連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』36杯目(改/蔵前)

グルメすぎる芸人・TATERUと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共25歳の同い年で、生まれも育ちも東京。ひょんなことから出会ってしまった2人の、ラーメンと共に育まれる恋のような話。

  

隅田川のほとりにて行われる次の対決。
「ここに10本のボールペンがあります。1本だけあるビリビリペンを引いた人が負けです」
「シンプルなロシアンルーレット…俺こういうの弱いんだよね」
「これは完全に運ゲーだね。まあ負けないけど」

  

先攻は自信満々の京子。
「よし、これにします!…痛ったぁ!」
なんと1本目でハズレを引いてしまった京子。
「え、マジで?もう終わり?」
「京子の負けだよ。俺もやりたかったのに」
「もう一度やりましょう!撮れ高ないでしょ」
「…仕方ないな。じゃあ次負けた人は次々回のラーメンを自腹ね」

  

再び京子が先攻。
「今度こそ勝つからね。よしこれ!…痛ってぇ!」
「やばいって。1/10が2回だから1/100の確率」
「こんなことある⁈」
「ある意味もってるな、京子」
「ということで、次とその次のラーメンは京子の自腹です」
「あぁ、3連敗…」

  

蔵前駅から田原町方面に向かう道の途中のラーメン屋。平日昼間のピークタイムで若干の行列があったが、5分ほどで入ることができた。
「そういえばもう1つ買いたいのがあって」
「よく買うね。さすが金持ち京子」
「やめてよそれ。ほら、もうすぐ花火大会あるじゃん?だから浴衣買いたい」
「浴衣?」
「毎年浴衣着るけどいつもレンタルでさ。そろそろ自分の浴衣持っておきたいんだ」
「浴衣か…俺そういうの苦手なんだよね」
「えっ?」
「和装は金輪際したくない。着付けとか面倒だし、なんか落ち着かない。それに暑そう」
「何言ってんの。浴衣の方が涼しいよ」
「そう?」
「タテルくんも浴衣買おう。今度の隅田川花火大会、浴衣着て基地から一緒に見ようよ」
「…京子が言うならそうする」ちょろいタテル。好きな人の言うことは少し押されればすぐ受け入れてしまう。

  

ラーメンがやってきた。ここの名物は貝出汁のラーメン。貝出汁ラーメン自体はよく聞くけど、この1杯は読者諸君の思う百倍、貝の味が強い。まんま貝の味である。そうなるとタテルには厳しいものがあった。
「俺グルメ標榜しておきながらアレなんだけど、貝ってほとんど苦手なんだよね」
「マジ?美味しいのに」
「食えるのはアワビとホタテだけ」
「何それ」
ここまで貝の味が強いと、ラーメンとしてはまとまりがないように思えた。しかしこの強さが好きな人も多いだろうから、この店は繁盛しているのだ。

  

店を出て浅草まで歩いてきた2人。浴衣姿で歩く人も多い人気観光地だから、当然浴衣を買える店があるだろうと踏んでいた。しかし大半がレンタル専門店で、買うとなると話は別のようだ。
「雷門前の観光センターで聞いてみようか」
「浅草より上野の方がありますよ」
「そうなんですね…」
「浴衣の専門店って、だいたい男女別で分かれているんですよ。だから別々の店に行った方がいいかと」
「じゃあ各々買いに行くか」
「そしたらさ、お互い買った浴衣、当日まで秘密にしよう」
「いいね。京子の浴衣姿、楽しみだ」
「ちゃんと一式揃えてね」
「ラジャー」

  

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