人気女性アイドルグループ・TO-NAにおけるクイズスターであるコノが卒業を発表した。その卒業制作として、過去2回挑んできたクイズ旅「プレッシャーSTEADY」を地元京都で撮影する。コノと共に挑むのは、東大卒プロデューサーのタテル、そしてTO-NAのニュークイズスター候補であるカコ、レジェ、ニコ。果たして一行はノルマをクリアして日本一の中国料理にありつくことができるのか。
大正解。7つ目の福神キーホルダーを手にしてご褒美獲得である。喜びの声よりも先に涙に溢れるコノ。メンバー達もコートに泣き顔を埋めコノを抱きしめる。あまり泣くイメージの無いレジェやニコが見たことない激しさの号泣を見せたのは、コノが壊れかけてしまいそうな状態から這い上がった故である。

「時間ないぞ。続きは店で浸ろう」
ぐちゃぐちゃの顔を少しでも整えて入店するは、京都、いや日本一の中国料理を提供する店。外観は核家族が住んでいそうな2階建ての家であるが、白壁に漢詩が書いてあるため迷うことは無いと思われる。

カウンター6席のみの小さな店。しかし一行は5人であり1席余る。
「コノお姉ちゃん!」
「アキちゃん!」
「7ポイント中4ポイントに貢献した功労者。特別に招待しました」
「良かったねコノお姉ちゃん。聞いたよ大変だったって」
「大変だったよ〜。クイズって大変だよね。大変……だけど楽しい」
インスタにて月に1回募集があるかないか。あったとしてもDMで応募して、思うように当籤はしない予約枠。そんな中国料理店を、TO-NAの企画のためだけに特別に貸切としてもらった。
*勿論そんなサーヴィスは現実にございませんので、皆さんは地道に当籤を狙いましょう。

飲み物のメニューはタブレットに載っている。大半の客は特製紹興酒ハイボールを頼むとのことなので、未成年のアキ以外はそれを注文する。枸杞や干し梅などを少し加え炭酸割りに。食事を邪魔しない程度に甘みを加え飲みやすく味わい深いドリンクとしている。
メニューの書かれた紙。全て漢字でありしかも達筆気味。勿論ある程度は解読できるが、全てを理解できたらそれはもう頭脳王の業であるため、何が出てくるかはお楽しみ、ということにしておく。


先ずは薬膳スープから。漢方薬でもお馴染み、血の巡りを良くする当帰を使用。今さっき氷水に素足を浸し凍てついたコノの体を温める。その他にも棗・羊肉・高麗人参などが入っている。羊肉は決して出涸らしではない立派な具材。改めてクイズのプレッシャーから解放され、安心感を覚える幕開けとなった。
一行の挑んだ○×問題の一覧表がアキにも手渡された。
「うわあ、これは難しいですね」
「ホントだよ。手加減してほしい」
「サハラ砂漠の問題でね、コノがミスってメンブレして」
「それは大変でしたね。これ本当に悩ましいですよ。ニコさんも考えていました?」
「考えてたよ。西サハラをカウントしていいのかがね」
「俺もそれ悩んでた」
「ですよね」
「俺は数え上げたけど9ヶ国で手が止まった。だから西サハラについて訊ねたかった」
「難問でしたね。どろんこクイズみたいな嫌らしさです」
「あれって8割方どろんこなるよね。2択なのに」
「巧妙にできているんですよ。メタ的な読みができないようになっていて。事象として面白い方が正解とか、『〜なものはない』は悪魔の証明となり難しいから×とか定石であると思うんですけど、やっぱり通用しないですよね」
「本来クイズとはそういうものだよね。バラエティ番組とは違うんだから」
「プレステは淡々としたネタで○×クイズ作っているからまた難しいんですよね。よく再現されてますよこの問題群。血が沸き立ちます!」
「アキちゃんも良かった。自信に満ちたクイズガールに戻って」

続いては前菜4種盛り合わせ。先程の漢文メニューには記載の無いものである。今回は上海蟹の特別コースを提供しているが、普段のコースにおいては12種盛りで出てくるとのことである。
左端には皮付き豚バラ肉という贅沢な食べ物が鎮座する。煎餅のようにカリカリに焼かれた皮としっとりした身を一思いに噛み通す。強力な香ばしさと確かな肉の旨み。美味いに決まっている。梅肉ソースは梅の味は控えめだが脂っこさを抑える役目を果たしているようだ。
銀杏をたっぷり練り込んだ大根餅も、大根餅らしい香ばしさと甘みの中に銀杏のクセを美しく導入している。プチトマト、柿、白菜(何かで巻いたもの)のピクルスは甘さが心地良くて食べやすい。右端は、これまたたっぷりの牛蒡と黄韮を湯葉で巻いたもの。野菜本来の旨みを程よい油で支える。

酒の摘みとして、スパイスを纏わせ独特な風味に仕上げたカシューナッツと飴炊きのペカンナッツ。おみやとして購入することも可能である。
「難問乗り切った後のご飯、美味しいでしょ?」
「美味しいですぅ。もう言葉にならないです」
「京都って高級中華の名店多いよね。ここが1位で他にも3軒くらい知ってる」
「全然知らなかったですよ私。でも京都の人は中華大好きな人多いです」
「(餃子の)王将も天一も京都ですよね」
「それな。東京より熱狂してる感がある、京都も大阪も」
「横浜はどうなの?レジェちゃんニコちゃん」
「中華街ありますけど、行かないですね」
「めざンモのロケでお粥食べたくらいです」
「ですよね。専らバーミヤンです!」
「美味しいよね、バーミヤンの餃子とラーメン」
「はい!油淋鶏も美味しいですよね」
「青椒肉絲も海老チリも。あと最近は麻辣湯も…」
「高級中華の店で堂々と大衆中華の話するな!」
引率の教師のようにタテルが叱り飛ばしたところで、酔っ払い鶏が仕上がろうとしていた。紹興酒をベースにしスパイス等を加えたスープで鶏を煮込む。本当はぐつぐつ煮込む料理だが、ここのシェフは火入れを(安全に食せる)最低限にして余熱でしっとり仕上げるやり方を採択した。

そうして仕上げた酔っ払い鶏のスープは確かに濃ゆい。紹興酒や醤油などの円やかさ、そして漢方のニュアンスもついた濃さ。これは煮詰めたらしつこそうである。だから鶏は真っさらに仕上げ、鶏を含めた口につゆを後追いして口内調理するのがベストである。素材を大事にする京都ならではの調理法であろう。
TO-NA(DIVerse)公式YouTubeにおいて3回に渡って行われた、某クイズ番組のオマージュ企画『プレッシャーSTEADY』。小1クイズ覇者コノをアイドル界No.1のクイズ王にするべく始まった。第1回の富山・金沢編では難問を前に屈する場面が多かったコノ。その頃はやけに感受性が強く、2日間で30回は泣いていた。
「21世紀美術館での失敗は今でも覚えてます」
「それ観てました。あれは本当にしんどい」
「あの時もコノはもぬけの殻だった」
「でしたね。私すぐ落ち込んじゃう」
「誰でもそうなるものだよ。外すとうるさいもんね一部視聴者が。ホントいい迷惑」
達観しているような口ぶりのタテルも、第2回の静岡編、梅ヶ島温泉にて同じような経験をして死にそうになった。この旅では難問を次々と撃破し絶好調で、かつ簡単には泣かなくなったコノが、逆にタテルを慰める格好となった。
「強くなったよねコノは。クイズ面でもタレントパワーの面でも」
「なれましたかね?相変わらずミスして泣いちゃいましたけど」
「少し泣くくらいが人間味あって良いだろ。切り替えも大事だけど、ケロッとされるのもなんか違う。コノはいいひとだからな、その感じ大事にしてほしい」


次の料理は中華の宴席の定番・魚の煮込み料理である。今回はスジアラを、トマトと酸菜(白菜を漬けて発酵させたもの)で煮込んだ。スープには魚の出汁が溶け出していて、身には仄かに甘い旨味が確とあり美味。魚らしく柔らかい部分もあればぷるっと硬いゼラチン質の箇所もあったりと、食感の多様性にも長けているのが面白い。トマトの丸い酸味、酸菜の鋭い酸味、2種類の酸味がアクセントとなっている。
ここで上海蟹の調理と盛り付けに時間がかかるため長めのインターヴァルが発生する。その間タテルはクイズアイドルについて語り出す。
かつて芸能界でクイズが流行った時、アイドルは賑やかし担当でしかなかった。そりゃそうだよな、高校もろくに通わずに活動してたから。でも今のアイドルは学業を大事にしつつ活動することができる。その道を切り拓いたのは颪の嬰井くん。男性アイドルの高学歴化が加速し、クイズ番組によく呼ばれて力を育む。結果としてクイズプレーヤーの顔をした奴が増えてきた。しかし女性アイドルはそうはいかない。1回出て駄目なら切り捨てられる。余程の有望株と見做されない限り育ててもらえない。
その状況を変えたくて、知り合いのクイズ番組スタッフさんに頼んでみた。プレッシャーSTEADYをやりたい、あれなら早押しじゃないから難問に挑めるチャンスが多い、緊張感はありつつ成功体験も積みやすい、なんて熱意持って伝えたらオマージュ企画をやらせてもらえることになった。
「流石タテルさん、爽快で整然とした切り口です」
「TO-NAには前途有望な頭脳派が多い。だから伸ばしたいと思った。それだけだ」
「メンバー思いなんですね」
「私も1回Pちゃまに出ましたけど、1回戦で敗退して、あもうこれは呼ばれないな、なんて考えて悲しくなって……夜中ずっと泣いてました」
「こう見えて真面目なんだよレジェは」
「こう見えて、って何ですか!」
「失敬。レジェは弱さを見せず飄々と今回のプレステを戦っていた。クイズ界では重宝されるキャラクターだ。大事に育て上げられるべき存在だと思うわけ」
「嬉しいです……」
「カコも淡々と良きところを答えていった。学校で習ったことをよく覚えているのは真面目な人らしい特長。何で知ってるの、って言われるような強い知識は持ち合わせていなくとも、確かな知性の石垣を築けているのは強いし好感を持たれやすい」
「武器になりますかね?」
「なるさ。その石垣に今度は立派な天守閣を建てよう。俺も指導するし、君の敬愛するアヤツからも色々学ばせてもらおう」
「頑張ります!でも野菜だけはどうしても詳しくなれません!」
「潔いな。そんなクイズ王もいるからご安心を。そしてニコ。○×クイズでの頼もしさは流石クイズ畑で鍛えただけある。クイズ畑で蓄えた知識は確かにテレビのクイズで活きにくい。それを解らない視聴者はとやかく言ってくるだろう。でも歴戦のクイズプレーヤー達は勉強を怠らずテレビクイズに順応していった。此れ最強のクイズ王也。どんなに強い人でも悩むことはある。初めから理想通りにいかなくて当たり前。ニコならできるさ。一緒に頑張ろう」

さて上海蟹料理が仕上がった。まずは8種盛り。

右上には餡に蟹肉を含んだスープ餃子、橙色の柑橘により明るいコクが生まれる蟹のスープ、クラゲと蟹を和えたもの。左上には蟹味噌(?)餡入りの胡麻団子、そして黒いブツはヴォリューミィな蜂の巣揚げ。

下には蟹肉小籠包、カスタード揚げ、そして紹興酒漬け。紹興酒漬けは怪我に注意しながら身を吸ったり掻き出したり。酔っ払ってしまいそうなくらい濃密な味である。あまりに盛り沢山すぎて脳内がてんやわんやであったが、定番ものからマニアックなものまで様々な料理を味わう楽しさがある。

気にしいのタテルが念入りに手を洗いに行って戻ってくると、次の料理の準備が既に始まっていた。ここまであまり上海蟹を食べた気がしない、と思っていたら、出てきたのは上海蟹の身がたっぷり載ったフカヒレの姿煮であった。しかも雄雌食べ比べときた。ゴチになりますで出てくるような贅沢な料理に恍惚の表情を浮かべる一同。

雄々しく締まった雄の身にはなんとコクのある黒酢をかけてしまう。黒酢の甘みが蟹と合わさり、オムライスのように貪りたくなる。一方で卵を絡めた雌の蟹肉も、弾力は雄ほどではないが旨みたっぷり。こちらは赤酢の円やかさもある酸味で彩る。それらを受け止めるフカヒレが、繊維の粒立ちを感じたり根元では脂に近い柔さがあったりと、贅沢なものである。門出を祝うに相応しい贅沢である。

タテルは紹興酒3種飲み比べを注文した。10年物、20年物、30年物。疲れていてあまり違いを覚えていない。
「一番クイズ力が成長したのはコノだもんな」
「いえいえ、まだまだですよ」
「賢そうだな、とは思っていたけどここまで伸びてくれるとは」
DIVerse2期生として加入した当初は立命館大学に通っていたコノ。上京するため中退したが、DIVerse、TO-NA内での学力テストでは上位を獲得し、頭の良いメンバーであるという印象を与えた。クイズ番組に呼ばれることも多く、そのひとつである小1クイズでの快挙で注目を集めた。勉強熱心で真摯にクイズに取り組む姿勢に好感を持つ人が多い。
同期の中でも年長であり、人気メンバーではあったが絶対的エースとも言えない立場。それでも大好きなラジオの仕事でこれまた高評価を得、クイズアイドルと共にラジオスターとしての確固たる地位も築いている。芸人バラエティにもよく出演し、自分を立てすぎない程度に番組に参加するバランスの良さが共演者から評価されている。
「コノの立ち回りは安心するんだよな」
「ですよね。あんな自然体で番組に溶け込めるの、できそうでできないです」
「喋りも立つし、でも誰も傷つけない。コノさんのラジオは深夜のリラックスタイムを潤してくれます」
「嬉しいねぇそう言ってもらえるの。これもTO-NAのみんなが優しくしてくれるお陰だよ。もやもやすることがあってもみんながいるからのびのびしていられる。その気持ちのまま外でも仕事ができるのって、当たり前のことじゃないと思うんだ」

上海蟹のパートは終わったが絶品中華の宴は果てていない。先程から吊るされていた鴨肉が捌かれる。京都市の隣にある亀岡で育てられた七谷鴨の胸肉ロースト。綺麗に焼かれた皮をパリッと噛むと、旨みたっぷりの脂がじんわり溢れ出す。厚みのあるレアな身にも旨みが確とあり、皮の脂を受け止めて堪らなく美味。少しクセがあるかな、と思ったところにラズベリージャムの甘酸っぱさを混ぜ込んだ甜麺醤のコクを合わせると更に美味い。左には腿肉を、陳皮や生姜香る煮込みにて。筋肉質だが煮込みにより柔らかくなり、濃い煮汁の味をしっかり絡め取る。
「そうだ、卒業後はどうするつもりだ。まだ話聞いてなかったから」
「そうですね……」
「ラジオは続けてほしいです!絶対に!」
「続けるも何も……」
コノは小さなメモ用紙を一行に回す。未だ公に発表できないことではあるが、月曜のラジオ番組は中断無く継続しつつ、4月よりニホン放送にアナウンサーとして所属することが決定していると云う。
「これはすごいです」
「なるほど。あまりわかってないけど、くり万太郎さんとか上柳さんを目指す訳か」
「雲の上すぎますよ。でもいつかはなりたいですね」
「今は深夜ラジオのパーソナリティやってるけどさ、そのうち朝の番組やるんじゃない?朝起きたらコノの声が聞こえてさ、憂鬱で体が動かない時でも切り替えて頑張ろうってなれるんだよ」
「良いですねそれ。お煎茶淹れて、コノさんの声聴きながら飲みたい」
「素晴らしいモーニングルーティン」
「テレビには出ないんですか?」
「どうなんだろう?局アナだから制約はありそうだけど」
「でも今以上に声聴けますよ。他の番組もやるでしょうし」
「実物の私見たかったらLINEして。みんなにはなる早で会いに行くよ」

〆の食事は、3時間かけて拵えた餅米とジャスミンライスのおこげ。そこへ澄んだ餡をかけ、最後まで豪勢に鮑なんか載せてしまう。まずおこげがさりげなく美味い。均質に焼かれていてパリパリとした食感が麗しい。ジャスミンライスにより微かに香りをグレードアップ。鮑は柔らかく仕上がっており磯臭さは無し。贅沢な旨みがじわじわと滲みおこげと一体になる。
「時間かけて食べてるから結構腹満ちてたけど、あっさりしてるから入るねこりゃ」
「コノお姉ちゃんみたいですよね」
「私みたい?」
「ガツガツとした個性は、失礼ですけど無いと思うんですよ」
「わかるよ」
「それでもお姉ちゃん真面目だし優しいからみんな好きになる。好きなラジオの仕事もできて本当幸せだよ」
「だな。努力でこの地位を確立した印象がある。稀勢の里みたいな」
「最初は悩んでました、どうやって自分の色を出すか。でもわかったんですよね。色とか無くても一生懸命やっていりゃ良いことあるって」
コノの金言を聴き、目頭が熱くなる後輩達。中でもカコは顔がぐちゃぐちゃになるくらい涙に咽ぶ。
「私がサブキャプテンに決まった夜、地味な自分に前に出る役が務まるのか悩んじゃって。そしたらコノさんが夜通し相談に乗ってくださったんです。カコの真面目さと包容力があれば、TO-NAのみんなは楽しく活動できるよ、って励ましてくださって……」
「あったね。懐かしい。本当に頼もしくなったよカコちゃん」
「感謝しかないです」

デザートは4点盛りで登場。杏仁豆腐、マンゴープリンといったベタなものから、塩漬け卵のクッキーという玄人向けのもの、そして午年らしく馬を模ったカスタードまんがラインナップ。カスタードまんは可愛らしい見た目だがとても熱いので火傷に注意である。満腹の一同は包んでもらい持ち帰ることとした。

最後に熱い中国茶を。2種類の烏龍茶をブレンドするという斬新な手口。多彩な香りが立体的に積み上がって、こういうやり方もアリだな、と思うタテル。
ご褒美を獲得したため一行は京都にもう1泊する。メンバー達は相変わらずコノの実家で修学旅行気分である。例のカスタードまんをつまみながら、トランプをしたり桃鉄をしたりして夜を明かした。
翌日は夕方からTO-NAハウスにて新年最初の全員集合配信があるため昼前に京都を発つことになっていた。その前に改めて南禅寺を訪れたり蕨餅を食べに行ったりラーメンを食べたりして京都を満喫する。その最中で、プレステの本家・Pちゃまのスタッフから連絡があったことをタテルが明かした。
「プレステ、10年ぶりに本格復活だって」
「それはアツいですね!」
「タテルさんコノさんのお陰で復活の機運が高まりました。TO-NAの皆さんも是非来てください、だって」
「行きましょう。え〜、すごく楽しみ!」
「コノの卒業と共に、このYouTubeでのプレステ旅は区切りをつけよう」
「次は本家ですね。本家で会いましょう」
東京へと向かう新幹線の中で、コノはタテルと後輩達にプレゼントを渡す。
「お碗ですか?」
「そうそう。お蕎麦とかラーメンとか入れても良いし、納豆かき混ぜる用でも使えます!」
「じゃあ納豆そばにしようかな」
「ヘルシーで良いですね」
「私のこと思い出したくなったら使ってね。まあラジオで定期的に声は届けるけど」
「大事に使います。ああまた泣けてきた……」
そして2月。コノの卒業ライヴが盛大に執り行われた。ここで正式にニホン放送アナウンサーへの就職が発表され、客席は驚きと応援の入り混じった聞いたことのないうねりに包まれた。ライヴ中は涙を一切見せない堂々とした振る舞い。プレステ旅1回目の頃の異常な涙脆さが嘘のようである。
4月、コノは早速ニホン放送にて新たに2本のレギュラー番組を担当。既存の深夜番組と共に、聴取率トップを欠かさず獲得する人気者となっていた。
一方でタテルと後輩メンバーらは本家プレステで面目躍如。後半の番号の問いを積極的に開け、ドボンや○×問題でも安定感を見せる。ロジ原やカズキレーザーからも可愛がられる存在となった。芸達者集団TO-NAに、クイズという新たな武器が定着した2026年の春。今日もTO-NAクイズ選抜の面々は、コノから貰った碗で納豆そばを啜りながらクイズを出し合っている。
—完—