連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』64杯目(there is ramen/荻窪)

グルメすぎる芸人・タテルと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共1997年生まれの同い年で、生まれも育ちも東京。ひょんなことから出会ってしまった2人の、ラーメンと共に育まれる恋のようなお話。今宵、人気番組『浜千鳥の神連チャン』に出演。

  

神連チャン、そして浜千鳥OUTキョコってるINまであと2曲

  

〜LEVEL9〜
①夏色/ゆず
②白い恋人達/桑田佳祐
③KICK BACK/米津玄師
④キセキ/GReeeeN
⑤高嶺の花子さん/back number

  

〜〜〜〜〜

   

五稜郭を出て次のラーメン屋に向かう2人。小学校に突き当たったところで南下し店先に辿り着くと待機席が2つ空いていたが、現れた店員に小学校の方まで戻るよう言われてしまった。店先で待てるのは7名までで、その後ろの人達は店から離れた小学校の前に並ばなければならない。店員と共に行ってみるとそこに待ち人はおらず、結局2人は蜻蛉返りすることになった。すると間も無く2人客が来て、店員はまたもやその2人を小学校前まで案内して駆け戻る。最早シャトルランである。

  

「タテルくん、レベル9何歌うか決めた?」
「さすがにそこまで行けるとは…」
「思って。私達本気で神連チャン目指すんだからね」
「はーい」
「『白い恋人達』なんかどう?サザン好きなんでしょ」
「大好きなんだけど、桑田さんの曲ってすごく音程が揺らぐんだ」
「そうなんだ」
「何回歌っても確信持てないし、『今宵涙こらえて…』の下り方が不安すぎる」
「じゃあ『キセキ』はどう?」
「世代ど真ん中だから歌いたいけど、長いかな。集中力持たない」
「どれも難しいよね…」

  

回転は思ったより速く、20分ほどでラーメンにありつけた。店内は狭めで、奥の席に入るには気をつかう。

  

喜多方ラーメンのように肉が盛り付けられているチャーシュー麺。スープからは煮干しの香りが素直に押し寄せ、まろやかなアブラが交ざることにより煮干しの味がそのまま脳へ伝わりつつコクを覚える。
麺も程よくくっきりした輪郭を持ってスープと調和する。チャーシューも脂っこすぎず硬すぎずの上手いラインを突いていて最後までもたれず食べられる。味玉とチャーシューを一緒に食べても美味しい。飽きたら青唐辛子味噌でシャープに味変することもできる。
「すげぇ美味い。あっという間に食べ終わっちゃった」
「ね。めっちゃ美味しかった」
「俺的にはNo.1かもしれない」
「その気持ちわかる。強いよね」

  

荻窪のカラオケ館に入り歌を練習する2人。
「タテルくん、これでいいじゃん。私も大好きな曲」
「たしかにあまり外さないね」
「よく歌えると思う。結構高いよこの曲。さすがタテルくん」
「京子に認めてもらえるなんて嬉しいよ」

  

〜〜〜〜〜

  

タテル「俺らの大好きな歌いかせてください、バックナンバーサンカラ!タカネノハナコサン!」

  

山家「もう誰もツッコまない」
〜京子のマジックでタテルのボタンの色を変える〜
ドアノブ「ボタンの色が銀から金になった」
大吾「変えるところそこじゃないやろ」
ドアノブ「救いようのないダサさ」
ナレーション「『魔法とやらの力で』の階段状に上がる超高音が難しく、あのヘッドボイサーも…」

  

ドアノブ「出た、あの恥ずかしい声」
ナレーション「高音を出しきれずここで失敗!」

  

スタッフ「本業が歌手またはモノマネではない方でレベル9をクリアしたのはほしのリゾートさん、メカマーサマーサさん、金邑ミクさんのみです」
タテル「そうなんですね」
スタッフ「そしてリゾートさんがクリアしたのがこの曲です」
タテル「なるほど。良い道選びましたね俺ら」
タテル「この曲高音が厳しいってなっていると思うんですけど、個人的には『飛び出して来て』のリズムが不安です」
京子「タテルくん歌詞詰まってるの苦手なんだよね」
タテル「そうそう。バチっと決まればカッコいいんだけどね」

  

タテル「実家片付けていたらこんなのが出てきて」
ナレーション「高1学年末の音楽の試験。そこでタテルは音楽に対する熱い思いを語っていた」

  

タテル「夏休みの課題レポートで『J-POPが好きです、IMC48が好きです』と書いた時、先生はこう仰りました。『J-POPの問題は、売れている曲=良い曲、という等式が成り立っていないことである。IMCの曲は、IMC以外の人が歌っても魅力的なのか?』と。俺はYESと答えた。歌は誰のものでもない」
ドアノブ「アーティストのものだろ」
タテル「作詞者が綴るリリック、それを駆り立てるサウンド。歌い手はそれらを正面から受け止め、自分なら込められた思いをどう表現するか考える。その一連の理解があって初めて歌は人の心に染み心を揺さぶる」
京子「めっちゃいいこと言うタテルくん…」
ドアノブ「どこがやねん。クサいだけ」
タテル「普通だったらこの曲が言ってるみたいに僕のもとに京子が来るわけ無いじゃないですか。でも夏の魔物は本当にいた。音楽の力を信じていたら、京子は俺のもとに来てくれた」
大吾「冬の悪魔になって殴りに行こうか?」
タテル「京子と2人で練習した日々はいつも以上に楽しかった。歌に情熱を注ぐ者同士、絆を深め合えた2週間。高校時代の音楽の授業が無かったら、こうやって真剣に歌と向き合い、京子と何かを成し遂げることも無かった」

  

山家「熱語ってるな…失敗しそう」
濱内「終わらないで!」

  

タテル「京子に出逢えて俺は幸せだ。大好きな歌うたって、京子に夢のレベル10、そして神連チャンの景色を見せてあげたい。精一杯うた…」
京子「アハハハハ!ちょっと待って!」
タテル「おいおい!何が可笑しいんだ」
京子「テストの解答見てよ。『野ばら』の作詞者を答えなさい…『指原莉乃』だって、アハハハ!」

  

大吾「どこがオモロいん?」
京子「先生にツッコまれてるし!『な訳ない』って」
タテル「恥ずかしい…」
山家「なら書くな」
タテル「その頃珍回答書くのハマってて。丁度さっしー好きだったし」
京子「『世界一ジョークと可愛い女の子が好きな人としてギネスに載っているタテちゃん』だって!何言ってるの、アハハハ!」

  

ドアノブ「クソやん。イタい高校生やなあ」
大吾「先生の返し見てみ。『アンタ変な女に騙されるわよ』だって」
ドアノブ「先生オモロいな。先生連れてきてよ」

  

大吾「ナンジャラホイで仏頂面してタテルのクソ回答で大ウケ」
ドアノブ「普通の感性してない2人とも」
大吾「歌い出しの『あ』5音くらい上ずれ」

  

〽︎会いたいんだ…
大吾「歌上手いの腹立つ」

  

〽︎飛び出してきて…
ドアノブ「今外れてなかった?」
濱内「外れてないです。ちょっとぎこちないだけ」

  

〽︎偶然と…
山家「来るぞ、超高音」
ドアノブ「ここで終われ。神連チャンの品位を下げるな!」

  

〽︎ちかあらで…
大吾「クッソ、越えやがった」
ドアノブ「まだロングトーンがある」

  

〽︎なるわけないか〜
濱内「伸びろ〜!」
大吾「津田みたいにコホれ」

  

濱内「行った!」
タテル「よっしゃぁ!来た来た9連チャン!」
京子「タテルくん本当にスゴい!最高傑作!」
ドアノブ「MC交代だけは止めてくれ!」
タテル「夢の続きは京子に任せた!最高のエンディングへ向かって!」
京子「任せて!」

  

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