年の瀬迫るある日、人気アイドルグループ「綱の手引き坂46」3期生のナノ、カコニ、マリモが事務所よりYouTube生配信を行う。綱の手引き坂特別アンバサダーを務めるタテルのタイトルコール。
「本日の企画は、『レタンプリュスのオススメケーキベスト5当てるまで帰れません!』」
「モグモグ配信」
「食べる系か…」
「胃袋には自信あります!」三者三様のリアクションをするメンバー達。
「ここのケーキはめっちゃ美味い」
「タテルさんが言うくらいだから相当美味しいのでしょう」
「2,3ヶ月に1回は訪れているからね、大体のケーキは食べ尽くしています。今回はその中でも特に私がオススメする5品を当てましょう、という企画でございます」
「楽しみですね〜」
「選んだケーキは責任もって食べていただきます。1品につき2個を3人で完食したら順位を聞けます」
「じゃあマリモちゃんが1個食べて残り1個を2人で半分こ」
「いやいや、最初は等分でいきましょうよ」
「ということで、早速ケーキの登場だ!」
「わあ、どれも美味しそう」
「オーソドックスなものから独創的なものまで、多彩な取り揃え!」
「じゃあ変化球はナノちゃんに選んでもらおう」
「私が?当てられるかな…」
「ではカコニちゃん、1品目を選んでください!」
「じゃあ高級感に溢れているチョコレートケーキ『カンテサンス』で!」
「1品目からチョコとは思い切った選択」
ドモリ社のチョコを使用したムース、中にはブラックベリーの味も入っている。
「あ、美味しい!思ったより重くないですね!」
「これは間違いなく5位以内に入ってます」
あっという間に完食し結果発表。
「カンテサンス、何位ですか?」
「第…」
5位
「危ない!でも良かった…」
「そうですね、シンプルにチョコの良さを表現できていると思います。チョコが重過ぎず、ブラックベリーの厳かな酸味もアクセントになっているので食べ疲れない。5位である理由はヒントになってしまうからあまり言えないけど、まあ上を開けてみたらわかる」
「早速美味しかった。たぶんここにある分全部食べられますよ」調子に乗るマリモ。
「そんなことしたら太っちゃうよ。ノーミスで終わろう」カコニはとかく真面目である。
2品目は異端児マリモが選択。普段かき氷を一緒に食べに行く仲だからタテルの気持ちはわかるはずである。
「タテルさんって造形美好きなんですよ。そういうこと考えると、サントノーレなんてどうでしょう」
パイ生地をベースにクリームとプチシューを載せた伝統菓子。クリームにはマスカルポーネとバニラを使用。リンゴのコンポートも入っている。
「タテルさん、この店を見つけたきっかけは何ですか?」
「アド街の流山回で紹介されていた。オーボンヴュータン出身パティシエのケーキ屋って聞くと気にならない?」
「なりません。オーボンヴュータンって何ですか?」
「尾山台にあるお菓子の館よ。ここもまた良い店なんだ」
ついていけない様子の3人はさっさと完食し順位発表を乞う。
10位
「あぁ…」
「パーフェクトならず!」
「ごめんねみんな…」
「サントノーレというお菓子自体がどうしても生地の割合高めで重くなりがちなんだよね。しかも飴がけしてあって余計重くなってるから、クリームやリンゴをもっと増やした方が食べやすいかもしれない」
普段ケーキを食べないナノとカコニはもう満腹が近づいていた。一方で大食いマリモは余裕綽々である。
続いては変化球ナノの挑戦。
「変化球投手としては、ここで見たことない魔物攻めたいですね」
選ばれたのはパラディ。パイ生地に果物を閉じ込めたシブーストクリームの載った定番ケーキ。他店では季節の果物を1つ決めて入れるのが定石だが、ここではバナナ、ベリー、パッションフルーツという通年素材をたっぷり使用。
「流山って結構遠くないですか?」
「遠いよ。だからプッと買いに行ける感じではない」
「でも2ヶ月に1回訪れるんですよね」
「さすがにこれだけのために行くのは気が引けるので、もう1ヶ所立ち寄りスポットを用意しています。午前中ナノちゃんと行ってきたのでVTRご覧ください!」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「はい、こちらが『フライングガーデン』さんでございます!『相棒』大好きだというナノちゃん、早速入ってみてください」
「はい…あっ!水谷さんと及川さんのサイン!」
「何とここは、相棒2011年元日SP『聖戦』で登場したファミレスのロケ地です!…って俺観てないからよくわからんのだけど」
「私は勿論覚えていますよ」
「すげぇな、放送当時ナノちゃんまだ6歳じゃん」
「リアルタイムの記憶は無いのですが、再放送で観て印象に残っています」
「夕方のニュースの前にやってるやつか」
「そうです。学校から急いで帰って観てました」
「相棒のために急ぐ小学生、渋いなぁ。さすが『変化球のナノ』」
北関東では定番の『爆弾ハンバーグ』、にんにく醤油ソースで食べるとめちゃ美味です。ドリンクバーでは黒烏龍茶と凍頂烏龍茶を必ずいただき胃を整えます
「どうですかナノちゃん、相棒の聖地でハンバーグ」
「最高ですね!」
「相棒は水谷豊さんが主演で、相棒役がコロコロ変わるんだっけ?」
「コロコロというほどではないですが変わっていますね」
「初代がえーっと」
「寺脇康文さんです」
「そうかそうか、えで次が谷原章介さん」
「違いますよ。2代目相棒がさっきサインにあった及川さんです」
「いけねいけね。ブランチと間違えた」
「全然違うじゃないですか」
「3代目が渡部…」
「それもブランチじゃないですか!成宮寛貴さんです」
「ごめんごめん。昨日モグモグライターのネタ見てこんがらがっちゃった」
「モグモグライターさん面白いですよね。『おうし座の男』のネタは本当に秀逸です」
「ゲラゲラ笑っちゃうよね」
「ウフフ。さっきから繰り返し言葉多いですね」
「ホントだ。たまたまだよ」
「あ、また言った!」
「止まんねぇな…」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「ということで、爆弾ハンバーグを食べてからここに来るのが僕の定番ルートでございます」
「皆さんもお試しあれ!それでは完食しましたこちらのパラディ、何位ですか!」
1位
「やったー!さすが変化球使いのナノ!」
「シブーストとパイの組合せは基本ハズレ無し。この店の場合さらにパッションフルーツの酸味がアクセントになっている。フルーツもたっぷりだし、ナッツやパッションフルーツの種で食感も彩っていますね。ナノちゃん、ナイス選球眼!」
勢いに乗りたい一同であったが、カコニはベリー系から「カルテット」を選択し結果は6位。
「紅茶のムースにバラの香りがものすごくマッチしている。チョココーティングも質が高い。ただ上位のものと比べるとちょっと単調かなって」
マリモが選んだシュークリームは残念ながら7位。
「ナッツたっぷりの生地が美味しい。だけどちょっと強すぎてカスタードクリームを潰してしまっている。ここの調和が取れれば間違いなく最強ですね」
さらにナノも得意の変化球で「フィグ」を選択するが8位。
「いちじくやドレンチェリーの食感が面白く、外側のマジパンもピスタチオの香りが良いのなんの。美味しいのは間違いないけど密度が高く、1つは食べ切れないと思いました」
連敗続きでケーキが3人の胃にずしりとのしかかる。大食いマリモも少し苦しそうであった。
「みんな美味しいんですけどね」
「そうなのよ。今回は順位をつける手前粗探しがキツめ。だけど全体的な出来は国内最高峰クラス。値段はコージーコーナーと同等なのに味は超一流ですからね、間違いなく最強よ」
そこへ助っ人が入ってきた。
「…京子さん⁈」
「あ、配信ご覧の皆さんこんばんは。3期生の京子です」
「いぃや1期生だろ、というけど言われてみれば意外と溶け込んでいる」
「そうそう、京子さんは永遠の20歳ですから」
「じゃあ俺も永遠の20歳だ」
「それは違う」
「何だよそれ…」
京子に企画内容を伝え、早速ケーキを選んでもらう。
「タテルくんね、モンブラン大好きなの。だから洋栗と和栗1つずついってみる」
「京子さん、いきなり2枚抜きやるんですね…」
「あ美味しい」
「ですよね。今まで味わったことないレベルですよ」
「タテルくんさすが。マジ神」
しかし結果は洋栗18位、和栗9位。
「ごめんみんな…」
「洋栗はちょっと栗らしさが弱い気がします。和栗はちゃんと栗の味するけど土台はタルトじゃなくてメレンゲにした方が重くない。もちろん両者共よくやってはいるのですが、敢えて選ぶものではないかなと思います」
「タテルくんうるさい。じゃあ何が正解なのよ」美しい負け顔を見せる京子。
「それを当てるゲームでしょうが」
「…だよね。わかった、私責任持って次のスイーツ1人で食べます」
「いいんですか京子さん⁈」
「いいのいいの。私お腹空いてるし」
選択権はカコニにある。気を遣って軽めのスイーツを選択した。ムースにクランブルを敷き詰め、ピスタチオクリームとグレープフルーツを載せた商品。
「これ本当は夏の商品なんですけど、今回の配信のためだけに特別に用意してもらいました」
「わざわざ用意させたということは、もしかしてランクインの可能性高い?」
4位
「やったー!連敗脱出!」
「カコニちゃんの気遣いが良い方向に働いた!」
「ピスタチオという渋い素材とグレープフルーツという若々しい素材、合わないと思うでしょ?めっちゃ合うんだよこれが。勿論両者の味を色濃く感じられて、その上で組み合わさっても尚強い。この店の強みの一つは『異色のコラボが織りなす化学反応』です」
タテルの口から出たヒントを頼りに、マリモは続けて「ゼフィール」を選択。ショコラムースにライムが掛け合わされている。
2位
「2連勝、そしてリーチ!」舞い上がる3期生と京子。
「これまたちゃんとライムが効いてるのよ。ライム味のボンボンショコラをそのまま大きくして満足度を高めた感じ。バニラのブリュレもしっかり受け止めている」
「ナノちゃん、3位を当てたら即終了です」
「終わりたい気持ちと終わりたくない気持ちが同居していて複雑です」
「だよね。ずっとみんなでわちゃわちゃしてたいもん」
「残念ながら悠長なことは言っていられません。ケツがあります。食べられるのはあと1品だけです!」
「えーっ⁈」
「本年のラッキーガール、ナノちゃんに全てを託します。今年の総決算、何を選ぶ⁈」
「『バナニエ』でお願いします!」
バナナの実が柱のように立ち、クリームとコーヒー味のメレンゲを纏う。
「そういえば私達が入ってきた時、タテルさんナノちゃんと変なダンス踊ってましたよね?」
「ああアレ?『ビリヤニ音頭』」
「何ですかそれ?」
「俺とナノはビリヤニを究めることにしました」
「タテルくん、そもそもビリヤニって何?」
「簡単に言えばインド版炊き込みご飯」
「じゃあカレーみたいな味なんだ」
「そうだね。スパイスたくさん入れて」
「それをナノちゃんと究める」
「そうそう。未知の変化球グルメを一緒に究めるなら、相手はナノちゃんしか考えられない」
「精一杯頑張ります♪」
ビリヤニ音頭を踊る2人に唖然とする京子。
「では、最後の順位発表です。運命のコール、お願いします!」
「バナニエ、何位ですか!」
3位
「イェーイ!」抱き合うメンバー達。
「おめでとうございます、レタンプリュスおすすめスイーツベスト5、完全制覇!」
「さすがラッキーガールナノ。あんたは偉いよ」
「ありがとうございます…」涙声のナノ。
「コーヒーメレンゲ単体だとちょいしつこく感じるけど、バナナクリームおよび爽やかなバナナの実と合わさりバランスがとれる。土台のクッキーの質も高く、クリームをしっかり受け止めているんですね」
ゲームクリアのご褒美として、メンバー達にクッキーが配られた。チョコチップと香り豊かなヘーゼルナッツが入っていて、これまた美味しいお菓子である。
「はい、ということで今日はたくさんケーキを食べました。食べ過ぎたかもしれません」
「食べた分しっかり運動したいと思います」
「レタンプリュスさん、ご協力ありがとうございました。美食家タテルさんも唸るスイーツの数々、是非試してみてください!」
—連続百名店小説『ビリヤニ道』2月公開予定—