『続・独立戦争 下』内包ストーリー『秋田フェスプロジェクト〜ふるさとのにじ〜』 六色「もう一度、虹を架けに」(永楽&たかむら/秋田)

人気女性アイドルグループ・TO-NAへ、秋田県から直々にフェス開催のオファーがあった。TO-NA特別アンバサダー(≒チーフマネジャー)のタテルは二つ返事で受諾し、特別な想いを持って準備を進める。

  

ここからは、フェスの根幹であるライヴの様子をみてみよう。TO-NAのライヴでは盛り上がる曲を1曲目に披露するのが常であるが、overtureが流れた後、異様な静けさが場内を包み込む。そこへ囃子の音が鳴り出し、浴衣姿のメンバーが、編み笠または黒い布で顔を覆って現れた。

  

「県南羽後町の伝統行事『西馬音内の盆踊り』でございます。日本三大盆踊りに数えられ、無形文化遺産にも登録されたしなやかな舞。死者と生者が共存する幽玄をお楽しみください」

  

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逮捕されたタテルであったが、証拠が曖昧であり、警察・検察の高圧的な取り調べも発覚。大方の世論は警察と検察、そして執拗に虐めるメディアCLASHを疑問視。タテルおよびTO-NAの名誉は回復され、あきたフェスも予定通り開催となった。早速、県の担当者達へ挨拶に行くタテルとTO-NAキャプテン代行カコニ、新メンバー代表ニコ。
「ダデルさん!えがったよ帰ってぎでけで」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。見捨てず待ってくださって本当にありがとうございます……」
「メンバーの皆さんも大変だったね。グミさんの体調はどうだい?」
「回復はしました。でも未だ起き上がれなくて、フェスには間に合わないかと……」
「それは残念だね」
「だからこそフェスを成功させます。病床のグミに力を与えるためにも!」
「けっぱって!秋田の人達は皆味方だんてね」

  

この日の秋田は、台風の影響下にあった東京より暑い38℃。歩くと遠いためタクシーでホテルまで行き荷物を降ろす。その近くにあるさけ富を訪れた3人は、フェスに出す冷やしおでん出汁を試飲する。
「おっ、見立て通りだ美味しい」
「タテルさん流石、良いところ見つけますよね」
「ここは秋田でも有名な店だから」
「具材入れたのも食べていきます?」

  

それぞれトマト、三角油揚げ、比内地鶏つくねを頼んだニコ、タテル、カコニ。
「カコニだけ肉」
「ブレないですね」
「ヒソヒソしない。あ、美味しいですね」
「良かった」

  

「あ、お久しぶりですしらたきさん!」
「あれ、カコニさんだ!」
「知ってくれてるの?嬉しい!」
「実物見ると大きいですね」
「お、大きい…」
「よく言われてます」
「やめてくださいタテルさん」
「大きくて可愛いですよねカコさんは」
「大きい、は余計!」
「改めて、フェスのお手伝いお願いしてもよろしいでしょうか?」
「勿論です!いやあ、無事開催できると聞いて何よりだあ」
「ぜひ将来はTO-NAへ」
「キャッチコピーは『秋田のおでん娘』だね」
「タテルさん、話が早いですって!」

  

夕食の店とは反対方向だが、循環バスぐるるに乗り駅前へ向かう。日本酒好きが秋田に来たら外す訳にはいかない店・永楽を訪れるためである。17:30から小一時間、酒を飲もうという計画である。
「2合までだ」
「そんなこと言って、絶対3合飲みますよね」
「後にたかむら控えてるんだ。流石に自制しないと」
「ニコちゃんはどうする?」
「1合くらいですかね。酒豪のエリカちゃんと飲んでるんで弱くはないと思いますが」
「飲みやすい酒ばっかだから調子乗らないようにね」
「そう言うタテルさんが一番調子乗るから」
「それは言わない」

  

酒量を抑えるため10分弱熟考。先ずは新政エクリュのノーマルと直汲みの飲み比べるとした。後者の方が明るい味わい、と思ったが時間経過で深みを増したように感じて結局よくわからない。
「え、すごい飲みやすい。そしてフルーティで洒落た味ですね」
「あまり無いでしょ、こういう日本酒」
「人気すぎて買えないからね新政は。東京では一流の飲食店でまあまあな金額出さないと飲めない」
「へぇ。じゃあここで飲んでおこう」

  

続いてコスモスの直汲みを選択。エクリュのお洒落な旨味をもっと屹立させたのがコスモス、とタテルは云う。

  

摘みもこの店の魅力ではあるが、おでんの試食をした上にこの後たかむらでの食事が控えているため、いつものお通し(豆腐と生しらす)のみで我慢する。

  

「新政だけ飲むのはミーハーすぎる。おらえ(県内物)から60mlで単品注文できる物は……」

  

雪の茅舎より花朝月夕を選択。ひんやり凛とした口当たりは十四代万虹を彷彿とさせる。そして米由来の自然な旨みが少しずつ溢れ出す。淡麗辛口の部類には入るそうだが、花蜜のような口当たりが心地良い酒である。

  

「兄っちゃえもの飲んでらね。花朝月夕は盆や正月の特別な時さ飲むだ」
この店の象徴である女将が話しかけてきた。タテルにとって、直接話すのは2年半ぶりである。
「リッチな味わいで、ゆっくりたっぷり飲みたいです」
「そうべ。雪の茅舎はブレ少ね。安定してらのが素晴らしぇ酒蔵だよ」
「美酒の設計も美味かったですしね」
「これ気さ入った?」
「はい、大層気に入りました」
すると女将が追加で注いでくれた。
「え、いいんですか⁈」
「ありがとうございます!女将さんと喋れた、嬉しい〜」
「今度秋田でフェスやるんです。終演後お客さんいっぱい来るかもしれないので対応よろしくお願いします!」
「はいよ」

  

一白水成の純米大吟醸も飲んでみたが、花朝月夕の衝撃の下では印象が薄めである。
「あのインパクトに張り合えるのは、新政の他だと十四代しかないかな」
「十四代?」
「いっちばん人気でレアな日本酒だよ。あれ確か秋田じゃなかったですよね」
「山形」
「お隣同士ということで、折角だから飲んでみます」

  

「ああ、やっぱり綺麗だ」
「水のように流れていきます。フルーティさもあって」
「雄町の方がコクあるかな。まあ山田錦も美味いけど」

  

「あのーすみません」
隣の男性客がタテルに話しかけてきた。韓国からの留学生だと云う。
「新政飲みたい。どれがお勧めですか?」
「どれも良いんですけど、No.6なんかどうでしょう。60mlずつ頼んで飲み比べしてみてください」
「おぉ、ありがとう。秋田の方ですか?」
「いえ、東京から飛行機でやってきました。僕はアイドルグループ・TO-NAのスタッフで、隣にいる2人がメンバーです」
「ほぅ、アイドルですか」
「秋田へはどれくらい滞在されるんですか?」
「2ヶ月くらい」
「あ、じゃあフェスも来れそうですね」
「フェス?」
「TO-NAのフェスやるんです、9月に。空港の裏手、国教大に隣接する公園で」
「それは気になりますね。食べ物とかも出るんですか?」
「秋田の良店が沢山出店します。美味しいご飯食べて、夕方からはTO-NAの熱々ライヴ!」
「おぉ楽しそう!是非行きますよ!」

  

ちょっとだけのつもりが、気づけば60mlを8杯も飲んでいたタテルとカコニ。2人の支払い金額は各々6千円となっていた。
「随分と贅沢しましたね」
「ニコちゃんも遠慮しなくて良かったのに」
「してないですよ。お2人ともよく飲みますね」
「まあまだ序の口ですよね」
「ね。たかむらではそんな飲まないと思う。食事にかなり集中するだろうから」
「そうなんですね」
最早その言葉は当てにならないと、生返事をするニコであった。

  

その頃野元は、タテルの釈放に怒り心頭であった。賛同者の歌手サヤコと共に先を憂う。
「タテル容疑者が不起訴ね。馬鹿げた話だよ。証拠は揃っていたじゃないか」
「検察も無能ですね。高圧的な取り調べが、なんて言いますけど犯罪者に対しては当たり前の対応ですよ」
「強情で我儘で短絡的なあの性格じゃ、また騒動起こすだろうね」
「そもそもグミは日常生活に戻れる見込み無し。その状態でフェスやるだなんて、常人の感覚では有り得ないでしょう」
「逆転劇でも演じるつもりなのかなタテル容疑者?僕は未だ信じるよ、君が社会的に殺されること。いや、その前に僕がこの世から消しちゃうかもね。楽しみにするがいい」

  

そんな野元の気持ちなど意に介さないタテル一行はバスに乗車し、竿燈大通りの山王十字路で降りた。ここから北に入る路地は住宅街であり、それに馴染むように江戸和食の名店・たかむらが存在している。

  

中に入ると、鳥海山大パノラマが食事を始めていた。
「チョーカイさん⁈」
「あれタテルさん、奇遇ですね」
「びっくり。何故ここに?」
「あきたフェスの開催が無事決まったということでちょっと下見を。いやあタテルさん、完璧な舵取り。会場内にレンタサイクルを用意、帰りの飛行機をジャンボ機に変更、来場者の宿泊地を周辺都市へ分散させてその土地の魅力も堪能させる。来場者目線の策をしっかり考えられていますね」
「チョーカイさんに褒めてもらえるとは」
「僕もアドヴァイザーの身として、初日だけですけどあきたフェスに参戦します」
「えっ、本当ですか⁈いやあそれは有難い」
「正直言って、TO-NAの皆さんが…す…き……はっ!」
「そんなモジモジしなくて良いですよ。堂々と言ってください」
「すっかり僕もTO-NA贔屓です。はぁカコニさんとニコさん、可愛い〜!」

  

鳥海山に惚れ込まれた3人は、仕切り直しのビールを注文した。そして早速登場した料理は八寸である。きぬかつぎ(里芋)は良質な胡麻の香り食感に引き立てられ、カスベの煮凝りは身がグニグニで食べ応え満点。春菊と浅利の胡麻寄せは胡麻が濃厚、浅利の臭みとは無縁。青物で口をさっぱりさせつつ、卵焼き、海老、数の子は素材の密度が兎に角高い。1品目から重厚な料理の数々であり、高級料理初心者のニコ、がっつり飯にしか興味の無いカコニも満足げである。

  

こうも質が高いと食べるスピードが落ちるタテル。八寸を食べている間に次の小鉢が登場する。秋田産鮑。鮑の身自体はそこまで味が濃くないという経験則があったが、今回は旨みと程良い磯の風味が凝縮されていてすごく美味しい。土台である白茄子のお浸しも、茄子らしい仄かな甘みをさっぱりと味わえる。

  

「個室のお客さん、浴衣着てますね。私達も着たかった」
「着たいね。でも下駄だとやっぱり、足踏まれるのが怖い」
「ですよね。最近踏んでくる人多いから」
「踏ん付けおじさんか。厄介な生物だよな」

  

蕪餅の上に、キャビアが目的を持って載っている。まるで高橋優の歌声のように蕪の良い泥臭さを演出。飾り気の無い畑の作物が、海の宝により新たな魅力を打ち出す。

  

「みんな一生懸命練習してるよな、盆踊り。普段のバキバキダンスとは真逆で難しそう」
「はい。カコニさんの舞が美しくて憧れです」
「嬉しいねぇ」
「どうしたらあんなしなやかに踊れるんですか?」
「それはやっぱり、指先を真っ直ぐにすることかな。手足を長く見せられるから」
「カコニは元が長いから。狡いよね」
「しょうがないでしょ、生まれつきだから!」
「長く見せる。部屋戻ったら試してみます」
「いいね。あとは、頭に物を載せて落とさずに歩いてみたり」
「独特な練習法」
「でも確かに見映え良くなりそうです」
「伝統芸に挑む訳だから覚悟は必要。皆で揃えて、現地の人に認めてもらえるよう頑張ります」

  

玉蜀黍の擦り流しに蓴菜。蓴菜をたっぷり楽しみつつ、出汁ゼリーがとうもろこしの甘みをより際立たせる。
「これが蓴菜ですか。外側はゼリーみたいだけど食感はシャキシャキ、面白いですね」
「でしょ。自分から食べようとは中々思わないよね」
「蓴菜という存在自体を知らないと思います」
「私野菜嫌いだけど蓴菜ならいけるかも」
「良かったじゃんカコニ」

  

「皆さん、ちょっと聞いて欲しいことがあって」
鳥海山がタテルらに悩みを打ち明ける。実は彼もまた、CLASHから下げ記事を書かれていると云う。

  

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「昨今の物価高で皆さん旅行する余裕が無い、というのは重々承知です。でも旅行業の人だって会社の存亡がかかっている訳だし、オーバーツーリズムの問題もある。交通費宿泊費の値上げとか、仕方ない事情もあるんですよ」
「不利益になることだって伝えなければならない。ネット民が一番それを理解すべきなのに、結局自分の都合優先。何正義気取ってんだか」
「メディアも誤解なきよう補足説明をしてほしいですよね。ネット民の味方する前に」

  

千葉のメイチダイ(?)昆布締め、金目鯛昆布締め、秋田アカイカ。昆布締めによりとろっと凝縮された身を楽しむ。アカイカも、男鹿の塩と合わせると味わいが生まれる。

  

鳥海山へのCLASH砲を操っていたのも野元である。ただし、タテルやTO-NAへのCLASH砲は正確性に拘らず乱発していたが、鳥海山に対しては慎重であった。
「タテルが釈放され、世論は完全にCLASHを見限ろうとしている。信用回復のチャンスは今しかない。鳥海山の県政癒着疑惑は抜け目の無い取材の上報じろ。嘘でも良いけどバレてはいけない。いつもはスポーツ紙記者だの政治記者だの濁しているソースも、今回は名前を出すこと」
「でもそんなことしたら抗議が」
「もしそうなったら、僕がメロンを贈って怒りを鎮めてあげるよ。鳥海山は元来アンチの多い人物だ。弾がハマれば彼は業界から干され、彼を起用したワイドショーも皆批判に晒される。ふざけたコメンテーターとテレビ局は淘汰され、本当に日本のことを思うメディアがスタンダードになる」
「そうですそうです!それこそが今日本に求められている報道」
「知識の少ないチョーカイちゃんには回転攻めを見舞ってあげようか。トルネード・スピン!」

  

ここで日本酒のメニューを眺めるTO-NA一行。この日は新政の用意が無いようであったが、この店でしか飲めないものをと、別誂に注目する。

  

まずは山本山廃を半合。少し木の雰囲気を感じる日本酒である。

  

京都の合鴨を焼いたものに、ベリー系のソースが掛かっていた記憶である。身は肉厚で柔らかく、臭みは無い。ベリー系のソースがセクシーに肉の味を立てる。

  

「それなら一緒に闘いましょう。サークルの先輩が弁護士やってて、CLASHへの集団訴訟を担当しているんです」
「訴訟か……」
「基本はその弁護士さんにお任せします。我々はいつも通り活動していればいいんですよ」
「もし負けたら、余計悪いイメージがついてしまう……」
「元気が出ない時こそ、我々の楽曲を聴いてください」
口を挟んだカコニ。
「TO-NAを愛して下さる方に、悲観的になってほしくないんです」
「カコニさん……」
「ファンの皆さんには、TO-NAに人生支えられた、と言ってもらいたいんです」
「月並みの言葉かもしれませんけど、メンバーは観る者を楽しませるため、心揺さぶるため、勇気づけるため、パフォーマンスをしています。でも観る者が楽しもうとしなければ、伝えられるものも伝えられないんです。一座建立の姿勢、是非忘れずにお願いします」
「TO-NAの皆さんって、芯が通ってますね。なんて素晴らしいんだろう」
「ブレてはいけません。あ、すき焼きみたいなのが」

  

秋田の和牛・錦牛のリブロースとブータン産松茸を使用したすき煮。和牛らしく脂がたっぷりでありヴォリューム満点。足し算を重ねた日本料理にタテルは衝撃を覚え、そういう料理が大好きなカコニは喜びを隠せずにいる。
「カコさんが童心に帰ったかのように笑ってます」
「俺も初めてみたよ。進撃の巨人がこんなに笑ってるの」
「進撃の巨人じゃないです私!」

  

「お楽しみいただけて何よりです。錦牛、フェスに出す料理としてもいけそうですね」
「あ、自らフェス出店を」
「話は聞いてますよ。喜んで出店させていただきます。他に良さそうなものありますか?」
「蕪餅とキャビアとか」
「良いところ目つけますね。でもこれはフェス向きでは無いんですよ」
「確かに、屋台の設備で仕上げるには無理がありそうです」
「この後の料理も食べていただいて、もう1品決めましょうか」

  

こってり系料理の後は、鰯と胡瓜を海苔で巻き、上に梅肉を載せたもの。口の中がさっぱりする。鰯の脂乗りがもう少しあるとより美味しくなりそう。
「生魚をフェスで扱うのは難しそうですね」
「炎天下だとちょっと危ないよね」
「美味しいのは間違いないんですけどね」

  

揚げ物から三陸の紫雲丹クリームコロッケ。雲丹の香りとコクを控えめながら確かに表現。それ以上に印象的なのは、白トリュフを香らせたタマゴサラダである。トーストのニュアンスがある衣との距離感も丁度良い。
「雲丹の香りに白トリュフ、解りやすくてインパクトがある」
「みんなが喜べる味ですね」
「多くの日本料理店が素材に忠実に、と控えめな味付けをする中、この店はパワフルな料理に拘っている。カコニにもニコにも理解しやすい料理だ。高品質だが高尚すぎない、ありそうで無い日本料理といえる」
「野外という状況下でも、美味しさを掴みやすそうですね」
「そういうこと。三陸だから秋田とは違うけど、同じ東北ということで善としようか。ふぅ、漸くグラスが空いた」

  

残る料理(甘味除く)は1品であったがもう半合別の別誂を戴く。一白水成の荒走り生酒。濁り酒である。濁りの重さがありつつも華やかであり、変な言い方をするとカルピス感覚で飲める。

  

〆のへべすそば。夏の定番蕎麦に見えるが、へべすは酢橘やかぼすとは違う柑橘であり、蕎麦も冷麺のような食感である。ここまでの重厚な料理を洗ってくれるようなさっぱりとした食事である。

  

ここで鳥海山は食事を終え先にホテルに戻る。
「明日はどちらに行かれるんですか?」
「男鹿に行きます」
「男鹿!風光明媚な場所ですよね」
「タテルさん、私達明日ってどこ行くんでしたっけ?」
「そういえば決めてなかったな」
「男鹿なら1時間弱で行けます。決めてないなら一緒に行きます?」
「そうしましょう!そうだ、俺ちょうど行きたい場所あったんだ」
「え、どこですかそれ?」
「内緒。カコニならたぶん喜んでくれるとこ」

  

甘味は涼やかに寒天と豆腐。透明な寒天とまったりとした豆腐を黒蜜の甘みが補完する。嵐の後の静けさ。なんと美しい幕切れであろう。

  

「今日は出なかったけど、八衣(はごろも)という甘味が有名なんだよねここ」
「お洒落な名前ですね」
「驚くほど柔らかい求肥で餡や具材を覆うんだ。これに関しては東京でも買えるけど」
「そうなんですか?」
「最近は月に一回約1週間、麻布台ヒルズ傍の店舗で腕を振るっている。ただ今日の会計は、会員証作成代含めても1人2.5万弱。東京だと4万いくらしいから、秋田に来て食べる方が良いだろう」
「今度は冬にお邪魔したいですね」

  

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フェスにおいては、錦牛すき煮・雲丹コロッケ・八衣が提供された。贅沢に3点セットを注文する客が多数を占めていたと云う。

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