連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』68杯目(多賀野/荏原中延)

グルメすぎる芸人・タテルと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共1997年生まれの同い年で、生まれも育ちも東京。ラーメンYouTuber『僕たちはキョコってる』として活躍している2人の、ラーメンと共に育まれる恋のようなお話。

  

続いて京子の日常を追う。綱の手引き坂46のエースメンバーとして、グループ活動は勿論のこと、冠番組やラジオ番組のレギュラーも抱えている。個性的な声を活かした歌唱力に定評のある一方、バラエティ番組では天然な一面を見せることも多い。昨今はドラマにも出演し、女優としての地位を築き始めている。

  

「ありがたいことにたくさんお仕事いただいて、とても忙しい日々を過ごしています。今ブログ書いてるんですけど、文章書くの苦手で…ちょっと確認してもらえますか?」
スタッフに文章の推敲を依頼する京子。
「グッズをこだわりを紹介…ジョシが違いますね」
「ジョシ?私女性ですけど」
「そっちの『女子』じゃないです、てにをはの『助詞』です」
「ああそうかそうか、すみません!お恥ずかしい…またタテルくんにいじられちゃう」
「タテルさんいじるんですね」
「あの人東大卒で言葉にはうるさいんです。私が変なこと言うとすぐツッコむんです」
「確かにタテルさん、言葉選び丁寧ですよね」
「でも『そういう京子が大好きなんだ』とは言ってくれるんです」
「仲良いですね」
「そうなのかな?エヘヘ」

  

そんな京子は間も無く、8年間在籍していたグループを離れる。職人肌で一匹狼の印象が強い京子ではあるが、メンバーのことを深く愛していた。
「卒業発表をしたら、右を見ても左を見てもメンバーがいて。それだけでああ私は愛されていたんだなぁって実感して幸せで」
少しでも空き時間があれば、後輩メンバーとの人狼に明け暮れる日々。卒業したらもう可愛い後輩と遊ぶ機会も減るのだろう。飛び立つまでの短い時間を、愛しくて誇れるメンバーと密度高く過ごしている。

  

荏原中延のラーメン店の待ち時間。タテルもまた、京子の変化について口にしていた。
「俺が綱の手引き坂アンバサダーとして活動する前、ただの一ファンだった時代から見てきた身としては、京子がこんなにも後輩と仲良くしているのが感慨深いですね。今NHKさんで不動産屋を演じている某俳優さんが某民放の某ドラマで演じていた某医者のキャラが重なります」
「そんな回りくどく言わなくて大丈夫ですよ」
「兎に角イケメンなんですよね京子は。男でも女でも惚れてしまう魅力に溢れています」

  

予め整理券を取っておいたことにより、待ち時間少なめで入店できた2人。すると今回はスタッフから1名、2人と共にラーメンを食べて良いとのことであった。スタッフに2人の様子を伺ったところ、2人はラーメンが着丼する前から会話を断ち、真剣に無言で目の前の一杯に向き合っていたと云う。

  

店を出たタテルの表情は少し曇っているようであった。
「こういう時なんですよ。マイナスポイントが出てしまった時、それをどう波風立てず伝えるか」

  

電車内、眠る京子の隣で真剣に感想を纏めるタテル。
店主ご夫妻がお弟子さんに一叱りして緊張感が走った
荒野の真ん中で出会ったら泣けてきそうなくらいほっこりしたスープ、七味を振ることにより旨味が引き立つ
海藻の練り込んである麺はかなり力強く、それに対してスープの量が控えめすぎた
チャーシューも脂身・赤身共に確とした肉質で素晴らしいので、やはりスープを多めにしてほしい

「どうだ京子、尖りは無いか」
「そうだね。これくらいならまあ、って感じかな」
「お墨付き得られました」

  

そもそも何故2人はラーメンを題材にしたのか。そのきっかけは京子の方にあった。
「小さい頃は好きじゃなかったんですけど、中学生の時ラーメンの魅力に取り憑かれまして。学生時代は池袋でよく遊んでいて、池袋にあるラーメン店は一通り巡りました」

  

一方のタテルはそこまでラーメンに造詣が深い訳では無かった。
「完全に京子に引っ張られましたね。最初に誘ってきたのは京子で。全然ラーメンの良さ分からなかったんですけど、何度も一緒に食べている内に好きになって」
「タテルくんがどんどんハマってくれるの嬉しくて。その勢いで動画始めて今に至ります」

  

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