連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』15杯目(六厘舎/東京駅)

グルメすぎる芸人・TATERUと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46(旧えのき坂46)」のエース・京子。2人共25歳の同い年で、生まれも育ちも東京。
ひょんなことから出会ってしまった2人の、ラーメンと共に育まれる恋のような話。

  

東京駅八重洲口までやってきた2人は、シャングリラホテルへ導かれた。
「え?めっちゃいいホテルじゃん!」初めてのラグジュアリーホテルに舞い上がる京子。
「いいなぁ初心で。俺なんか中2からグランドハイアットに食べに行ってるから新鮮味ない」
「よくわかんないけどなんか腹立つ」京子の感覚はごもっともだ。

  

「次の対決の舞台は、ここのジムです。お題は…エアロバイク5km走!」
「…普通だな!」
「シャングリラまで来てこれだけ?贅沢!」

  

スポーツウェアに着替えた2人。五つ星ホテルにはちょっと似つかわしくない代物であった。最新鋭のエアロバイクにまたがる。
「俺は株主優待の住谷さんを降ろします」
「じゃあ私はキックボクシングのフェイ姉さんを降ろします」

  

「準備はいい?行くよ、スタート!」
漕ぎ出す2人の目の前、プール越しに、丸の内の景色が広がる。いつもならじーっと眺めていたくなる景色だ。だがこの時ばかりはどうでも良かった。3連続自腹を避けたいタテルは体力の限り速く漕ぎ続ける。

  

「勝負あり!デラックス・マツコ、じゃなくてタテルくん勝利!」
「あぁ、悔しい!」同じく懸命に漕いだ京子は床に突っ伏した。
「ちょっと休もう、俺ら疲れた。フランダースの犬みたいに昇天していきそうだよ」
「いやいや、せっかく来たから他のアトラクションもやろう」
「アトラクションって…遊園地かよ。じゃあプール行く?」
「それはダメ!私の水着、見たいだけでしょ?」
「くっ、バレたか…」

  

2人は程よく運動し、ちょうど良い腹の空き具合となった。シャングリラを後にし、東京駅の地下へと入る。
「さあさ来た来た、東京ラーメンストーリー!」
「違う違う、ストリート」
「ごめんごめん、東京ラブストーリーと混ざった」

  

行列で有名な六厘舎ではあるが、15時半ともなればそんなに混んでいなかった。京子、初めての自腹。
「あれ、特製にしなくていいの?」煽るタテル。
「うるさいな、払うの私だからね!」
「じゃあ俺特盛にして、生七味もつけて、」
「ダメ!特製つけ麺まで、奢るのは!」
「俺が自腹の時は好き勝手頼んだくせに…」自由な京子のやり口に翻弄されるタテル。

  

席につくと、お互い高校時代の話をし始めた2人。
「高校時代俺の友だちがソラマチに行って六厘舎で食べて来た、って言ってた。自分のお小遣いで初めて食べる飯って、やっぱラーメンだよな」
「そうだね。私も高校が池袋だったから、池袋のラーメン屋は一通り巡った。えのかけで紹介したラーメンランキングも、大体池袋にある店入れたし」
「高校の時から1人学ランでKITTEのフレンチとか行ってた俺って、やっぱ変?」
「変」
「即答だな…美味しそうでしょこの野菜フレンチ」タテルは写真を見せた。
「空白多すぎ。皿いっぱい盛ってほしい」
「言うと思った。なんで皆わかってくれないんだ、この芸術性!」
「わかるわけないでしょ。アンタが異常」
「…」

  

つけ麺がやってきた。つけ麺の名店は増えてきたが、太麺に濃いスープという組み合わせは六厘舎が元祖と言えよう。
「ん!」うなりがシンクロする2人。
「やっぱこれだよな!ベタベタに濃くはないけど、ちゃんと味が絡む!」
「魚介の香り…ああ美しい」
「青春の味、とはこのことか。自分の金で食べる初めての食事、絶対これだよ」
「シャングリラもいいけど…やっぱ私は永遠にラーメン食べたい」

  

満足した2人は基地に戻り、感想動画を撮って編集を進める。
「明日のラーメンを懸けた次の対決ですが、内容はまだ秘密。朝早いから心して構えてて」
京子は19時頃にマンションを出た。一方タテルは引き続き部屋に籠り、大石田が帰る頃には眠りについてしまった。

  

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