連続百名店小説『続・独立戦争 上』HEAT 02「絶対許せない相方」(うなぎ時任/麻布十番)

独立騒動に苦しむも、国民的男性アイドルグループMに手を差し伸べられたことにより人気を取り戻した女性アイドルグループ・TO-NA。しかしメンバーの卒業が相次ぎ、特別アンバサダー(≒チーフマネジャー)としてグループを支える渡辺タテルは新メンバーを募集することにした。
一方、独立騒動の結果業界から追放されたTO-NAの前プロデューサー・Fは、とある芸能事務所社長の野元友揶(のもと・ゆうや)に声をかけ、「世界一を目指す女性ダンス&ヴォーカルグループ」のプロデュース、そしてTO-NA潰しを依頼する。

*物語の展開(料理に関する記述除く)は実在の店舗と全く関係ございません。

  

「よく来てくれたよエイジ君」
「こんな私を招いて下さり、有難う御座います!」
「謙ることないよ。君には才能がある。そんな君が風間君の騒動で唯一のレギュラー番組を失った。これは業界にとって大きな損失だよ。加えてその番組における相方・渡辺タテルから絶交を突きつけられた。信頼していたはずの相方に裏切られ、さぞかしお辛いことだろう」
「はい。本当に腹立ちましたアレは」

  

売れない俳優だったエイジは、やはりしがない男であったタテルと夜の視聴者参加型番組で出会い意気投合。その後タテルがTO-NAのスタッフとなり、TO-NAがMの冠番組に出るようになると、タテルの計らいでエイジも準レギュラーの座を獲得した。風間・タテル・エイジと一部TO-NAメンバーによるヤンキーコントは人気コーナーとなり、2人の絆は確固たるものになっていたはずであった。

  

しかし冠番組休止を受け、動揺を隠せないでいたエイジ。タテルに送った1通のLINEが分断を生む。
「なあタテル君、風間さん悪いことしてないよな?」
「悪いことしてないとは言い切れないです」
「お前は風間さんの味方じゃないの?」
「味方じゃない、とは言ってません。でもハラスメントが事実なら、いくら風間さんでも容認できないです」
「ハラスメントが事実?何言ってんの?被害者とされる人、甘えだよね。あんなのハラスメントじゃない」
「本気で言ってます⁈事実だったら刑事罰食らってもいいレベルですよ。考え方が昭和すぎやしませんか?」
「タテル君には失望したよ。俺のことなんて何も考えていない。自分とTO-NAのことさえ良ければそれでいいんでしょ?」
「論点すり替えないでください」
「そういう考えなら芸能界に携わるな。あの程度でハラスメントだなんて、ナメてるとしか思えない」

  

埒が明かないと判断したタテルは翌日、TO-NAプロデューサーの大久保とも相談し対応を考える。
「エイジさんには悪いけど、これは今のご時世アウトだね」
「俺もそう思う。手を切りたいとさえ思ってる」
「タテルくんがそう思うのならそうすべきだ。TO-NAの方が大事なのは全くその通りだし、コンプラ無視のエイジくんと絡むと余計な問題に巻き込まれる」
「後押ししてくださりありがとうございます」
「でもやんわりだよ。角が立つような言い方はしないようにね」

  

「エイジさん、残念ながらこれ以上貴方と活動することはできません。僕にはTO-NAの皆を守る責務があります。貴方と一緒にいると、それが果たせない可能性が高いと判断しました。心苦しい決断ではありますがお許しください。今までお世話になりました。一緒に番組をやれたことは一生の思い出です。陰ながら、エイジさんのご活躍をお祈り申し上げます」
そう言ってタテルはエイジのLINEをブロックした。

  

「一方的に絶交されるなんて、それは酷い仕打ちだね。どこまで性根が腐っているんだかタテルは」
「解ってくれますか俺の傷心?」
「勿論だよ。明らかにタテルが間違っているからね。エイジ君の俳優としての才能、潰そうとするなんて」
「本当に酷い奴だ」
「僕には太いパイプがあるんだよ。名だたる監督や演出家とね。君には先ず大先生の演技レッスンを受けてもらうよ。これがなかなか厳しい先生なんだけどね、根性あるエイジ君なら乗り越えられると思うよ。豆腐メンタルのタテルちゃんTO-NAちゃんと違ってね。半年もすれば重要な役どころを与える。主演俳優への階段も易々と登っていくことだろうね」
「期待に応えられるよう頑張ります」
「ただ、練習生の間は給料と引き換えに色々協力してもらう。僕は本気でタテルを潰そうと思っている。これから週刊誌・ネットメディアと組んで悪評を広めようと思っている。君の所にも記者が来るだろうから、その時は惜しみ無く協力すること」

  

人として問題のある計画を提示され少し戸惑うエイジ。しかし野元が畳みかける。
「それさえ協力してくれれば君は名優になれる。タテルのこと恨んでいるんだろ?」
「恨みはあります」
「じゃあお互いWin-Winだ。悪い話じゃないと思うけどね」
自分を見放したタテルへの怒りを思い出し、エイジは野元の誘いを受諾した。

  

「新メンバー募集を開始します!」
全体集会で高らかに宣言するタテル。
「TO-NAになって初めての新メンバーだ!楽しみ!」
「ついに私達にも後輩ができる!」
「後輩み〜んなと、仲良くなるんだから!」
全員が大歓迎の意を示し、新メンバーを入れるという行為の正当性を再確認したタテル。
「この後オーディション告知動画を撮ります。公式SNSやテレビCMなどで1週間流して募集、書類選考やった後3回審査行って、最終的に8人前後加入させます」
「新メンバーの選考基準って決めてますか?」
「即戦力だ」
「即戦力……」
「確かに今までは伸び代重視で採用した節もある。だがTO-NAは実力派のグループになった。それに見合う人財を採って、グループに更なる勢いをつけたい」
「私達ももっと頑張らないとですね」
「勿論親近感も忘れてはならない。TO-NAは国民に寄り添いながら最強のパフォーマンス集団を目指す。面白くなるぞ、間違いなく」

  

TO-NA新メンバー募集が始まる。人気グループとあって世間の注目を集め、メディアからも取材の申し込みが殺到する。
「タテルさん、ダーリンサウンズさんからの取材申し込みがありました」
「ああ、アイドル御用達メディアだね。いつも大久保さんに任せているけど、今回は俺なんだ?」
「そうみたいですよ。取材の場として、鰻屋さんを予約してくれるらしいです。タテルさんはグルメな方だから、って」
「ダーリンさんなら大丈夫だろう。よし、引き受けよう。メンバーも同席させていいかな?」
「先方に確認してみます」
「俺のワンマンみたいに思われると良くないからな。オーディション実行委員のヒラホを連れて行こう」

  

しかしダーリンサウンズの取材というのは野元の仕掛けた罠である。実際は炎上煽動系メディア・CLASHの記者がダーリンサウンズを騙って取材する。
「オーディションの話は程々にして、エイジ君との絶縁について取材してよ」
「わかりました」
「タテルは意地っ張りだから頑なに口を閉ざすかもしれない。アイスブレイクを入念にして、心を許してもらってから話題を振るようにね。ダーリンサウンズは僕のところにもよく来るから、取材の進め方も心得ている。一回予行演習しておこうか。ついでにエイジ君にも会わせる。聞き出したいことを連携するからよろしく頼むよ」

  

ある水曜日の夜、タテルとヒラホ、ダーリンサウンズもといCLASH記者の3人は麻布の鰻店に入店した。ビールで乾杯する。
「ここ来たかったんですよね俺。鰻重や白焼、鰻巻きだけじゃない、鰻の色んな食べ方を提示してくれる店」
「よくご存じですね」
「こちらこそ、訪れるきっかけ作ってくださってありがとうございます。どうぞ奥の方へ。ヒラホは一番手前でね」

  

初手から革新的な鰻料理、一口サイズの鰻バーガーが登場する。しかし残念ながら鰻の味わいが野菜の水分により隠れてしまったようである。バーガーらしくジャンキーな味付けの方がしっくりくるかもしれない。

  

「皿のデザイン、フランクミュラーですね」
「辛うじて俺の知識にある」
「タテルさんブランド物疎いですよね」
「ブランド物を持つ意味がわからない。食べ物には拘るけど、時刻はスマホ見ればわかるし鞄は機能性第一だ」
「タテルさん、売れても庶民派なところあるんですね。それは興味深い」
「ブランド品ばっか纏っていたら成金みたいで嫌じゃないですか。誰も応援してくれない。あ、でも全面的に禁止ではないですよ。そのブランドの魅力を十分理解して説明できるのであれば、寧ろ発信してほしいです。見られ方を考えること、大事にするよう教えています。決して驕らず、でも自分の考えを確と持っている人に入ってきてほしいな、なんて思ってますね」

  

次は鰻の燻製を具材にしたサラダ。鰻を燻製にすると香りが強くはっきりとして味も良い。スライスアーモンドやオリーブ、ピンクペッパーのアクセントもあって楽しく食べられるサラダである。

  

「あと一番大事なのはTO-NAの空気感に合うかですね。TO-NAのメンバーは優しくて品があって皆仲良い。この雰囲気は大事にしたいので、人間性も重要な審査項目となります」
「それは確かに大事ですね」
「僕も和やかな雰囲気が好きなんですよ。ピリピリしたくないというか。エイジさんと別れたのはそれも一因です」

  

自然な流れでエイジの名前を出すタテル。記者は水を得た魚のようにエイジについて聞き込む。
「エイジさんはピリピリされる方なんですね」
「そうですね。あの人ストイックで。それは悪いことじゃないんですけど、僕にそれを押しつけてきたんです。僕はもう少しゆるっとマイペースにやりたいのに。まあお互い頑固なんですかね、各々方向性を譲れず溝ができてしまいました」
「タテルさん、ちょっと話が逸れてますよ」
「いっけね。今は前を向いて、TO-NAの未来を考えております」

  

続いては白焼。想像していた白焼よりも焼きが入ってカリッとしており、皮目と身のコントラストを噛み締める。

  

味変要素は山葵の他に酢橘、柚子胡椒、梅肉、ワイン塩、切りたての生ハム。しかし定番の山葵以外はそこまで白焼の味を向上させない。
「単体でも十分強いから、あまり余計なことしない方が良いと思うんですよね。ヒラホはどう思う?」
「同感です。素材が大事ですもんね。アイドルも同じで、目立とうと思って自分に合わないキャラを纏っても後が辛いです。オーディションを受ける皆さんには、付け焼き刃のキャラで挑むのではなく、ありのままの姿を見せてほしいです」
「素材を熟知した上で、僕らが『この子にはこのキャラが合う』と提案することもあります。自分には特徴が無いから、なんて尻込みせずに、とにかく『素材』を見せてください、と伝えたいですね」
「嘘は誰かがすぐ見抜きますからね」
「そうそう、捏造は良くない。僕も、ある番組の公開生放送に観客として行っただけなのに、経歴にその番組に出演したことを含むよう唆されたことがあって。拒否しましたけど」
「それって誰に唆されました?」目の色が変わる記者。
「うん、まあ……エイジさん」
「何の番組ですか?」
「それはいいじゃないですか。あくまでも例示しただけです」

  

ビールが空いたため次の酒を頼むタテル。
「浄酎?日本酒を蒸留酒みたいに密にしたもの、とな」
「私が奢りますから、3種類片っ端から飲んじゃってください」
「いやあどうしようかな」

  

浄酎の無色透明のものを注文する。しかし日本酒にしては円やかさや旨味が無く、焼酎にしては水っぽい、どっちつかずに感じてしまう。
「タテル、飲まなさそうだな。まずい……」

  

野元は記者へ、タテルに酒を鱈腹飲ませるよう指示していた。
「タテルは酒豪だから、酒を沢山与えればそれはそれは饒舌になるだろうね。良からぬことをポロリするかもだよ。酔い潰れるくらい飲ましてやりなさい。金は僕から出してあげるからね」

  

八寸は鰻巻き、鰻の山葵醤油漬け、レバーパテ、そして鰻の生ハムという4点セット。どれも確実に美味しいものであるが、特に山葵醤油漬けと生ハムは濃い味わいで酒を呼ぶ。
「お酒頼みましょうか?次はシンプルに日本酒にします?」

  

記者の提案を、タテルは断った。
「実は今ちょっと胃痙攣が出ちゃって。年に一回の大きな発作が、入店前からあったんです」
「大丈夫ですかタテルさん?食べれます?」
「入りはするよ。でも味わうことに集中できないかも。だから記者さんすみません、酒はこれで十分です」
「無理はなさらず」
「喋りで気を紛らわさせてください。ヒラホはどういうメンバーが来てほしい?」
「東北と四国出身のメンバーがいないから、そこから逸材が現れてほしいですね」
「僕もそれ思ってた。地方出身メンバーはローカル番組に出ることも多くて、地元民からの手厚い支持を集めることができる」
「私も地元鳥取の大使、そして地元局のラジオ番組をやってます」
「地方創生がこの国の急務だからね。地方出身メンバーが故郷の魅力を発信して、その土地に興味を持ってもらう。多くのファンが聖地巡礼してお金を落としてくれると嬉しいですね」
「鳥取は特に人口も少なくて過疎が進んでいるので、魅力知ってもらいたいですね」
「とは言いつつ関東圏のメンバーも欲しい。僕は江戸っ子なので」
「確かに江戸っ子っぽいですね」
「見えます?」
「職人っぽいというか、強気の発言というか」
「そんな強気ですかね?意地っ張りとはよく言われますけど」
「それは、エイジさんに?」
「えっ⁈…まあ当たってますけど。あっちはあっちで九州男児だから、人のこと言えるのか、って話ですよね」
「タテルさん、良くない方向行ってますよ。思うところがあっても悪口はダメです」
「しまった。どうも僕は喧嘩っ早くて、失礼いたしました」

  

そこへこの日だけの特別料理が登場した。和牛のしゃぶしゃぶ肉で鰻と雲丹を包んで食べる贅沢。和牛がとにかく美味しくて、雲丹も良い味の濃さ。そうなると鰻の味わいは隠れてしまうものである。
「港区らしい料理だな」
「それって褒め言葉ですか?」
「受け手による。ただ俺はちょっと嫌だな。さっきもブランド品の話したけど、高級食材をただ贅のアイコンとして使うのは違う。必要性を持って使ってほしい」
「なるほど。でも私1つ疑問がありまして、タテルさんはよくメンバーとサシで食事してますが、まさにタテルさんの嫌がる『港区』じゃないのでしょうか?」
「側から見ればパパ活や密会に見えるかもしれません。ですがこれは立派な社会勉強です。芸能界の一線で活躍する以上、一流の物を知る必要はあります。僕が教えてやれるのは食。といっても僕も完璧ではない。同じくらいの目線に立って初心な気持ちで一流に向き合う。下心など一切ない、あったら飲食店に失礼すぎる」

  

「下心しかないよな、メンバーとご飯食べに行くなんて」
取材の裏で、野元がエイジに呟く。
「メンバーとは行くくせに、俺とは行かないんです。家にも来ないし旅行の誘いも断るし、付き合いが悪すぎるんですよ」
「それは良くないね。人に合わせることをしない者がアイドルを率いる、あってはならないことだよ」
「本当にそう思います。安い居酒屋をバカにしやがって」
「エイジ君、1ついいかい?僕の下に所属するのであれば、食には拘ってもらうよ」
「そ、それは失礼いたしました」
「まあ本当に食を愛する僕からしたら、君の行く居酒屋もタテルの行く店も目糞鼻糞だけどね。だから今度、本物の鰻、食べさせてあげるよ。1軒だけあるんだよねちゃんとした店が。なあに緊張すること無い。気軽についてきてよ」

  

鰻のクリーム煮。具材多めで野菜の旨味もありフレンチの一品としては及第点といえる。だがベーコンが支配的で、鰻を入れる必要性を捉えられないタテル。
「タテルさん、今日少し元気ないですよね?」
「そうだね。やはり尾を引いてるよ俺、エイジさんと決別したこと」
「仲違いは決して嬉しいことじゃないですもんね」
「ストイックとマイペース、凸凹コンビでも面白いことやれたとは思う。話し合う余地はあったはずだ。感情的になりすぎた……」

  

〆は鰻重のつもりでいたが、実際は量の少ない鰻丼がデフォルトであった。タテルは胃痙攣を起こしていたため、丼で丁度良かったようだが。

  

その鰻丼は、白焼きと同様に鰻がバリッと焼かれていて香ばしい。鰻自体の旨味もクセが少なくて綺麗に伝わる。タレがやや少なめであることを除けば何の文句も無い。フランクミュラーや薔薇のフラワーボックス、MOLTON BROWNの香り強めのハンドソープなどわかりやすい装飾に走っている部分もあるが、シンプルに鰻を焼く技術は間違いなく一流であろう。

  

「いや、くよくよしちゃダメだ。エイジさんは確かに真っ直ぐだ。真っ直ぐだけどドライすぎる。僕は温かみを大事にしたい」
「その気持ちはよく伝わってきます。タテルさんって厳しいことも言うし時にヴァイオレンスかましますけど…」
「ヴァイオレンスかましてた?」
「愛を感じるヴァイオレンスですよ。ダウンタウンの浜ちゃんさんみたいにほっこりするというか」
「それは嬉しい。TO-NAのアットホームな雰囲気、本当に大好きなんだ。それでいて個性的。個性が光る瞬間をど突くことで、個性が確固たるものとなる」
「名誉だと思います」
「厳しさを見せるにも、愛は不可欠。僕はそうやってグループを育みたいし、自分自身も活動したい。TO-NAがTO-NAであるために、僕が僕であるために、すべき決断だった」

  

デザートは苺もの。この手の料理店にしては手が込んでいて、最後まで満足感を維持できる。

  

会計は1人2万超。少しお高めではある。
「コンディション整えて、もう1回来たいね。そして今日は取材、ありがとうございました。素材を大切に、と言ったところ、特に入念に書いていただければ幸いです」
「お任せください!TO-NAに魅力的な新メンバーが入ってくるよう、応援いたします!」
「よろしくお願いします!」
CLASH記者は不敵な笑みを浮かべて、夜の街に消えていった。

  

2日後、ダーリンサウンズに記事が上がる。オーディションへの思い、グループへの思いは一言一句反映されていた。
「良かった。やっぱりダーリンサウンズさんは俺らの思いを実直に汲んで文章を書いてくださる。素晴らしいメディアだよ」

  

オーディションは順調に進み、3次審査の時点で逸材がゴロゴロと残っていた。
「いやあレベルが高い。みんな採りたいくらいだよ」
「本当そうですよね。ここから8人、多くても10人ですか?絞るのは大変ですよ」
「嬉しい悲鳴だね。まあ最終審査、5日間の合宿で真の人間性は見えてくるだろうけど……それでも有り余るくらい逸材だらけだろうね」

  

「大変なことになったぞ、タテルくん!」
TO-NAプロデューサーの大久保が決死の表情で駆けつける。
「大久保さん?どうしたんですか?」
「CLASHが、君がエイジさんと手を切ったことについて詳報を出すと言ってる」
「CLASHが⁈どういうことだ、エイジさんとのことなんてメンバーとダーリンサウンズの記者にしか話してない」
「メンバーが漏らす訳ないよな」
「そう言えばあの記者さん、何回かエイジさんの話題を振ろうとしてたような。でもダーリンサウンズさんだよな、まさかCLASHの記者がなりすましたとか⁈」

  

「ご苦労だったよ」
「野元さん、これが取材メモです。すみません、タテルを酔っ払わすことはできませんでした。それでもエイジさんに対する発言、ポロリしましたよ」
「お〜、良き良き。あとはこれを、君たちお得意の誇張で聞こえ悪くしてくれ」
「では早速取り掛かります」
「いや、泳がせなさい。オーディションが始まる前から出すよりも、ある程度進んだ所で投下する方が大きなショックを与えられるよ。それにね、……」
「なるほど、それは名案ですね」
「これで僕のグループがより世界を目指せるものになる。楽しみだねぇ〜」

  

「絶対許せない」「売れっ子になって天狗になったのか」TO-NA特別アンバサダー・渡辺タテル、エイジと薄情の決別!一方的な絶交にSNS大荒れ

  

「これはどういうことだ……」
「残っている候補生が続々とオーディション辞退を申し入れている」
「せっかく集めた逸材が……何てことだ!」

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