超大型連続百名店小説『世界を変える方法』第3章:政治を国民の手に取り戻そう 3話(BAR OPA/銀座一丁目)

かつてカリスマ的人気を集め社会を変革しかけたアイドルグループ・檜坂46。フランス帰りの革命を目論む男・カケル(21)に招かれ今再びこの国を変えようと動き出す。カケル率いる「アパーランドの皇帝」の一員(シナジー)として秘密裏で国を動かす。
*この作品は完全なるフィクションです。著者の思想とは全く関係ありません。こんなことしようものなら国は潰れます。

  

引き続きnjkと行動を共にするカケル。東京高速を越え銀座並木通りを入ると、メンバーのcbf、skmrと合流した。
「カケルさん、お疲れ様です」
「おう。綺麗に1期2期3期揃ったね」
「バーなんて初めてです。しかも銀座だなんて」地方出身のskmr、njkは少し緊張していた。
「安心しろ。そんな入りにくい店ではない。それにバーテンダーさんは要望を伝えれば何でも作ってくれるから」
「そうなんですね」
「俺もカクテルのことそんな分からないから。分からないなりに楽しめばいいんだよ」
「はい!」

  

一丁目通りと交わる角に地下のオーセンティックバーへと続く階段がある。オーセンティックとはいうものの地上にメニュー紹介の立て看板があり親しみやすい印象を与える。その期待通り、店内にも表立った緊張感というものは無い。運良く奥の4人席が空いていたためそこに通される。

  

「メニューがある。これは有り難い」
「メニュー無いところもあるんですか?」
「寧ろ無いことの方が多いよ」
「そういう時はどう頼むんですか?」
「後で見本見せるよ。お、フランス語の名前のカクテルあるね。頼んでみよう」

  

カケルの1杯目は「はじめまして」という意味の名前がついたカクテル「アンシャンテ」。ライチの爽やかな甘さで、ショートカクテルではあるがするすると入る。挨拶がわりのカクテルとしてぴったりの軽やかさである。

  

「njkちゃん、何でも聞いて」先輩メンバーが優しく問いかける。
「はい。カケルさんって何者なんでしょうか?」
「フフッ。気になるよねやっぱ」
「気になりますよ。随分とアグレッシブなお方なので」
「私達が春にフランス行った時出会って一緒に戻ってきた。それで『榎坂時代のパフォーマンスをまたやってほしい』って言われてさ、熱意に負けたんだよね」
「だから最近の曲は榎坂時代っぽいんですね」
「そうそう。そっちの方が印象に残るでしょ」
「残ります。めっちゃカッコいい」
「次のシングル表題はゴリゴリのロックテイストを予定してる。すんごくカッコいい曲になると思うから選抜入り目指して足掻け」
「はい!」

  

「じゃあ俺は次のカクテルを…」
「ペース速いですね」
「まあな。そしたらやってみるか。ベースにしたいお酒を指定して後はバーテンダーさんにお任せ。これだけ」
「か、カッコいい…」
「『OPA』はポルトガル語だというから、ここはポートワインを使ったカクテル頼んでみよう」

  

ポートワインベースとは少々無茶振りな気がしたが、徐にポートワインとブランデー、そしてあまおうを取り出すバーテンダー。
恐らくオリジナルカクテルであろう1杯が登場した。あまおうの果実味がポートワインのコク深い甘さに上手く溶け込んでいて、ブランデーにより重さが出ている。絶品のカクテルである。
「カケルさん、スマートですね」
「そう?でもこれがカクテルの醍醐味よね」
「新しい味との出逢いが楽しいんですね」
「その通りだ」

  

「それにしても宝町劇場の火災、怖いですよね」
犯人が目の前にいることを知らないで発言するskmr。
「宝町劇団の『バスティーユのすみれ』、観たかったのになぁ」
「でもパワハラ事件もあったし、暫くは公演中止じゃないかな」シラを切るカケル。
「綱の手引き坂に宝町劇団大好きなメンバーいるけど、落ち込んでいないか心配だね」
「綱の手引き坂の話はするな。俺らには関係ないだろ」
「…」
「njkちゃん、思ってた檜坂とちょっと違くて戸惑ってる?」
「そうですね…」
「別に身構えることはないから。気をつけることは何個かあるけど」
「そうそう。プライベートではあくまでも普通の女の子でいて欲しい」
「大丈夫だよ。私達だって最初は戸惑ったから」
「そうそう。カケルさんは私達に真摯に向き合ってくれる紳士よ」
「ちょっとぎこちないぞ、その駄洒落」
「アハハハ」

  

空気が和んだところでウイスキーを注文するカケル。スモーキーなものをリクエストし、ラガヴーリン8年を選択した。薄い色だが薫香が強くて驚く。しかし時間が経つと味に慣れる上氷が溶け出すため早めに飲み切りたい。
「カケルさん、ウイスキーも飲めるんですね」
「ウイスキーもバーの醍醐味さ。甘めとかスパイシーとか樽の香りとか、自分の好みの味を伝えると良い」
「へぇ〜」

  

3杯飲んだカケルの会計は5000円強であった。
「お、意外と安くついた。8000円近くなると思ったんだけど」
「相場わからないです…」
「明細とか出ないからわからないんだけど、肌感覚では2杯で5000円、3杯で7800円くらい。だからここはリーズナブルかな。メニューにあるもの頼めば明朗会計だろうし」
「勉強になります」
「坂道グループで酒語れる人はいないからな、狙い目だと思うよ。今度プライベートでもどこかバー訪ねてみなさい」
「はい!」
「でもここはダメよ。一度行った店は…」
「cbfさん、何故カケルさんは同じ店に二度行かせてくれないのですか?」
「それは…」
「待て。詳しい話は人のいないところで!」
「えぇ…」

  

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