連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』44杯目(yoshiki/新小岩)

グルメすぎる芸人・TATERUと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共97年生まれの同い年で、生まれも育ちも東京。ひょんなことから出会ってしまった2人の、ラーメンと共に育まれる恋のような話。

  

続けて次のラーメン店へ向かう2人。一燈から独立した人の店であり、一燈とは目と鼻の先である。こちらも平日の昼間なので行列は短かった。間も無く店内に入り、特製の醤油蕎麦を注文する。

  

1997年東京生まれ東京育ちのA型、という共通点のある2人は好みも似ていた。
「ディズニーのキャラクターだと誰が好き?」
「プーさん!」
「え⁈私も!」
「ディズニーとかあまり興味ないけど、プーさんのハニーハントは楽しいんだ」
「私もあまりディズニーは行かない。歌は好きだけどね」
「じゃあ俺からも質問。観ていて楽しいスポーツは?」
「何だろうな…女子バレーなんかはよく観るけどね」
「俺もだ。フジテレビの中継、観ちゃう。男子より女子の方が面白いんだよね」

  

しかし真反対の一面もある。
「タテルくん、ここ寒くない?」
「寒いの?俺これでもかなり暑い」
「いやいや、おかしいって…」
「京子って犬派?猫派?」
「犬派」
「俺生粋の猫派なんだけど。じゃあIMC48だとカツヂワカレ・アツコ派?ケントノツレ・ユウコ派?」
「ユウコ派」
「悉く違うね。アツコの方が踠きながら頑張っている感じがあって応援したくなる」
「ユウコさんの方がいい。明るくてみんなをまとめている感がある」
「いや、アツコは譲れないな」
「絶対ユウコさん!」
またもや言い合いを始めてしまう京子とタテル。
「俺こんな暑いのに、何で寒いとか言うんだ!」
「太ってるタテルくんには寒がりの気持ちなんてわからないよね」
「寒いなら着込めばいい話じゃん。暑いのはどうにもならんって」
「とにかく痩せなさい」
「あんだって?それにさ、何で犬派なんだ?犬は変に懐いてくるしペロペロしてくるから嫌だ!」
「猫は気まぐれ過ぎる!すぐ引っ掻いてくるし」
「犬なんて大して可愛くないし」
「そんなことないって!何で私の好みに反抗してくるのよ」
「だって俺、京子は気の合う人だと思ってたもん。こんな真反対な一面が多いの、がっかりしちゃうし許せない…」
「タテルくん、違うでしょそれは」
「…」
「何でそういう考え方になるの!」
「わかんない!自分でもコントロールできないんだよ」

  

乱心のタテルの元にラーメンがやってきた。スープは綺麗めで、最初は開いていないように思えたがペーストを溶かすと味が出てきた。
以前とある店の鴨ラーメン(グルメ「評論」をするつもりは無いので具体的な店名は書かない)では臭いのきつさに苦しめられたが、こちらの鴨は臭みが一切なく、しっとり柔らかく仕上がっている。胡椒つきのものはおつまみとしても最高であろう。鴨ワンタンの香りも素晴らしい。

  

「俺、嫌なんだ。京子が遠くなってしまうのが…」
「タテルくん…」
「グループのエースで個人の冠番組も持って、歌も上手いくてキャラも面白い。だから様々なメディアに引っ張りだこで大忙し。それは嬉しいことでもあるけど、俺はただの会社員のままで、京子がどんどん遠い存在になる、それが嫌なんだ!」
「安心して!タテルくんのこと、見捨てるわけないでしょ」
「俺焦りすぎなのかな」
「そうだよ焦りすぎ。自分らしさ忘れないで。今日は仕事もピアノのレッスンもないし、ゆっくり2人でいよう」

  

基地に戻ると、動画撮影と編集をしているうちに夜になっていた。夜景を見ながら、シャンパーニュを手に談笑するタテルと京子。
「タテルくんって、中学生の時はどんな子だったの?」
「中学の頃が一番人に愛されていたかな。小学校時代には敬遠されていた奇天烈さが中学ではハマった」
「良かったじゃん」
「急に男子に抱きついたり、有吉さんの真似して変なあだ名つけたり、授業中急に『みんなでWe Are the World歌いたい!』とか宣言したりしてもみんな愛してくれた」
「最後のやつ意味不明なんだけど」
「一緒に帰る人もいて楽しかった。でも1人で帰ったり、一緒にいても話に入っていけないこともあったりして、すごく寂しかったこともある」
「ふーん。タテルくん、さては寂しがり屋だね」
「そう…なのかな?」
「絶対そうだよ。じゃなきゃ今日みたいな喧嘩しないって」
「そうか…」
「ごめんね、私タテルくんのことまだわかってなかった。寂しい思いさせないようにするから」
「ありがとう…」
深夜の東京の明るい静寂が、タテルと京子の2人きりの時間を演出する。

  

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