フランス帰りのカケルは、「アパーランドの皇帝」として問題だらけのこの国に革命を起こそうとする。かつてカリスマ的人気を集め社会を変革しかけたアイドルグループ・Écluneをプロパガンダに利用しながら。
*この作品は完全なるフィクションです。過激な話や意見が展開されますが、実在の人物・店・団体とは全く関係ありませんし、著者含め誰かの思想を示すものでもありません。
アパーランドのSUGGESTIONに対し、リプ欄にて様々な意見が寄せられた。
素晴らしいアイデア!この国はとにかく自転車に甘すぎる!
周りも見ず飛び出してくる、ロボットのようなチャリカスが多すぎる。安全教育と整備は必須。政治家にも関心を持ってもらいたい。
免許制とか整備とか言うのは簡単。でも指導員や試験官の人手不足はどう解消するの?道路整備の予算は何処から出るの?その辺考えてもらわないと無責任だね。
自動車の方がマナー違反目立つけど。自転車だけいじめるのやめて。
「批判コメは相変わらず上からだな。自動車に矛先向けて自転車の責任逃れさせようとする奴は救いようがないね。どんな奴だ?うわっ、絵に描いたような排外主義者。無視無視っと」
そしてこの日は、煽り運転の熊に捕まり実行できなかった、C運輸社長の強盗に再挑戦する。あまり現地に長居すると怪しまれる、という懸念から前回はギリギリのスケジュールで動いていたが、今回は余裕を持って昼過ぎから動き出すことにする。
出発前、実行メンバーを集めて昼食を摂るカケル。14時近くであったため店内は空いていて、タイミングよく1つだけあるテーブル席に入り込めた。
現金の場合は券売機で購入、PayPayで払う場合は店員に直接注文するシステムである。この日1種盛りで注文できたのは麻辣チキンカレーとミント香る冷製野菜カレーの2種類。あいがけも可能で、3種盛りにすると加えてバルサミコの効いたポークカレーがついてくる。ちなみにカレーの種類は入れ替わりが激しく、夜営業では野菜カレーが違うものになっていた。
「3種盛りにさせてください。どうせこの店もまた、二度と来ないとか言い出すんですよね?」
「二度と来ないなんて、まるで俺が辛口嫌われ者グルメブロガーみたいじゃないか」
「違うんですか?」
「違うだろ。俺は遍くいろんなものを食べたいの。同じ店に何度も訪れるメリットが無い」
「行きつけという概念は無いんですね」
「ああ。Écluneの子からも言われたけど、変える気は無いね。皆3種盛りにしなさい」

客が少ないためカレーも早く仕上がる。3種のカレーはそれぞれブロッコリー、コーン、パプリカピクルスによって仕切られており、早い段階から混ざってしまわないようになっている。

野菜から食べることを心がけるカケルはミントカレーから食べてみる。本当にミントが効いており、カレーとして食べようとすると抵抗を覚える。冷や汁のような趣があると考える。
「野菜が沢山ですね。プチトマトまで入っちゃって」
「奥に甘さとかあるから、料理としては立派だね。ご飯とはちょっと合わないのかな」

続いて試してみるのはバルサミコポーク。角煮のような豚バラ肉を口に入れてみると確とバルサミコ酢の味。豚肉とバルサミコの相性は最高でありご飯が進む。
「全く、SE○は逆張り大好き野郎が多くて疲れるよ」
「何でも文句言わないと気が済まない人種ですからね」
「具体的なやり方言え、ってリプあってさ。140字じゃ全部語れねえって。仕方ないから続き書いてやったよ、もう少し泳がせようとしたのに」
???SUGGESTION???(その2)
人手不足の解決は、高齢ドライバー問題と絡めてみましょう。人口の1/4を占める高齢者の方々に教習指導員・試験場職員として活躍してもらいたい。そうすれば高齢者の方々も危機意識を強く持つようになるし、何しろボケ防止となる。Win-Winですね。
「まあこれも批判はされそうですけどね」
「高齢者を扱き使うな、とか言われたよ。それはまた別問題でさ、20代から定年まで馬車馬のように働かせてその後一気に暇になる、というシステムが良くない話で。若いうちから心置きなく休めて、その分生涯現役で居られれば健康寿命も延びるんじゃないの?まあそれは次の章で話すことだけど」

麻辣チキンは確かに本格中華の香り。カレーとしてのスパイスも効いており、中華とカレーが喧嘩することなく美味いものとしてそこにある。
「はあ、意外と重めだねここのカレー。家カレーみたいにスイスイとは入らないや」
「それがスパイスカレーというものですけどね。ここのは確かにゆっくり食べたい」
30分かけて完食した一行。実行メンバーはそのまま車に乗ってC運輸社長宅に向かい、カケルは事務所からその様子を見守る。事務所に戻る途中、信号の無い横断歩道を渡ろうとしたところ、車がやってくるのを見た前の老人が急に止まりカケルは面食らう。
「爺さん!先行ってください、じゃないんだよ。あんたが許しても警察が許さないんだ。歩行者が先なのわかる?ありがた迷惑であること自覚しな!」
という少し苛々する事案はあったが、無事に事務所に戻ったカケル。実行役も余裕を持って現地に到着し、宅配便業者のスタッフになりすまして直接家に押しかける。社長は怪しむことなく玄関のドアを開け、実行犯は力づくで社長を拘束した。