超大型連続百名店小説『世界を変える方法』第1章:真の正義を生み出そう 3話(カリーアップ/北参道)

かつてカリスマ的人気を集め社会を変革しかけたアイドルグループ・檜坂46。同じく革命を目論んでいるフランス帰りの男・カケル(21)に招かれ、今再びこの国を変えようと動き出す。
*この作品は完全なるフィクションです。著者の思想とは全く関係ありません。こんなことしようものなら国は潰れます。

  

ストーカー懲らしめ作戦がいよいよ始動する。準備を入念に行い、正確に事を進めたいカケルはtnznに事細かく指図する。
「まず、普段の現場にストーカーが現れたら、そいつに聞こえるくらいの声で次の会話をしてみてください。変なアドリブが入ると怪しまれかねないので、tnznちゃんはなるべく一言一句正確にお願いします」

  

tnzn「ねえねえ、今度カレー食べに行かない?」
メンバー「カレー、いいね!」
tnzn「北参道にいいカレー屋さん見つけたんだ。ここ」
メンバー「美味しそう!行こう行こう」

  

「北参道にはカレーの名店がたくさんあるけど、外から店内の様子が見えやすいという理由でカリーアップを指定しました。一番手前の席だと様子を窺いにくいから、それ以外の席に座るように」
「はい」

  

その後tnznはカケルの言う通りカレーを食べに行く手筈を整えた。そして作戦決行の日。
「俺は車の中から観察してるから。tnznちゃんはあくまでも普通の女性として振る舞え。振る舞え、って言うのもおかしいけどな」

  

tnznはtkrと共に店内に入る。するとカケルの思惑通り、犯人がついてきたことがtnznから伝えられた。
「40代後半くらいの薄毛のデブ…いかにもって奴だな」
犯人は怪しいくらいに店の前をうろちょろする。
「普通なら怪しまれないように動くはずなのに、コイツは大胆な動きをしている。長いことつきまとってるな。手慣れてるな」

  

「カケルさん、何食べたいですか?」メニュー表の写真と共にメッセージを送るtnzn。
「テイクアウトしてくれるの?ありがたい。じゃあ牛すじとバターチキンで。そしたら女性隊員送り込むからその人に渡して」
恋愛禁止の見方が強いアイドル界。異性同士で物の授受を行うと、犯人の気が大きく変わって色々面倒なことになりかねない。

  

女性隊員が降りると、カケルらを乗せた車は一旦国立競技場方面へ去った。女性隊員はtnznからカレーを受け取ると、犯人の視界から外れた路地へと移動する。やがてそこに車が戻って来た。
「貰ってきました、カレー!」
「ありがとう。早速いただくね」

  

牛すじカレーは玉ねぎなど野菜の旨味があって深く複雑という一流洋食店の良さと、酸味があって軽やかというカリースタンドっぽさが同居している。牛すじも十分入っていて満足した。
バターチキンカレーはトマト味強めに仕立てるのが流行りだが、この店のものはココナッツミルク味が強くのっぺりした渋い正統派の仕上がり。

  

その後、tnznとtkrが事務所まで歩いて行く様子を車から監視したカケル。ストーカー男は相変わらずつきまとっていた。

  

事務所に到着した。中に入ってしまえば犯人は追って来られない。
「犯人らしき奴はしっかり特定した。写真も撮ってある」
「ありがとうございます」
「だがまだ捕まえに行くのは早い。俺らなりの手続きがあるからな。でも1週間くらいあれば動けそうだ。それまでもう少し辛抱してもらえるか?」
「はい、頑張ります!」
「ありがとう。ちなみに明日は何するの?」
「新曲のフリ入れです」
「なるほど。覚えるの大変そうだな」
「でもTSUNAYOSHI先生が楽しく教えてくださるので、やっていてワクワクします」
「TSUNAYOSHIさん面白いしいい人だもんね。新曲楽しみにしてるよ」

  

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