連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』69杯目(Ramen Break Beats/祐天寺)

グルメすぎる芸人・タテルと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共1997年生まれの同い年で、生まれも育ちも東京。ラーメンYouTuber『僕たちはキョコってる』として活躍している2人の、ラーメンと共に育まれる恋のようなお話。

  

大阪のラジオに出演するため品川で新幹線に乗り換える京子。東京駅近くの店で開かれる同窓会に参加するタテル。それぞれの現場での周辺人物へのインタビューから、2人が愛される所以を窺えた。

  

るるぶ大木
「京子ちゃんは真っ直ぐだよね。動じないというか、自分に正直というか。一途なんですよ」
MIU
「私実は綱の手引き坂メンバーのスズカちゃんと同級生で。スズカちゃんに初めて良くしてくれた先輩が京子さんなんですよ。実力者の京子さんに歌声を認めてもらえて嬉しかった、と言ってました」

  

「タテルくんちょっと変わってる部分あるんですけど、皆に優しくて」
「タテちゃんと真っ先に喋りたくて。個性的で面白い奴だよ。京子ちゃんも見る目あるよね」

  

「北陸でこの番組をご覧の皆さん、実は僕の同級生なんです!」
「NHK北陸局アナウンサーの椎名です」
「どうですか俺の印象は?」
「クラスは一緒になったことないのですが、人気者でしたね。日直日誌を丁寧に書いていたり、球技大会の最中も勉強していたり、真面目な一面もありました」
「タテルくんめっちゃ嬉しそうな顔してる」
「NHKのアナウンサーに褒められると余計照れちゃうな」

  

「タテルくん、同窓会どうだった?」
「みんな俺のこと覚えていてくれて嬉しかった。こんな独りよがりな俺でも愛してくれて本当に感謝してる」
「タテルくん、愛されキャラなんだ。皆に愛されるっていいよね。私も学生時代はモテたんだよ」
「そりゃモテるでしょ、こんな可愛くて格好良くてモテない訳がない」
2人の人気の理由は、自分を貫きつつも他人に優しい点にあるようだ。

  

この日2人が向かうのは、都内トップクラスの人気店。1日に提供される杯数に制限があり、現在では予約サイトで席を押さえる必要があった。
「タテルくんがその予約サイト使いこなしているからパパって取ってくれて」
「まあね。それでも難しいものあるけど」

  

予約時間の5分前に到着。遅刻厳禁、これも2人のモットーである。
「どうしてもハードル上がっちゃいますね。でもそのハードルを超えてくる1杯も存在し得ることは今までのラーメンウォークの経験からしてわかっているので。まあいつも通りいただきます」

  

「レベル高いのはわかるんですけど、ああこうしちゃうか、というのがあって」
「私も同じこと思いました。私達が間違っているのか…」

  

東京最高峰の1杯を、2人はどう纏めたのか。
「スープは流石ですよね。醤油の複雑味や天草大王の鶏油の香りを感じます」
「そうそう。すっごく美味しくてスープ単体で何口も飲んでしまった。そしたらスープが足らなくなっちゃった」
「そこなんだよね。スープが少なすぎる。隣の人もやきもきするくらい、客観的に見ても少ないと思う」
「こだわり抜いているから大量には入れたくないんだろうけどね」
「麺との一体感はしっかりありました。具材で面白いなと思ったのがフライドえのき。香ばしさがクセになりますね。メンマは御役御免です」
「オヤクゴメン?親子丼みたいなラーメンってこと?」
「違うって。より優れたものが出てきたからあなたはもう要らないよ、ってこと」
「メンマも素敵だけどね。でもフライドえのきは他のラーメン屋さんでも真似してほしい。今度ここで作ってみない?」
「面白いね。『ラーメンの新定番トッピングを編み出そう』とかやってみようよ。1億回再生も夢じゃないね」
「ウヘヘ」
「チャーシューはちょっと脂が多いですかね、赤身とのコントラストが映えるともっと素晴らしいんですけど」
「でもまさか魚載ってるとは思わなかった。カンパチかな?独特だよね、美味しかった」
「俺的には醤油ラーメンに魚は違うかな」
「タテルくんは生魚あんま好きじゃないからね。私は好きだよ」
「尊重するよ。そして2人が疑問に思ったのが紫玉ねぎ。辛すぎちゃってせっかくのこだわりを無力化してる気がするんですよ」
「タテルくんほど味に敏感じゃない私でもそう思った。たまにあるよね紫玉ねぎ載せる店。あれどういう意図なのかな?」
「良かったら今度生配信で議論してみましょうよ。『紫玉ねぎを入れる理由と是非』とか『昆布水つけ麺を最後まで美味しく食べる方法』とか」
「良いね」

  

「ボロネーゼ風ご飯、これは何も考えなくても美味しいですよね」
「ね」
「でもこれももう一つアクセントあると面白いんだよな。肉質が強いからバルサミコとか合いそう」
「タテルくんらしいアイデアね」

  

早速編集に取り掛かる2人。
「京子、ここの物言いちょっとキツいかな?」
「大丈夫だと思う。不安だったらテロップ入れてみれば?」
「そうだね」

  

ここでずっと気になっていたことを訊いてみた。
「お2人って、恋人同士なんですか?」
「今のところは違うと思います」
「私もそうですね、はい」
「あくまでも俺は綱の手引き坂46全体のアンバサダーなので、特定のメンバーと恋仲になるのはさすがに違うじゃないですか。越えてはいけない一線を越えてはいない」
「さすがに身分は弁えていますから。卒業してからはわからないですけどね」
「なーこなーこさんみたいにリアルカップルになるか、ビャンよんみたいに解散するか、それはネコ型ロボットに尋ねていただければ」
「何言ってるのタテルくん」

  

編集の合間の夕食。
「ああ美味しい。何だかんだでチゲ味噌ラーメンだよね」
「色々冒険はするけど、帰る場所はやっぱここだよね」
「もうすぐチゲ味噌の季節も終わりか。その頃には私もグループを去る」
「俺は次の冬も京子と迎えたい」

  

「お2人にとって、プロフェッショナルとは?」
「考えたこともないです。何ですか『プロフェッショナル』って?その言葉嫌いなんですよね」
「タテルくん、ここボケるところじゃない」
「ハハハ。冗談です、俺にとってプロフェッショナルとは『寛容であること』ですかね。物を作る人って、常識に囚われない印象があるんですよ。凡人が毛嫌いするような物でも、プロなら一度はちゃんと向き合って、取り入れられそうなら取り入れる。食わず嫌いしない、それができてこそプロだと思うんです」

  

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