連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』71杯目(入鹿TOKYO/東久留米)

グルメすぎる芸人・タテルと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共1997年生まれの同い年で、生まれも育ちも東京。ラーメンYouTuber『僕たちはキョコってる』として活躍している2人の、ラーメンと共に育まれる恋のようなお話。グループ卒業を控えた京子の歩みを振り返り、未来への希望を探しに行く。

  

「これ今日の収録で置いてあった津多屋ののり弁当。タテルくん好きそうだから持ってきた」
「ありがとう」
「あとこのお菓子めっちゃいいやつだからいくらでも食べて」
「随分持ち帰ってきたね。さすが差し入れドロボー」
「変なこと言わないで!」

  

「今回は京子さんたっての希望で東久留米と清瀬を巡ります。2軒分の自腹を懸けた今回のゲームは『食わず嫌い的カード当て』です!」
「心理戦か…」
「お2人には3枚ずつ、相手に見えない状態でカードを持っていただきます。3枚のうち1枚があたり。両者1枚ずつ選んでいただき同時にカードを公開。あたりを当てられてしまった人が負けです。両者ともあたりを回避したら残り2枚から選び直し、両者同時にあたりを引かれた場合は両成敗で各々自腹です」
「最後まで2人ともジョーカーが残ったら?」
「その場合は運営が出します」
「よっしゃ、それ狙おう!」

  

カードにはそれぞれ思い出の麺料理の写真が載っていた。
「チゲ味噌ラーメン、何やってるんですかナポリタン、最後の蕎麦は?」
「バンジージャンプの時食べた蕎麦。食べたといっても不安で全然入らなかったけど」
「あったな。クールな京子が号泣しながら飛んでいたあの姿、忘れられないよ」
「ってかゲーム始まってんの?」
「まあいつ始まっててもいいんですけど」
「じゃあタテルくん、そのパスタは何?」
「山下公園近くのイタリアンの〆ポモドーロ」
「ふーん、これが何の思い出?」
「初めて京子と握手した日に食べた」
「えそうなの⁈」
「俺との初めての対面、覚えてないよね?」
「覚えてないね」
「まあそうだよな。その時は直近に発売されたFLASHのグラビアを褒めたな」
「あれね。たくさん写真載せていただいてありがたかった」

  

「さあお2人とも、カードを1枚ずつ選んでください!」
京子はポモドーロを、タテルは蕎麦を選択した。結果、タテルだけがあたりを引き、京子の負けとなった。
「出た!京子の負け顔!」
「負けてませんから。たまたまそうなっただけです」
「何で女優スイッチ入れるんだ。負けを認めろ」
「…ああ最悪!」

  

月曜日、東久留米駅に集合した2人。
「ごめんねこんな遠くまで、しかも平日に」
「何の問題も無い。ラーメンと京子がいる限り俺は飛んでいくさ」
目的の店は、六本木で人気の「入鹿TOKYO」の源流。六本木店の営業に集中するためか、こちらの店内営業は月曜日のみとなっている。15人ほどの行列に接続した。
「京子って、歌もすごいけどダンスも上手いよね」
「いちおう習ってたからね。小中学生の頃の夢は『ダンスの先生になる』ことだったし」
「ダンスの先生か。演者じゃなくて?」
「演者を経ての先生かな。アイドル憧れだったし」
「ケントノツレ・ユウコ推しだったもんね」
「そうそう。だからいっぱいアイドルのオーディション受けてた。でも受からない日々が続いたよね」
「京子はクールだから、典型的なアイドル像とは相容れないかったのかな。でも今やトップアイドルだもんね」
「いやいやトップだなんて。でもアイドルを天職にできるなんて、あの頃は思ってなかったかも」
「じゃあいってみる?ガンバレルーヤチャンス!」

  

オソプロの新グループ「ストーレージ」の2次審査にいた中2の京子。現在のクールな姿からは想像できない、ツインテールにピンクの服とアクセサリーという格好で他候補生と談笑していた。しかし京子はここで落選してしまう。
「あぁ、今回もダメか…やっぱり芸能界なんて、夢のまま終わるのかな」
そこへ未来の京子が語りかける。
「あなたは…未来の私ですね」
「大丈夫だよ。あなたは立派なアイドルになります。しかも大人気のアイドルに」
「ホントに?女優もやって?」
「そう。大事なのは無理しないこと。この服装、正直どう思ってる?」

「可愛いくて素敵ですけど、もっと大人しい色が良いかな、って」
「自分らしさ貫こう。無理にピンクとかで飾らないで、ありのままの自分を表に出そう。夢は口にすれば叶う。根拠のない自信であっても持ち続ける、それが大事」
「ありがとうございます。自信持って頑張る!」

  

「素敵だな、中学生の京子。何か俺も励まされちゃったよ」
「どうして?」
「俺も芸能界で売れるって夢、叶えたい。だからすごく響いてさ…」
涙ぐむタテル。
「ちょっと、突然泣かないでよ」
「京子って本当すごいよな、負けず腐らず挑んでここまで来たんだもん。俺は何やってんだろう、俺も頑張らないと…」

  

ガンバレルーヤチャンスを挟みつつ40分くらいで着丼。六本木で醤油ラーメンを食べたのでこちらでは柚子塩ラーメンを戴く(筆者註:これは筆者が実際に行った2023年8月当時の情報で、現在はつけ麺のみの提供らしい)。柚子が味を支配しがちなところ、鶏・豚・海老・貝の複雑味を感じられる、その輪に柚子が丸く溶け込んでいる。しかし麺と合わせるとやはりスープが負けてしまう。
チャーシューは全体的に薄めの調味で、ネギと合わせて食べると良いバランスになる。

  

「でも京子の真髄って、やっぱ歌だよね」
「そうなるのかな」
「このあと清瀬のラーメン屋行きたいって言ってたけど、どういう意図あるの?」
「だって清瀬は…」

  

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