連続百名店小説『独立戦争・上』第一話(あらいかわ/麻布十番)

*この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。実在の人物・団体とは一切関係ありません。大事なことなので2回言いました。

  

とあるテレビ番組の会議にて。
「今度の世界衝撃映像デラックス、キャスティングどうしましょう?」
「若い女性が足りてないな。今期連ドラ出演女優は来てくれないの?」
「映像観るだけなら番宣にならない、って言われちゃいました…」
「そうか…じゃあアイドル呼ぼうか。綱の手引き坂なんかいいんじゃない?」
「綱の手引き坂の誰にします?」
「テキトーに選んどきゃいい。どいつ選んでも当たり障りないことしか言わないから。でも意外とファン多いから、取り敢えず出しときゃ観てくれる。視聴率稼いでくれる、コスパ良い置物なんだよ!」
「…わかりました」

  

人気女性アイドルグループ・綱の手引き坂46。人気とはいうものの、その勢いには翳りが見え始めている。新曲のMVの再生回数は伸び悩み、紅白の連続出場記録は途絶え、公式SE○のフォロワー数は逓減している。停滞感を打破するため、しがない芸人のタテルが魅力を引き出すアンバサダーに就任した。だが人気が上向く気配は全く無いままである。

  

同じく人気女性アイドルグループの檜坂46には、単身フランスに渡っていたタテルの弟・カケルが実質的プロデューサーとして就任していた。革命を目指すカケルがプロパガンダとして彼女達を利用し、メッセージ性の強いクールな曲を提供するようになると、檜坂の人気は鰻上りとなった。

  

ある日、カケルのシナジー(檜坂メンバー以外の協力者)達は六本木で行われている綱の手引き坂の展覧会を見に来ていた。
「客足は疎ら。さすが綱の手引き坂だ」
「カケルさんが行けばいいのに、なぜ俺らに行かせるんだろう」
「カケルさんはちょっとでも綱の手引き坂の空気に触れると吐き気がするらしい」
「なるほど。だから俺らに敵情視察させるのか」

  

見たくもない展覧会に行かされたシナジーらは鳥居坂を下り事務所に戻る。あろうことかタテルとグミが2人きりで歩いていた。
「あれれ、これはもしかして恋愛スキャンダル拾っちゃった?」
「しかもキャプテンが。ぐへへへへ、カケルさんどんな顔するかな〜!」

  

勿論これは恋愛ではなく、タテルなりの職務である。ある日の綱の手引き坂事務所にて。
「第1回 綱の手引き坂46 チキチキ 一流を知ろう!」
「イェーイ!」
「前々から言われているが、綱の手引き坂は一流を知らなさすぎる。一流を知ってこそ立派なアイドルだということで、この1ヶ月は事務所周辺の一流店を巡りたいと思う」
「楽しみです!でも緊張しそう…」
「俺がいるから安心しろ。場数を増やすのが大事なんだ。とりあえず第1回は和食、一緒に行くのはキャプテン・グミだ」

  

六本木から麻布十番に下る大通りを、タテルと共にピンヒールで歩いていたグミ。
「危なくない?ここ結構急勾配よ」
「一流のもの食べるなら、我慢してでもお洒落しないと…アァ!」
「ほら言わんこっちゃない。危うく挫くところだったぞ」

  

「あれ、タテルのやつグミをお姫様抱っこしてる。これはイカつい事案だ!」
「俺ここで暫く見張ります。先輩はカケルさんに報告してきてください」
「任せた」

  

見張られていると知らない2人は入口側の2席に着席し乾杯酒を決める。ビールはありきたりすぎる、ハイボールやワイン、果実酒などはメニューにないため芋焼酎を攻めることにした。「フラミンゴオレンジ」の炭酸割りで乾杯。爽やかなオレンジのニュアンスで喉が喜ぶ。

  

タラの芽とこごみの天ぷら。初手から揚げ物とは珍しい構成だが、お腹の余裕があるうちに食べた方が美味しく戴ける、という考えでこうなっている。三十路で胃もたれしやすいグミには有り難い配慮である。コゴミは可愛らしい味ではあるが貫禄は未だ足りない。タラの芽は根元に良い苦味があり、葉の方は油と相まって香ばしい。大人度を試されがちな山菜であるが、野菜好きのグミは美味しくいただけたようである。

  

厨房には店主以外にもう1人いて、年上っぽいのに強く当たられていた。よく見ると顔が似ていて、「親父」と呼ばれていたので恐らく店主の父なのだろう。客とは会話せず黙々と皿の出し下げ・洗い物などに注力する。一方で店主は終始楽しく客と会話してくれるので緊張感はそこまで強くない。

  

引き続き天ぷら。鱈の天ぷらは少し醤油味をつけている。冬も終わりかけであったが、身がむっちりしていて、鱈本来の味を思う存分楽しめる。
芽キャベツは春らしく。タテルには慣れ親しんだ味で特筆すべきことは無い。

  

「タテルさん、どうしたら私たちもっと人気出るかな…」
グミが嘆くのも無理はない。日刊ヘンダイ調査の『日本国内で活動する憧れの現役女性アイドルグループ』ランキング(回答数500)が発表されたのだが、綱の手引き坂46の順位はというと、ちょこクロ、Parfum、希典坂46、MY;MINE、檜坂46、イヴニング娘.、スズキルム、IMC48、OCHA ZIPPER、FKK48、OSK48、NGY48に次ぐ13位であった。
「しかも青君と同率。振り向けば不比等ーズとECG48…」
「n=500のアンケートだから信頼度は低い。こういうのは大体3000は必要だ」
「でもかなり衝撃的じゃない?」
「危機感はあるよ。ライヴで粗末な席を売った一件でファン離れが加速、世間の印象は決して良くない」
「東京ドームなど夢のまた夢なのかな…」
「ごめんよ力になれてなくて…」

  

蛤の茶碗蒸し。桜の香りに三たび春を覚え、落ち込んだ心も少し回復した。蛤の身は小さめだが味はしっかりある。

  

造りはシンプルな真鯛、そして唐墨を塗した帆立。真鯛はねとっとした口当たりがある。帆立は唐墨により甘みが引き立ち、帆立と唐墨両方の魅力を味わえる。菜の花も昆布締めしてあって密かな注目ポイント。菜の花は火を通すよりありのままを味わうのが乙である。

  

一方その頃、カケルの下にシナジーが戻ってきた。
「たった今、タテルとグミが2人きりで麻布十番へ歩いて行ってました」
「最低だなアイツら。写真あるのか?」
「はい」
「…これは、お姫様抱っこ⁈」
「そうですね」
「まあ転けそうになったグミを押さえただけの可能性もある。見張り居るんだろ、ちょっと慎重になろう」
「本当だとすればキャプテンのメンツ丸潰れ。綱の手引き坂も終わりですね」
「いいじゃん終わっても。綱の手引き坂を推すなんて不健全の極みだ!」

  

唐墨帆立がアテになると踏んだタテルは日本酒を所望する。5種類ある中からまずは山和の桜ラベルを選択した。

  

飯蛸揚げと浜防風のおひたし。ムキムキの蛸揚げはどうこう言うまでもなく美味しいが、胡麻ペーストの濃厚さに目を見張る。

  

食材だけでなく器にまで興味を示す上司と部下の2人が隣にいて、店主も主にその人達と会話をしていたが、タテルにも話しかけてきた。
「よく食べ歩きしてそうですけど、この辺はよく来られるんですか?」
店主はタテルの経験値の高さを見抜いていたようだ。
「最近ちょっとこの辺の店食べ歩こうと思ってまして」
「へぇ〜、どういったジャンルの店行かれること多いんですか?」
「フレンチやイタリアンが多いですね。和食はどうしてもお高くてあまり積極的に行けないんですよ」
「それでいいと思いますけどね。横の女性は?」
「アイドルグループのキャプテンをしておりますグミです。今28歳で、30歳になる前に一流の和食極めたいと思いまして」
「いいんじゃない?うちは若いお客さんも多いからね。今日も皆さんお若い。昨日はおじさんばっかだったけど」

  

白魚のかき玉お椀。白魚の骨らしきもののシャリシャリ食感を楽しみ、江戸物には無い優しい出汁を味わう。
「これが京都の味…染みるね」
「奥ゆかしい味。俺ら関東人には新鮮だね」
「多分私のお父さんやお兄ちゃんには良さ分からないかも」
「痛風でお馴染みのグミ父グミ兄か。お酒のアテみたいな濃い味が好きそう」

  

そこへ予約の電話がかかってきた。4月に予約をしたかったようだが、この店のスペシャリテ「花山椒しゃぶしゃぶ」のシーズンであり既に埋まっていた。
「ラッキーですよお二方とも。今回はお隣のお嬢さんたっての希望で花山椒用意してますから」
「やった!憧れてたんだよね山盛りの花山椒」
「花山椒?」
「まあ実物見てのお楽しみだ。間違いなくアガる」

  

花山椒に至るまでの道のりにも絶品は続く。金目鯛を炭火焼きにし、煮付けのようなタレをかけたもの。
「あれ、このタレちょっと不思議…」考えを巡らすグミ。
「この感覚は…山椒ですか?」
「御名答。よくわかりましたね」
「清涼感が特徴的で」
山椒の爽やかさと炭火の香ばしさで、個性が出づらい金目鯛でも旨味が立っていた。蕗の薹を揚げたもので苦味のアクセントもプラスし、最高に美味しい焼魚となっている。

  

「俺納得行かないんだよな」涙目になり憤りの念をぶつけるタテル。「京子の卒業はやっぱ、表題曲センターでシングル出して欲しかった」
「それは私も思ってる。京子の功績は大きいし、私も本当は上の方に投げ掛けたかった。でも勇気が出なかった」
「さすがのグミでも勇気出なかったか…去年も今年も、綱の手引き坂としての活動が4ヶ月近く止まっていた。シングルも出せずライヴもやれず」
「他のグループとの兼ね合いもあるからね、仕方ないとは思う」
「冬元先生がな…48シリーズもあるし、最近は色んなものに手を出してる。青君・不比等ーズ以外にも『強烈』の二番煎じグループを2組、女優オーディション、2次元アイドル…」
「忙しすぎるよ。そりゃ私達だけにリソース割けとは言えない」
「…」

  

春らしい食材、続いてはホタルイカとうるいの酢味噌和え。ホタルイカの濃い味、酸味を含んだ酢味噌のコク、定番の組み合わせで酒が進む。「文化人」という少し度数強めの日本酒を追加した。

  

その間、カケルはシナジーと飲み会を開いていた。シナジーの撮った展覧会の写真を見たカケルに異変が生じる。
「ウゥッ!」
「どうしました⁈松原のぶえのエビチリを食べた美川憲一みたいになってますよ!」
「その喩え解らんって!見てみろよこの変てこポーズ、全くもって戯けだよ」
「下品ですよね。衣装が汚れます」
「タテルはこれを良いと思ってるのか。感性ぶっ壊れてるだろ」
「檜坂と同じ仲間だと思われたくないですね」
「おのれ、ますます綱の手引き坂を潰したくなってきたぞ」

  

植木鉢から葉を切り取る店主を見た2人。
「え、大丈夫ですかその葉っぱ?合法ですか?」
「おいグミ!ここはボケるところじゃない!」
「…ごめんなさい、つい癖が出てしまって」
「そういうところだぞ、綱の手引き坂がやんや言われるのは。ウチのグミが失礼しました…」
「ハハハ。大丈夫ですよ、これは木の芽って言って、山椒の若葉なんです」
「そうなんですね…」
「買ってもいいんですけど最近高くて、自家栽培の方が安く済むんですよ」
「木の芽を自家栽培…そんなことできるんだ」
「ちょっと香り嗅いでみます?」
「あ、いい香り〜」
「これを若竹煮に載せます」

  

わかめと筍を煮た定番料理、若竹煮。鯛の子を取り合わせている。鯛の子は鱈子ほどの市民権を得られていないだけあって美味しいかどうか判別しづらい。せっかく載せた木の芽、美肌のわかめも特徴的ではあるが、一番印象に残るのはやはり筍である。
「えっ⁈筍ってこんなに甘いの?」
「知らないのかグミ。喩えるのあまり良くないけど、とうもろこしみたいな甘さがあるんだ旬の筍には」
「知らないなぁ。やっぱ私まだまだだね…」
「和食は今の時期が一番面白いですよ」店主が割って入る。「山菜もあって野菜も美味しい。逆に夏はあまり面白くないですね」
「夏…確かに食材思いつきませんね」
「鱧、じゅんさい、茄子…言われてみれば俺でも大層な食材出てこない」
「でしょ。だから和食を極めるなら春か秋です」
「ありがとうございます」
「夏は蕎麦極めようか」

  

タテルの言葉に合わせて蕎麦が登場。単体で蕎麦の香りを楽しみつつ、葱と蕎麦の実で食感を堪能する。だが蕎麦本来の味を楽しみたい主義のタテルは惰性で食べてしまった。

  

「最近はカップリングも期別曲ばっか。ユニットやりたいよね」
「グミもそう思ってたか。大賛成だよ。京子とスズカの歌姫コンビとか見たかったなあ」
「冬元先生が私達一人ひとりのことわかってないから、ユニット曲作りたくても作れないとか?」
冬元は自身がプロデュースするグループにおいて全楽曲の作詞を担っている。檜坂こそカケルの脅しで作詞から手を引いたものの、表題曲カップリング曲含め年間何百曲もの作詞に追われている以上、自分達のグループだけがああだこうだ言う贅沢は許されていない。

  

店に再び電話がかかる。またもや4月に予約したいという電話で、店主が申し訳無さそうにお断りする。
「俺らも冬元の呪縛から逃れたいね」
「タテルくん、いくらなんでも呼び捨ては止めようよ」
「でももっと可愛い歌詞が良い。おっさんには書けないような」
「そりゃそうだけど…」
「いやあ困ったよ、今の電話、さっきと同じ人がかけてきた」
「マジっすか?しつこいですね」
「多分酔っ払いです。明らかにフニャフニャしてましたもん」
「めんどくさい人がいるもんだ…」

  

めんどくさい人の正体はカケルであった。
「電話をかけて、タテルとグミの会話を盗み聞きしてみようと思う」
「できるんですかそんなの?」
「普段使いの電話機とは違うぞ。周りの音も拾える仕様の電話機だ」
「それにしても当てずっぽうすぎません、その作戦?」
「やれることはやる。何とか檜坂を綱の手引き坂と引き剥がしたい。何故下品なグループと事務所が同じなのか、納得いかねぇんだよ!」

  

会話を傍受されているとは知らない2人の元へ、愈々花山椒がやってくる。まずは花山椒単体をひとつまみさせてもらう。
「はぁ、清涼感のある痺れ…」恍惚のタテル。
「これは素晴らしい。お肉との相性も良さそうだね」グミにも良さを解ってもらえたようだ。

  

これをしゃぶしゃぶにてんこ盛り。牛だけだと脂が強いところ、香り高き花山椒の存在がそれを和らげる。肉もたっぷりで贅沢なメイン。出汁まで完食してしまった。
「脂と花山椒のバランス、最高すぎる!」
「汁まで飲み干すの、辛くありません?」
「いえいえ。俺達霜降り肉食べるとすぐもたれてしまうので、汁まで合わせて丁度良いんですよ」
「まだ20代後半で、ですか?」
「意外とそういうものなんです。ね、グミ。カルビは3枚が限界だもんね」
「ちょっとそれやめて!恥ずかしいんだけど」
「一本満足バーは一本で満足だもんね」
「そりゃそうでしょ。2本買う人いたら萎える」
「萎えるなよ、ストックするだけかもしれないって」

  

「クリティカルヒーーーット!」
酔っ払いカケルは大喜びであった。
「言ってた言ってた、冬元先生の手から離れたいって」
「引きが良いですねカケルさん」
「ターテル君とは違うからな!証拠も残ってるし、冬元先生に言いふらしてやろう。向こうから勝手に出て行って、冬元先生の圧力をかけて綱の手引き坂を公の場に出させない。そうすれば確実に息の根は止まる。最高の展開だな、ガハハハ!」

  

客全員が18:00一斉スタートだったことが効を奏し、土鍋御飯は3種類戴くことができた。

  

まずはお豆さん。お淑やかな豆の甘味と塩味が美味しさのポイント。それらを捉えられるタテルと、捉えられないグミ。

  

明太子とキャベツは一転分かりやすい味。熱が入っているので塩辛さが悪目立ちすることもない、バランスの取れた味である。

  

筍御飯はここでも筍の甘みに惚れてしまう。どれも美味しく、店主もお代わりを勧めてくるのでタテルはそれぞれ2杯ずつ食べてしまった。
「タテルくんよく食べるね」
「和食はこれがあるから楽しいんだよね。パンも麺も良いけど、やっぱ米が大好きだ」

  

濃い抹茶アイスを、ココアパウダーにむせないよう気をつけて食べる。真剣に食に向き合うもの同士として、隣に座っていた天野という女性と会話する。
「グミさん、見たことあるような気がします。希典坂でしたっけ?」
「いえ、綱の手引き坂46というグループにいます」
「失礼しました。ごめんなさい、坂にも色々あるから…」
「そんなもんですよ。分からなくても恥ではないです」
「綱の手引き坂のリーダーでいらして」
「細かくてすみません、リーダーではなく『キャプテン』なんです」
「グミ、ここでは指摘しなくていいから。TPO考えて」
「すみません、訂正する癖がついてしまって」
「いえいえ気にしないで下さい。それより入ってきた時思ったんですけど、グミさんスタイル良すぎません?」
「いやいや、天野さんもスラッとされているようで。立ってみません?」
「はい…」
「めっちゃスタイルいいじゃないですか!」
「グミさんも最高のプロポーションです!」

  

この後2人は美容トークで盛り上がっていた。蚊帳の外となったタテルは、おまけの日本酒で1杯やりながら店主と食について語る。やることが無くなった店主の父らしき人物は勝手にラジオをかけて叱られる。

  

気づけば時刻は9時半になっていた。ここでタテルとグミは店を去る。飲み物代を含め2万5千円弱、都内の和食店にしてはお手頃である。ただし現金のみの取り扱いなので気をつけたい。予約時に話をちゃんと聞いていたタテルは5万円分の現金をしっかり用意していた。
「スマートだねタテルくん」
「こんな現金持ち歩くの久々。ちょっとドキドキしていた」
「タテルくんはキャッシュレス主義だもんね」
「そっちの方がいいじゃん。人の手垢ついた貨幣を触るのは気が引ける」

  

最寄駅は麻布十番であるが、2人は少し散歩したいと言って逆方向に向かう。
「いいのか、六本木まで?坂登るんだぞ」
「大丈夫。私達、もう一回坂を登らなきゃだもんね」
「その通りだ。綱の手引き坂には魅力的なメンバーが揃っている。どこまでも行けるような気がしたあの時にもう一度戻る。俺らはそう誓った」

  

そこへ、見張りのシナジーがカケルの指示を受け突撃する。
「グミさん、綱の手引き坂が独立するって本当ですか⁈」
「何だテメェ⁈」タテルが声を荒げる。
「綱の手引き坂が独立するって本当ですか⁈」
「まず名乗れ。お前誰だ」
「だから、綱の手引き坂が独立するって本当ですか?」
「しつこいな、俺は山崎邦正じゃねぇ!」
「綱の手引き坂が独立するって本当ですか⁈」
「くまのぬいぐるみにされたいのか?警察呼ぶぞ!」
「綱の手引き坂が独立するって本当ですか⁈」
「埒が明かないな」
タクシーに乗って、タテルとグミは夜の六本木に消えていった。

  

NEXT

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です