超大型連続百名店小説『世界を変える方法』第1章:真の正義を生み出そう 4話(ラ・プレシューズ紀尾井町)

かつてカリスマ的人気を集め社会を変革しかけたアイドルグループ・檜坂46。同じく革命を目論んでいるフランス帰りの男・カケル(21)に招かれ、今再びこの国を変えようと動き出す。
*この作品は完全なるフィクションです。著者の思想とは全く関係ありません。こんなことしようものなら国は潰れます。

  

レッスン場にメンバーが集まると聞いたカケルは翌日、tnznはじめメンバーには極秘でつきまとい犯の様子を観察した。
「昨日と同じ人物。単独犯で間違いないね。よし、いよいよ本番だ」

  

「犯人の確証が得られた。始末する準備は整った」
「ありがとうございます。でも本当にやっちゃうんですか…」
「そうさ。場所ももう決めてある。ガーデンテラス紀尾井町のケーキ屋だ」
「ケーキ!楽しみです」
「ここは窓際にズラッと席が並んでいて外から丸見えだ。ストーカーをおびき寄せるには最高の舞台だよ」
「なるほど…」
「前と同じように、犯人の耳に入るような場所で誰かメンバーを呼び出すんだ。今回は俺も店内で様子を見る」
「わかりました」
「もちろん空振りになる可能性もあるが、ここで仕留めるつもりで行くから。覚悟はいいね」
「はい!」

  

3日後、レッスンの合間を縫ってtnznとmrhがやってきた。そしてカケルの期待通り、ストーカー犯も後ろからつけてきた。

  

「なんか俺がストーカーのストーカーしてるみたいだけどな。でも俺は正義のストーカーだから問題無し」
カケルとその仲間1人は別テーブルに座り様子を窺う。犯人は外でウロウロするだけなのか、店内に入ってくるのか。
「うわ、入ってきたよ。えっ?tnznの隣来た」
「席いっぱい空いてるのにわざわざ隣座るとは…」
「大胆だな。でもお前の夢は間もなく果てるさ」

  

その間カケルはケーキを堪能する。ケーキセットのドリンクにはワインもラインナップされており(しかも追加料金なし!)、カケルは一足先に勝利の美酒たるスパークリングワインで喉を潤す。合わせるケーキは、フランス帰りのカケルらしくフレジエ。
「苺がものすごく瑞々しい。素材を活かすのっていかにも日本的で面白いな。バニラの香りがもう少し出ると作品として奥行きが増すんだけどな」

  

tnznの隣をとった犯人もまた、スパークリングワインとフレジエの組み合わせを頼んでいた。
「くそっ!何でアイツとチョイス丸被りなんだ!」
「カケルさんの根底にもそういう下心、あるんじゃないですか?」
「ばかなこと言うな。俺は他にもケーキ頼んでる」

  

インペリアルグリオット。チェリーの入ったケーキだが、ライムのクリームと紅茶のムースで覆われている。ありそうでない取り合わせにカケルは感銘を受けた。ライムがもろライムの味で、チェリーも十分量入っているので満足度が高い。
ヌガーの生産地モンテリマールの名を冠したムースは、多様なドライフルーツの食感とピスタチオの風味が楽しい。
「モンテリマールは南仏。プロヴァンスの入口だな。いつかメンバーを連れて南仏でバカンスさせてあげたい」
「そのためには革命を成功させなければ」
「前から思ってるんだけど、俺たちがやろうとしてることって『革命』なのか?」
「『革命』じゃないんですか?」
「『革命』というよりは『浄化』だな。なるべく安定は保ちたいんだよ」
「どういうことですか?」
「罪なき市民の流血は避けたい」
「それは崇高な理念ですね。あくまでもこの国の平和を守ることが第一だと」
「そういうことだ」

  

「tnzn、そろそろお暇しようか」
カケルの指示によりメンバーは会計に向かった。すると犯人もその後ろに並ぶ。
「面白いくらい俺の見立て通りに動くなこの犯人。ま、それが一番楽でいいんだけど」
メンバーはカケルの指示通りのルートを歩く。犯人はその後をつけ、カケルの仲間を乗せた車がさらにその後を追う。
「さあそろそろお仕置きの時間だ。tnzn、mrh、くれぐれも驚くな、知らんぷりして歩き続けるんだ」

  

人通りの少ない路地に入った瞬間、車が止まり隊員4人が犯人を襲った。殴る蹴るなどの暴行を加え、弱ったところを車に乗せ走り去る。

  

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