連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』56杯目(むかん/中野坂上)

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グルメすぎる芸人・タテルと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共1997年生まれの同い年で、生まれも育ちも東京。ひょんなことから出会ってしまった2人の、ラーメンと共に育まれる恋のような話。

  

サンタの正体はタテルであった。

  

「タテルくん…タテルくん!」
京子はタテルを強く抱きしめた。
「会いたかったよタテルくん!心配したんだよ、病気って聞いて」
「迷惑かけてすまなかった…」
「死にかけたって聞いて不安だったんだよ!何で体壊すまで酒飲むの!」
「そうだよな…」
「…でも、生きていてくれて良かった」
「ごめんな京子、こんな俺で…」
「こっちこそごめん、タテルくんを苦しませてしまって。もう一度やり直したい…」
「勿論だよ。京子のこと、忘れられる訳がない」
「ありがとう…久しぶりに2人で夜景眺めよう」

  

タテルが買ってきたシャンメリーで乾杯する2人。
「懐かしいねシャンメリー。クリスマスになるといつもお母さんに買ってもらってた」
「俺も。シャンメリーとかこどもビールとか、子供にとっては特別な飲み物よね」
「こうやってタテルくんと飲めるなんて思ってもいなかった。もうお酒は飲まないの?」
「暫くは控えるよ。禁酒すればするほど肝臓も元に戻るって言われたから」
「それが良いと思う。タテルくんを悲しませること、もうしないからさ」
「俺もだらしないことはしないようにするよ。こうやって生きていられるの、当たり前じゃないってわかったから」

  

聖夜はまるで2人を祝福するかのように静かに輝いていた。日付が変わるまで、2人だけの時間をたっぷり過ごした。

  

クリスマス当日はメンバーが集うクリスマスパーティーが行われた。1人でいたいと言って不参加のつもりでいた京子だったが、タテルと共に参加することに決めた。
「京子さん!」
「ごめんね、1人でいたいなんて言っちゃって。本当はやっぱり皆とワイワイしたくてさ」
「もちろんですよ!京子さんがいないと人狼面白くないですから」
「ありがとう。あとスペシャルゲストも来てます!」
「ご無沙汰してます、タテルです」
「タテルさん!元気で良かった…」

  

数名のメンバーは号泣しながらタテルの復帰を祝福する。
「自己管理の甘さで大病してしまってごめんなさい。今日から心入れ替えて、一緒に綱の手引き坂をビッグにしましょう!」
「タテルくん、堅苦しすぎるよ。会社の忘年会じゃないんだから」
京子のツッコミで笑いが起こる。
「ごめんごめん、真面目すぎたね」
「お2人とも、ナイスコンビです」
「嬉しいな、そんなこと言ってもらえて」
大人数で遊ぶことに慣れていないタテルも、京子に手取り足取り教えてもらいながら人狼やボードゲームを楽しんだ。途中、意識を失っていた間に行われたサリナの卒業セレモニーの映像を観たタテルは、サリナの人望の厚さを実感し号泣していた。

  

次の日は中野坂上にある、京子が予約を勝ち取ってくれたラーメンの名店「むかん」を訪れた。
「久しぶりに2人でラーメン食べれるね…あれ?タテルくん、また泣いてる…」
「京子とラーメン食えるの、嬉しくて嬉しくて」
「私も嬉しい。あれから1人で色んな店行ったけど、タテルくんがいないと寂しくて…」
「俺も京子がいなくて寂しかった」
「柴崎亭の件はごめんね。多分タテルくんドラマ撮影のこと知らなかったもんね」
「あれは確かにびっくりした。でも走り去ることなかったよな俺」
「あの人はあくまでもお友達だから、安心してね」

  

予約の時刻の5分前に到着。物腰の柔らかな店主に導かれ入店する。券売機にはビールなど酒類のメニューもあったが、今日のところは止めておくことにした。

  

「そういえば京子、牡蠣にハマったんだよね」
「そうそう。めっちゃ美味しくて、あたらない程度にたくさん食べてる」
「俺怖いんだよな生牡蠣、ちょっと食べただけで下しそう」
「1個くらいなら大丈夫よ。体調落ち着いたら食べてみよう」
「わかった。あとかき氷にもハマってるよね」
「そうそう。マリモちゃんに連れて行ってもらったサカノウエカフェ、めちゃくちゃ美味しくて」
「サカノウエカフェか。俺も連れて行ってもらったぞ。あそこはレベチだよね、口溶けも味の作り方も」
「わかってくれた!もう最高すぎて!かき氷って楽しいよね」
「間違いなく楽しい。来年はかき氷も一緒に食べに行こうね」
「うん。私たち立派なゴーラーだね」

  

ラーメンがやってきた。ときわ台「スープメン」を思い起こさせる牡蠣ラーメン。牡蠣の味を出しつつも、磯臭くならないように香ばしい味つけをしてある。
味玉にもしっかり味がついていて白身の部分が特にクセになる。チャーシューは赤身の部分に若干の臭みがあるので味玉と一緒に食べると良いだろう。

  

このままでも病みつきになる味ではあるが、味変要素が3つある。山椒・辛くない一味はそれぞれの特性を十二分に発揮させた意義のある味変で、にんにくりんご酢はさっぱりさせながらもにんにくによる深みを加えられる。

  

「タテルくん、食事は大丈夫なの?」
「特に止められてはいないかな。むしろ沢山食べるようにした方が、酒量を減らせるから良いって言われた」
「そうなんだ。結構痩せちゃったもんね…」
「いいダイエットになったかな」
「良くはない。食べすぎない程度にいっぱい食べよう」

  

ここで和え玉の登場。単体でパスタとして売れるくらいに牡蠣バターが濃ゆく絡まっている。残っていたスープと混ぜるとそのバター味が花開いてさらに美味しくなる。スープメン時代と比べると値段は上がっているがその分力強さは増していて、素晴らしい食体験を提供している。

  

「タテルくん、戻ってきてくれてありがとう。私、今すっごく幸せ」
「俺もだよ。これからもずーっと、京子とラーメン啜りたい」
「来年はタテルくんにとっても飛躍の年にしたいね。だからいっぱい支えてあげる。弱音吐きたくなったら私に甘えて」
「ありがとう…」

  

年越しの瞬間は関東在住メンバーで事務所に集って迎える。
「あそうだ、タテルさんと京子さんにお知らせが…」
「えっ?」シンクロする2人。

  

『浜千鳥の神レンチャン』男女タッグモード出演決定!

  

「えーっ⁈」
「俺歌うの?烏滸がましいって」
「タテルさんも歌上手いですよ。自信持ってください」
「タテルくんにとってはTVスターになる第一歩。一緒に頑張ろう」
「うん、楽しみ!」
「あ、年越しまで1分切りました!」
「来年こそは紅白出演、そして東京ドーム公演を再びやります!」
「綱の手引き坂の発展を願って、5,4,3,2,1…」

  

A happy new year!

  

「2024年もよろしくお願いします!」

  

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