連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』45杯目(中華そば西川/千歳船橋)

グルメすぎる芸人・TATERUと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共97年生まれの同い年で、生まれも育ちも東京。ひょんなことから出会ってしまった2人の、ラーメンと共に育まれる恋のような話。

  

「今日の対決はサビトロレンチャン!ピアノである曲のサビを弾くので曲名を早押しでお答えください。先に3連続正解した方が勝ちです。負けた方が千歳船橋での2杯分を自腹となりますので心してかかってください。そして演奏してくれるのは、れもん先生!」
「レモンサワーになりたいの〜!どうも、広島れもんです!」
「豪華!」
「いい戦いになりそう。負けないからな、京子」
「私もよ」

  

♪(ありが…)
「いきものがかりさんで『ありがとう』」
「正解!タテルさんがまず1レンチャン!京子、タッチの差で押し負ける」
「あぁ悔しい!」
「もうこれはね、世代ですよ。クラスの中で嵐の次に人気だったのがいきものがかり」
「そうなんだ。私の中学はマジでAKBが大人気だった」
「AKBは3番手だった。ヲタとしてはちょい肩身が狭かったな」
「次の問題いきますよ!」

  

♪(めちゃくちゃ好き…)
「倖田來未さん『恋のつぼみ』!」
「京子さんお見事、1レンチャン!」
「これはお手上げだ。聞いたことあってもタイトルが出てこない」
「まだまだねタテルくん」

  

「『HONEY』です!」
「『オールドファッション』ですね」
両者譲らぬ展開が続く。

  

♪(ありふ…)
「落ち着け…ミスチルの『Sign』」
「タテルさん、1レンチャン奪取!」
「ミスチル大好きですから。負けるわけにはいきません」
「桜井さん同じ練馬出身なのに…ああ、悔しい!」

  

♪(いつの間にか…)
「『明日への扉』!」
「タテルさん正解!2レンチャン!」
♪(いらない何も…)
「B’zの…『LOVE PHANTOM』!」
「タテルさん3レンチャン!」
「ダメだ全くわからなかった。男性の曲弱いんだよね」
「わかんないもんなんだね。結構有名だけど」
「ということでタテルさんの勝利!自腹は京子さんに決定です」
「うわぁ、悔しいな…」
「歌姫に勝てて光栄です」

  

千歳船橋駅に降り立った2人。
「ねぇタテルくん、何よその格好」
「仮面ノリダー、参上!」
「ライダーじゃなくて?」
「千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵と言えば憲武さんでしょ。だからこの格好」
「やめて。一緒にいると恥ずかしい」

  

最初に目指すのは煮干しラーメンの名店。10分ほど歩いて環八通りに抜ける。
「歩道橋か…めんどくせぇな」
「ずべこべ言わないで、行くよ」
「よぉし、必殺ノリノリダー!」
「…」
「はいはい登りますよ」

  

仮面ノリダーのことをよく知らないタテルは大人しく衣装を脱ぎ去り京子の後を行く。歩道橋を降りもう少しだけ歩くと、覚悟していた通りの行列が現れた。

  

「本当は平日に来たかったよね。ごめんな」
「大丈夫、これくらい普通よ。むしろタテルくんと一緒にいる時間が増えて嬉しい」
「俺、返せているのかな」
「何を?」
「京子が俺に注いでくれる愛情に、俺は応えられているのかなって」

  

京子はタテルの肩をぽんぽんと叩く。
「大丈夫だよ。何気にしてんの」
「こんな大忙しの京子がわざわざ俺といてくれてる。だから京子のこと、楽しませなきゃなと思う」
「楽しいに決まってるじゃん。そんな思い詰めなくてもいいんだよ」
「ありがとう…」
「タテルくんは真っ直ぐに私のことを思ってくれてるよね。間違いない」
「思い伝わってるんだ…嬉しい」

  

30分程待ちようやく店内に入れた。席に着くと京子が何かを取り出す。
「はい、遅くなったけど誕生日プレゼント。タテルくん欲しがってたよね、ネクタイ」
「わあ、めっちゃ嬉しい!でも何で俺がネクタイ欲しいことを…」
「この前家行った時さ、タテルくんのネクタイかけ見たのよ。そしたらみんなボロボロだったから、新しいのあった方がいいかなって」
「すごい…京子って気遣いの天才だよ」
「いやいや、天才なんて恥ずかしい」
「俺なんて京子を弄んでばかりだよ」
「でも弄ばれるの、悪くない。タテルくんの愛が詰まっているから」
「そっか?」
「だから楽しい。タテルくん、そのままでいてね」

  

ラーメンがやってきた。最初スープを飲むと煮干しの苦味を感じるが、その奥には旨味がある。啜り上げるとこの旨味が麺に纏わりつき、確かに美味い1杯だとすぐわかる。
2種のチャーシューはどちらもカッチリとした赤身であり、煮干しラーメンという重たい料理に対し脂身を避けるという好判断。

  

食いしん坊の2人は和え玉まで注文した。そのまま食べても塩焼きそば感覚で病みつきになるし、残ったスープにつけるとしっかり煮干しの味がつく。

  

「美味しかった!良い煮干しラーメンだったね」
「そうだね。こんな楽しいラーメンの世界に招いてくれてありがとうだよ京子」
「タテルくんも、心からラーメン楽しんでくれるようになってくれて嬉しい」
和やかに笑い合う2人の元へ、女性の2人組が接近してきた。

  

NEXT

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です