ヤマシタタウンに住む18歳の少女・スミレ(cv.レジェ)。ポケンモマスターを夢見て旅を始める。最初の手持ちポケンモになったのは、優しい心の持ち主にしか姿を見せない希少ポケンモ・カビンゴ(cv.タテル)であった。
☆スミレの手持ちポケンモ(現時点)
・外に出てスミレと共に歩く
カビンゴ(アブノーマル派)
・カプセルに入れて持ち歩き
ムゲンシャ(ほむら派)
この日スミレはママと一緒にターミナル駅へ買い物に出かけていた。カビンゴは初めて来るデパートに興味津々であった。
「とんかつ、天ぷら、ラーメンにオムライス。美味しそうなレストランいっぱいあるンゴ!」
「食べたいもの何でも食べていいわよ〜」
「特にこのカツレツアン、地元で有名なとんかつ屋さんなんだよ」
「行きたいンゴ!」
「あぁ、お腹空いた〜」
ひもじい思いをするボケット団。ろくにポケンモ捕獲もできていないのにケイトクチンクラブで豪勢な食事をしたことにより、持ち金はごく僅かとなっていた。
「とんかつ食べたいニャ…」
「贅沢言うな。ドラネコに肉なんて、豚に真珠みたいなものよ」
「そうそう、蛇にピアスみたいな」
「それは全然違う」
「とにかくアタイらはポケンモ捕まえないと、金は出ないし上長に顔向けできねぇ!しまっていくぞ!」
「へ〜い…」
とんかつを食べたいカビンゴであったが、昼食デパートの地下を歩いていると妙にキンキンとした一角があった。
「さむ〜い!何ここ⁈」
「スーミュラのジェラート屋さん、だって」
「スーミュラって、あのアイス派ポケンモのスーミュラ?」
「そうじゃない?ほらほらいたよスーミュラ」
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「えっ⁈スズカさ〜ん!」
レーシングスーツ姿で突如現れた先輩メンバー・スズカに抱きつくレジェ。
「苦しいよスミレちゃん〜」
「だって大好きなスズカさんがいるんですよ。もうびっくりしちゃって」
「イタタ!愛が重すぎるよ!」
「いいじゃないかスズカ」悠然と茶々を入れるタテル。「いつも独りで寂しそうにしてたから」
「ナメないでください!私結構愛されてます!」
「そのようだな。という訳でスズカにはスーミュラ役を担当してもらいます。持ち前の美声と滑稽さで最高のアテレコ、頼みますよ」
「ハードル上げないでください!」
「スズカさんなら大丈夫ですよ!楽しみです一緒にアフレコできるの」
「スミレちゃん…嬉しいよそう言ってくれて」
「ほらやっぱり寂しかったんだ」
「やめてください!」
「意地張らなくていいから」
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早くフレーヴァーを選びたいスミレとポケンモ達であったが、セルフレジで決済し引換券を貰ってからショウケースに移動し決めるスタイルである。アサクサタウンにも支店があるが、そことは違って最大2種しか選べない。
「僕全種類食べたいンゴ」
「カビンゴちゃんはいくらでもお食べ。ムゲンシャちゃんはどうする?」
「シャシャ!」
「スミレくん、スマホイトダだ。ムゲンシャは唐辛子味と花椒味が食べたいと言っている」
「ごめんねムゲンシャちゃん、その味はさすがに無いみたい」
「シャシャ…」
「後でキヨーケンの麻婆豆腐食べようね」
「シャ!」
スミレは秋の味覚からマロン、そして変わり種から大葉を選択した。大葉はそのまま大葉の味であり、イタリアのバジルには無い独特の青さである。大葉をジェラートにすることに対する興味深さと違和感、どちらを覚えるかは人それぞれである。
マロンは甘露煮の粒が入っており、昔ながらのモンブランらしい甘さがある。
「ジェラート食べたら寒くなってきた。ムゲンシャちゃんの炎で温まりたい」
「シャー!」
「ミュラ!ミュラミュラ、ミュラ!」
「炎を上げすぎだ、氷が溶けるだろ、ですって」
「すみません、寒くてつい…」
「ミュラー!」
店主スーミュラからアイス派の大技「ザオー」を食らい、一同は店の外へと吹き飛ばされた。
「ごめんねみんな、私がうっかりしたばかりに…」
「お客様すみません、店主がご迷惑をおかけしました!」弟子スーミュラが駆け寄る。
「いえいえ。氷に火を向けちゃいけないことくらい弁えないとダメですよね」
「でもザオーで吹き飛ばすのはやり過ぎだと思っております。大変申し訳ございませんでした!」
「わざわざありがとうございます。修行中なんですか?」
「はい、世界一のジェラート職人目指しています。でもなかなか上手く作れなくて…」
「それは大変ですね。修行始めてどれくらい経つんですか?」
「2年目です。どうしても『スコシモサムクナイワ』が決まらないんです」
「アイス派の技ね」
「これが上手く決まらないと、氷のジャリジャリとした食感が残ってしまうんです」
「滑らかなジェラートを作るのって、当たり前のことじゃないのね」
すると突如檻に囚われたスーミュラ・カビンゴ・ムゲンシャ。勿論ボケット団の仕業である。
「また貴女達⁈何てことを⁈」
「何てことをと言われたら!」
「答えてあ
(中略)
「ニャンちゃって!」
「しつこいな!檻から出せゴラァ」ヤンキー化したスミレ。
「アタイらが捕まえたんだからアタイらのものだ。そんな当たり前のこともわかんないの、甘々アザトガール?」
「アンタらのしてることは強盗と同じじゃい。早く返さんかい!」
「やなこった〜い。ベロベロバ〜」
「失礼な。私の娘を子供扱いしないでもらえます?」スミレママも苦言を呈する。
「アザトガールの母親か。前から言いたかったこと言わせてもらうぜ。お前の育て方が甘いからこんな出来損ないになるんだよ娘さん」
「何ですって⁈それが初対面の人に対する口の利き方ですか⁈」
「寧ろ感謝してもらわないと。わざわざ世の中の厳しさ教えてあげてるんですけど」
「無用ですわ」
「ミュラ!ミュラミュラミュラ!」
「店主スーミュラさん⁈」
「大事な弟子を返せ、だと⁈お断りだね。返して欲しけりゃ店中のジェラート全てよこしなさい」
「ついでにヤダーンの尻尾ジェラートも作りなさい」
「ミュラ⁈」
「無茶振りだと?それでもジェラート屋か!」
その時、ずっと檻を熱していたムゲンシャが遂に壁を穿つ。さらにカビンゴがひび割れた箇所を何度も叩きつけ、全ポケンモが檻から脱出することに成功した。
「しまった!ミッチー、何で檻を見張らないの!」
「サッチーが見張ってると思ったから!」
「はぁ⁈見張りはサッチーの仕事だろ!」
「知らんし!」
「2人とも、報連相を徹底するニャ!」
「お前は黙ってろ!」
「とにかく、ムゲンシャに檻を破られるなんて想定外だ」
「熱したら金属が溶けることくらい頭に入れておけよ」
「そういうアンタは考えていたのかよ⁈」
「…いいじゃない何でも!」
「ミュラミュラ、ミュラー!」
店主スーミュラは渾身のザオーをボケット団に繰り出した。
「いやーんばかーん!」
「ミュラー!」
「先ほどは吹き飛ばしてしまい失礼しました。弟子を守ってくださりありがとうございます、ですって」
「いえいえ。ムゲンシャ、ありがとね。よくやった、自慢のポケンモだよ」
「シャー!」
「カビンゴちゃんも流石の怪力だね。ご褒美たくさんあげようね」
「ミュラー!」
「ジェラート好きなだけ食べていってください、ですって!」
「ンゴォォ!…ンゴ?」
弟子スーミュラは浮かない顔をしていた。ムゲンシャとカビンゴの陰で何もできなかったことを後ろめたく思っていたのである。
「ミュラ、ミュラミュラ!」
「ミュラ!ミュラアァァー!」
「スコシモサムクナイワが決まった!美味しいジェラートの完成ね!」
「ンゴ!」
弟子スーミュラが作ったジェラートを、カビンゴは全て食べ尽くした。そして満面の笑みで万歳する。
「かわいいねカビンゴちゃん!」
「ンゴ!」
「ミュラ。ミュラミュラ、ミュラ」
「ミュラ…」
「ミュラミュラミュラ、ミュラ!」
「ミュラ… ミュラ!」
「スミレくん、スマホイトダだ。店主スーミュラは弟子スーミュラを一人前のジェラート職人に認定した。そして、スミレくんの手持ちになりなさい、と言っている」
「ミュラ!」
「スーミュラちゃん!これからよろしくね!」
「ンゴ!」
「シャー!」
「ミュラミュラ!」
期せずして3匹目の相棒をゲインしたスミレ。熱いポケンモと冷たいポケンモ、そして気儘なポケンモと多様性に溢れるラインナップとなった。だがこの世には沢山のポケンモがいる。ポケンモマスターへの道は未だ始まったばかりである。
No.124 スーミュラ アイス派
まじめポケンモ
いつも面白い動きをしているためひょうきん者に見られがちだが、根は真面目ですぐ反省する。車が好きで、レーシングスーツを着させてあげると喜ぶ。
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