人気女性アイドルグループ・TO-NAにおけるクイズスターであるコノが卒業を発表した。その卒業制作として、過去2回挑んできたクイズ旅「プレッシャーSTEADY」を地元京都で撮影する。コノと共に挑むのは、東大卒プロデューサーのタテル、そしてTO-NAのニュークイズスター候補であるカコ、レジェ、ニコ。果たして一行はノルマをクリアして日本一の中国料理にありつくことができるのか。
間髪を容れず次の百名店をくじ引きで決める。
「これご飯もののお店が出ても行かないとダメですよね?」
「はい」
「ラーメンとか来たらハードだな。一乗寺なんてなったら場所も遠いし」
「営業時間内に行けない、または予約が必要な店は抜いておりますのでご安心を」
選ばれた店は、幸いにも甘味処であった。出町柳にあるため、蹴上からは地下鉄で京都市役所前まで出てバスに乗ると良さそうである。ウェイティングが発生している可能性もあるため急いで向かうこととする。
「コノさんのご実家でゆったりしようと思ってたのに、させてくれませんねこの旅は」
「仕方ないよ。○×は本当に難しいから」
「地理マニアの俺でさえ不覚を取るくらいだからな。前回もあと1問のところでやらかして」
「うわあ!それはキツいですね……」
「泣いてたよタテルさん」
「絶対泣きますよね。その枠を今回はコノさんが」
「そう。だからすごいプレッシャー。みんなとこうやって喋ってると癒されるけど、いざ出題となると怖くて怖くて……」
「全然大丈夫ですよ、コノさん。クイズで間違えても死にはしません」
「そうだね。確かに死なないね」
「コノさんとこうやって旅できる、それだけで嬉しいんです。中華を食べられなかったとしても、一生忘れない思い出であることに間違いはありません」
「ありがとうレジェちゃん」
「気が少し楽になったな。流石レジェ、人たらし」
タテルが間違った褒め言葉を口にしたところで甘味処に到着した。賀茂川を渡る橋の少し手前、下鴨神社の参道入口(河合神社のある側)を徒歩圏内に捉える場所にあり、人気店のようで少し待つ羽目になった。だがレジェが雰囲気を和らげてくれたお陰で誰も文句を言わずに待機した。
10分程で着席しメニューを眺める。パフェや善哉、丹波栗を使ったスイーツなども気になるが、最初に目についた特製あんみつを注文する。
「私が初めてあんみつ食べたの、東京来てからなんですよね」
「そっか、言われてみればあんみつは東京のイメージが強い」
「みはしさんも東京でしたっけ?」
「思いっきり江戸。上野だもん」
「京都でも無いことはないけど、お餅とか上生菓子とかの方が主流なんよね」
「京都のお菓子は何て言うのかな、単体で存在してるよね。あんみつは多要素がてんこ盛りだから如何にも江戸らしいというか」

そんな京都でも評価の高いこちらのあんみつ。結論から言うと、各要素のレベルがとても高く、それらをてんこ盛りにしてもまた調和が取れていて素晴らしいものである。丹波大納言の粒餡はとても雄々しい味わい。くりやの最中でも感じたことだが、東京の餡子からは感じられないアタックの強さ、これが丹波大納言の魅力というものなのだろう。ソフトクリームはミルク本来の味が濃厚であり、餡子とソフトクリームの組み合わせがまた悪魔的に美味い。
白玉も弾力があり美しい餅感。白玉粉独特の苦味もしっかり抑えられている。寒天も角立ちが良く、具材を確と受け止めてくれる。寒天に加えて抹茶ゼリーと黒糖ゼリーを盛っているのも豪華な点。寒天に合わせて少し弾力のある仕上がりで、各々の味もはっきりと判る。そして京都らしく蕨餅も載せている。これまた東京のわらび餅と違い、噛んだらすっと溶けていく感覚。本蕨粉を使っているからこその食感であろう。
「どれ食べても楽しいな。こんなにあんみつって美味かったっけ」
「東京のあんみつは全体が纏まっているけど、ここのは具材ひとつひとつが印象に残りますね」
「そういえば黒蜜は?」
「既にかかってますよ」
「黒蜜を後がけしなくても成立してるよね」
「タテルさんって、いつも黒蜜かけないですよね」
「無くても味あるからな。かける発想にならない」
「タテルさん、江戸っ子言うてますけど京都の人っぽい味覚してますよね」
「順応力が高いのかな。東京には全国のものが集まるから、様々なご当地の味に馴染みある」

一緒に注文した抹茶もまたあんみつに負けない力強さを持つ。苦味のアタックが強く、抹茶を飲んでいる実感が湧く。勿論奥には円やかさがあるから苦味に痺れることもない。日本料理店の〆で出されると重たいかもしれない。抹茶を求めて訪れる店で出すに相応しい、主役級のパワーを持つ抹茶である。
「じゃあ出題場所決め!」
「近くだとどこだ、京都御苑とか?」
カコが口にした通り、選ばれたのは京都御苑であった。今出川通から丸太町通まで南北1.3kmに伸びる広大な敷地。少しでも足を踏み入れればクイズへの挑戦権を獲得できる。
「すぐそこじゃん。すごい、狙い通りだよ!」
「びっくり!いやあ、でもここで運使い果たした気もします」
「やめなさい。俺らはずっとツイてるノッてる」

ウキウキで御苑入口まで駆けていく5人。本当は御所や迎賓館、九条池とか観覧したいところであるが、時間も無いためそそくさとクイズを出してもらう。解答順は先ほどと変わらず。
〜ことわざ・故事成語○×クイズ〜
「京都で産声を上げた漢検。清水寺で発表される『今年の漢字』は年末の一大イベントとなっており、祇園には漢字ミュージアムも誕生しました。今回はそんな漢検が提供しております『漢字ぺディア』に掲載されていることわざ・故事成語からの出題」
①「勝って兜の緒を締めよ」とは、成功に慢心せず気を引き締めるべき、という意味である
「初手から不安になる。合ってるよね、○」
②「猫に小判」とは、価値のわからない者に高価な物を与えても意味がない、という意味である
「あら猫ちゃん。ま〜る」
③「覆水盆に返らず」とは、失敗の取り返しがつかない、という意味である
「そうだよね。○」
④「水魚の交わり」とは、すぐ忘れてしまうような取るに足らない出会い、という意味である
「いきなりムズくなった!でも確かこれは親しい間柄とかいう意味だったはず。×!」
⑤「餅は餅屋」とは、その道のことはその道の人に任せるべき、という意味である
「ふぅ、助かった。○」
⑥「雨後の筍」とは、試練を経て人が成長する様子をいう
「知らない!待って、筍だもんね。雨が降ったら育つもんね。だから……○」
不正解。雨が降った後は筍がよく生えてくることに由来して、同じような物事が次から次へと発生する、が正しい意味である。2回目の挑戦も失敗に終わった。
「ごめんなさい!全然わからなかったです……」
「野菜嫌いだもんなカコは。仕方ない、次だ次!」
残りの問題をやってみないか、というスタッフからの申し出を断って切り替えを促すタテル。最早運ゲーと言わんばかりの難しい問題の連続に、5人の中では焦り、そして半ば諦めの雰囲気が蠢いていた。
ちなみに⑦以降に用意されていた問題は以下の通り。
⑦「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」とは、小物には大物の気概がわからないことをいう
⑧「粟とも稗とも知らず」とは、食べる物にこだわりの無いことをいう
⑨「湯の辞儀も水になる」とは、熱狂的な人気もいつかは冷めて忘れ去られることをいう
⑩「肯綮に中る」とは、物事の核心を突くことである
正解
⑦○ ⑧×(粟と稗の区別がつかないくらい高貴である) ⑨×(遠慮も時と場合を考えてすべき) ⑩○
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