連続妄想食べログ小説『クイズ王街道、驀。』Q8:枸杞子を掬う。

東大卒の肩書きを活かしクイズ番組でも大活躍するグルメタレント・TATERU(25)が、「宮崎美子の再来」と持て囃される気鋭のクイズアイドル・カゲ(綱の手引き坂46)と繰り広げる東北1泊2日の旅。

カゲは未だ山形駅に居た。タテルの遺していったスーツケースに紙が貼ってあり、そこに載っている謎解きに取り組んでいた。

一方のタテルはさくらんぼ東根駅に着いた。ここまで、お土産らしきものは何一つ買っていなかった。タテルの大好きな梅を使ったお菓子を見繕いに、この地にやって来たのである。

地方の幹線道路は卦体だ。直進の歩行者信号が片側にしかない交差点。横切って地下道通ってまた横切る。時間の無駄である。

林檎の実の数多なるを抜けると、松野屋が現れた。幸い休みではなかった。
中に入ると、看板商品「ひがしね美人」の試食が供された。スイーツに飢えていたタテルは、この時点では美味しいと感じた。両親のために買って帰ることに決めた。
「じゃあひがしね美人中粒の完熟と青梅を3個ずつ、そして…」

タテルの後日談によると、改めて食べたひがしね美人は甘すぎたようだ。元来甘い梅をシロップに漬け干したものだから、とことん甘さが凝縮される。酸味も活かしてほしかった。

サイズの大きい特々撰も、全く同様の感想だ。蜂蜜漬けも加わっている梅ひとえは、更に甘味が尖っていた。

一方で甘納豆風に仕上げた出羽の白雪は適度な甘さで少しは食べやすい。しかしその大粒ヴァージョンである梅和は畢竟、執拗(しつこ)さが目立った。

ともあれ天童で落ちた気持ちは少しずつだが回復していった。梅菓子の紙袋を挈げ、タテルは最後の舞台・米沢を目指した。

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