観光である。これに関してはフーディーを自称し食事をメインに据えて全国を飛び回るタテルの方が何倍も詳しい。今回の旅の主導権もタテルにあり、タテルなりの旅行スタイルを叩き込むため2人を連れ出した。

  

静岡駅から慣れた調子で在来線に乗り換えるタテル。あまりにも速く歩くからマリモもニコも必死である。浜松行きの電車に乗り込み、金谷駅まで30分の道のりである。
「ラーメン食べた後何処か行くんですか」
「決めてない」
「無計画すぎません⁈ちゃんとこと細かく予定立ててほしい」
「だってラーメン屋の待ち時間が読めないんだもん。気の向くままやらせてくれ」
「私は好きですよ、その姿勢。どんな旅でもお供いたします」
「ありがとう。まあ見当は何個かつけてある。時間が合えば大井川鐵道で接岨峡温泉まで行くし、茶の都ミュージアムも気になってる」
「なんだ、ちゃんと候補はあるんですね」
「でも全てはラーメン屋次第。先がどうなるか全くわからない、それもまた旅の醍醐味だと思う」

  

しっかり計画を立てたいマリモと行き当たりばったりを厭わないニコ、そして後に余裕を残すため先を急ぎたいタテル。同じ旅行好きでも、旅のスタイルは様々である。

  

金谷駅からラーメン屋までは2km弱離れており、歩いても行けるのだが近くまで行くコミュニティバスがあることを予習していたタテル。丁度良い時間にバスが来たため乗り込むのだが、突如として身震いを覚えるタテル。運賃は200円なのだが、札ばかりで小銭を持ち合わせていなかった。そして生憎マリモとニコも現金を持ち合わせていない。両替ができないため払う手段が無い。

  

「お代はいいから乗りなさい。その代わり、戻りのバスで払ってくれよ」
「ありがとうございます」
「申し訳ございません」

  

ピンチを何とか切り抜けラーメン屋最寄りのバス停まで移動することができた一行。戻りのバスの時刻を確認してラーメン屋に向かう。ランチのピークタイムであったが、平日ということもあってか5分程の待ちで済んだ。タテルは2杯分の食券を購入した。
「まさか、1人で2杯を……」
「驚くことではない。遥々訪れた店では尚更やるものだ」
「じゃあ私も2杯いただきます」
「すごいなマリモさん、流石コロッセオの胃」

  

ゆとりのある席で人心地ついたところでラーメンがやってきた。静岡県の食材を優先的に使用し、賄えない分は全国から集めた安心安全の品で補う。

  

まずは煮干そば。醤油と汐が選べるが定番は汐とのことでそちらを選択した。煮干しラーメンは何杯も食べてきたタテルであるが、それらを凌駕するほど重厚な煮干しの香り。煮干しというより磯の香りといえよう。まるで海物語のリーチ演出である。苦手な人は苦手かもしれない。一方で麺は少し硬めであり、咀嚼するうちにスープと釣り合うようになっている。
「いやあ、やっぱりタテルさんの選ぶ店は素晴らしいですね。男鹿の塩ラーメンも美味しかったですし」
「あきたフェスの下見で行った時ね。俺は二日酔いだったけど」
「何してるんですかタテルさん」
「調子乗った。旅先だとどうしても飲み過ぎるね」

  

秋田のような銘醸地に行けば食事と共に地酒をたらふく飲み、その街で一番と言われるバーに行けば名産の果物を使ったカクテルや地元のウイスキーを堪能する。金額とか気にせず心ゆくまで地物の食べ飲みを満喫する、それがタテルなりの旅行スタイルである。
同様にしてニコは世界遺産に拘った旅をする一方、マリモは特に軸を定めていない。タテルは2人を旅好きタレントとして売り出したいと考えているところ、軸が無いと難しいものがあると云う。
「入口がな、わかんないんだよな。食べ物や世界遺産や鉄道といったとっかかりがマリモには無い」
「それは確かにネックですね。でもあまり何かに特化したくはないです」
「そう言うと思って企画を考えてきた」

  

2人には、令和の兼高かおるになってもらいます。

  

「ど、どういうことですか……」
「食べ終わったらゆっくり話すよ」

  

タテルが2杯目に選んだのは限定商品の『白い恋みそ』。鰹スープをベースに西京味噌と白味噌で仕立てたありそうで無い1杯である。

  

少し生姜の香る温かなスープが麺と合わさった時、白味噌の本領が発揮される。とろっとした舌触り、味噌特有の甘み。通常の味噌ラーメン以上に味噌を実感するものである。

  

具材も充実している。別添えのためスープ本来の味を知ってから具材との相性比べを楽しむことができる。味噌の甘みはメンマと相性が良く、辣油の辛みにより引き立てられる。チャーシューはハムのような赤身肉と焼きの香りが仄かに香る厚切りバラ肉。別添えだと脂が冷めてイマイチなことも多いが綺麗にそれを抑えている。

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