連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』46杯目(MAIKAGURA/千歳船橋)

グルメすぎる芸人・TATERUと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共97年生まれの同い年で、生まれも育ちも東京。ひょんなことから出会ってしまった2人の、ラーメンと共に育まれる恋のような話。

  

「あっ、コメダ2002さん」
「あら、タテルくん。女の子連れて何してるの?」
「YouTubeのロケです」
「ああ、綱の手引き坂の京子ちゃんか!」
「ホントだ!かわいいねぇ〜」
「え待ってめっちゃ嬉しいんですけど。私コメダさん大好きなんで」
「こんなトップアイドルに推してもらえるとは」
「京子は誰に対してもそう言いますから、あまり真に受けない方が良いかと」
「タテルくん!私ウソなんかついてない」
「ところでコメダさんは何故こちらに?」
「クローバーの地元がこの辺だからさ」
「さっき実家で餅ついてました。PA DUMPの『U.A.E.』に合わせて」
「コメダさんらしいっすね」
「明日ライヴ一緒だよね。ちゃんと練習するんだよ〜!」
「あざす!」

  

MAIKAGURAに到着するとかなりの行列ができていた。平日でも断続的に15人以上は並んでいるというわけだからかなりの人気店である。メニューを吟味しながら並ぶこと30分。
「やったー、ようやく入れた…」
「立ちっぱなしだから疲れてきたね。あれ、タテルくん鶏白湯にしたんだ」
「中華そばよりも白湯の方が満足できそうな気がしてね」
「そっか…」

  

タテルが頼んだ鶏白湯は、ただ濃いだけでなく、ミルキーで上品さの感じられるスープ。麺は柔らかく、スープと一体になる。

  

しかしラーメンを堪能している間、厨房より一瞬緊張が走る。
「邪魔だよ!」
突っ立っていた女性店員に怒鳴る男性店員。はやる気持ちはわかるが、料理を味わう客の前で見せるものではない。

  

気を取り直して肉ごはん。肉の味つけが凝っている上脂の旨味もあってご飯が止まらない。食いしん坊の京子は5分で麺と飯を平らげた。
「タテルくん、遅いね」
「味わって食べてるから。逆に京子が早すぎる」
「そう?」
「まあ京子らしいっちゃ京子らしい。好きだな、京子のそういうところ」
「褒めてるのそれ?」

  

その日もまた、基地に戻ると編集だなんだで気づけば夜になっていた。雲1つも無いはずの空には靄がかかっていて、東京タワーやサンシャインでさえ霞んで見えていた。
「京子、ラーメン動画の編集ちょっと手伝って。間に合わないんだけど」
「え〜、ムリだよ。ピアノ動画の編集やってるから」
「急ぎじゃないでしょ、こっち優先してよ!」
「私だって明日から全国ツアーのリハあるし忙しい!今日中にケリつけないといけないの!」
「あぁもう…」
「痛っ!何でこんなところにゴミ置くの⁈」
「後で片づけるつもりだったの」
「だらしないな。ちゃんと掃除してよ」
「少しは協力してから言って!」
「私忙しいんだって!もういい、そんなこと言うなら帰る」
「ちょっと待ってよ、何でそんなこと…」
「もう別れよう。私ラーメンより牡蠣の方が好きだし」
「何だって⁈もういい、勝手にしろ」
「サヨウナラ!」
そう言って京子は出ていってしまった。

  

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