人気女性アイドルグループ・TO-NAからニュウが卒業を発表した。多幸感を売りにするTO-NAの中でも特にピュアな性格でファンを癒してきたニュウ。TO-NA特別アンバサダーのタテルは、ニュウの生まれた宇都宮の街を旅しながら、多幸感の源を探す。
東武宇都宮駅へ戻ってきたタテルとニュウ。東武百貨店を見て、やけに感慨深そうにしていた。
「TO-NAへの改名当初、ここでミニライヴやりましたよね。全然お客さん来ませんでしたけど」
「あったね。その時俺いなかったな。ろくに食事もせずメンバーの実家へ謝罪行脚して倒れてたな」
「あの時は本当に心配したんですからね」
「ごめんよ意地張りすぎて」
「でも今は多くの方が観に来てくださる。この前の宇都宮ライヴは大盛況でしたし」
「借りを返せたね。TO-NAの魅力を日本中に届けられるよう、これからも頑張るよ」
オトワレストランのスタッフにせっかくお勧めもしてもらったので、予定にあった香蘭に加え悟空も行くことにした。口コミを予習したところ、悟空は常時大混雑とのことなので、先に行って整理券を貰う。案の定100組を超える待ちであった。
「100組ですか…ちょっと厳しいかもですね」
「まあ待つだけ待ってみよう。回転速いかもしれないし、これだけの待ちなら諦めつけて戻ってこない人も多いさ。どうせ未だ5時前だし、先に香蘭行ってみよう」
二荒山神社を越え東武宇都宮側へ戻る。香蘭に着くと、打って変わって店内に1組のみの待ちであった。JRの駅からだいぶ離れており、その駅前にも支店があるからだろうか、そこまで混雑はしない店のようである。ただし揚餃子は早く売り切れてしまうため、食べたければ混雑する昼間に行くほか無いであろう。
テーブルが空く前に隣り合わないカウンター席が2席空いたため、2人の後ろにいた1人客のカズキが先に通された。それでも間も無くテーブルが空いて2人は案内された。焼餃子と水餃子を各々一人前ずつ頼み、ライスは注文しなかった。
「餃子は主食だ。ご飯なんか無くても完成している」
「そうですよね。太っちゃうといけないし、ライスは無くて十分ですよね」
餃子につけるタレを調合する2人。タテルはちょっと疲れていたせいか、ラー油を入れすぎて辛いタレにしてしまった。
「大丈夫ですかタテルさん?随分真っ赤っかにしちゃいましたね」
「だいじょぶだいじょぶ。俺はそんなタレつけないから。ちょこっとつけるくらいでいいの」
「確かにタテルさん、蕎麦もつゆつけないで食べますもんね」
「やってたね、足利の店で。ニュウはめっちゃ浸してた」
「あれくらいつけないと味しなくて…」
「まあそういう蕎麦出す店の方が多いから文句は言えないが、できれば最初の一口は何もつけずに食べてみるといいよ。それで味がわかるようになれば、人間は一皮剥けたことになる」
「そうなんですね。今度試してみます」
そして餃子がやってきた。全体的な話をすると、皮は最初こそ噛み応えがあるもののすぐ噛み切れる。皮をあまり感じたくない人にはうってつけと言える。餡は野菜・肉の旨味をしっかり引き出せていて、生姜が効いている点が印象的であった。
その上で、焼餃子はカリッと焼き上がっていて、肉汁が瞬間に溢れ出る。
水餃子はすっと噛み切れるから、餡の味を素早く感じ取れる。かなり薄味だがスープには中華ダシが効いており、餡に染みて旨みの相乗効果を生む。
「途中から醤油と酢をスープに垂らし、最後はラー油を極少量入れて楽しむ、か」
「ラー油ほんのちょっと入れて…ゴホッゴホッ」
「大丈夫か?辛いんだ結構」
「喉の準備ができてなかったです。気をつけて食べてください…」
そそくさと食べ退店する。会計は1人700円だが、現金しか使えないので注意しよう。