連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』14杯目(ひょっとこ/有楽町)

グルメすぎる芸人・TATERUと人気アイドルグループ「綱の手引き坂46」のエース・京子。2人共25歳の同い年で、生まれも育ちも東京。
ひょんなことから出会ってしまった2人の、ラーメンと共に育まれる恋のような話。

  

次の店に向かう前に、再び対決の時間。東急プラザ裏の公園にて、アシスタント大石田から次の対決内容が発表される。

  

次は「あっち向いてホイ」です。3本勝負で、先に2回勝った方が勝者となります。
「急にシンプル」
「だね。俺久々だよ」
「私もやんないな。できるかな」

  

「じゃんけんぽん。あっち向いて…アハハハハ!」
タテルは自慢の変顔で、指差す方向を選ぼうとする京子を撹乱した。
「あっち向いて…ホアハハハハ!」
変顔に夢中のタテルは思わず京子の指す方を見てしまった。
「タテルくんバカじゃないの、自分から負けに行ってるハハハ」
「おい勝負にならねぇぞこれ」
その後タテルは一度もじゃんけんに勝つことなく惨敗した。
「変顔で貶めようとした罰、しっかり払ってもらうからね」

  

東京高速の下をくぐるとそこは有楽町。有楽町マリオンはタテル思い出の地である。
「俺さ、高1の時マリオンの上にある朝日ホールで講演したことあるんだ」
「ふーん。何で?」
「KOBUNの国数英全教科で最終教材を修了したから、優秀児の集いで講演した。延べ3000人くらいを前にしてな」
「えぇ、スゴい!やっぱ東大生は違うね」
「そうでしょ。まあそんな奴がなんで売れない芸人してるんだ、ってよく言われるけどね。早く大成しなきゃというプレッシャーがすごい。だから今すぐ売れたい。このチャンネル、盛り上げるぜ!」
タテルの熱い思いに、京子は深く頷いた。

  

交通会館が見えてきた。お昼時であればサラリーマンで賑わう地下の飲食店街の一角に、「ひょっとこ」というラーメン屋がある。ピークタイムを過ぎていたため、幸い行列は回避できた。ゲームに負けたタテルが渋々支払い、食券を購入する。
「私、和風柚子焼豚麺ね。茶飯もつけて」
「おいおい、一番高い頼み方。オゴリだからっていい気になるなよ」
「チャンネル盛り上げたいんでしょ?」
「そ、そうだけどさ…」

  

自腹のタテルは倹しく柚子柳麺。チャーシューは1枚のみだが、赤身は硬め、脂身は柔めというメリハリがあり十分満足した。
世の中にあるラーメンの中でもトップクラスのあっさりさに物足りなさを覚えるのではないかと心配していたが、出汁が効いており、柚子の香りも強い。2人は心落ち着くひと時を過ごした。

  

「美味かったぁ」
「美味しかったね。じゃあ基地に戻ろう」
「今日はもう1軒行きます!」大石田の発言に2人は驚いた。
「へ⁈さすがにお腹いっぱいだよ」
「私もよ」
「そう言うと思って、次の対決は体を動かす系にしました。ついてきて!」

  

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