連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』114杯目(MATSUI/新宿御苑前)

人気女性アイドルグループ「綱の手引き坂46」の元メンバー・京子と、綱の手引き坂→TO-NA特別アンバサダーを務めるグルメ芸人・タテル。2人がラーメンについて語り合うYouTubeチャンネル『僕たちはキョコってる』が人気を博している。今宵、日曜ゴールデンの番組『浜千鳥の神連チャン』に2度目の出演。サビを音程を外さず10曲連続で歌い切ったら200万円が貰える人気企画に挑む。
(各曲のレベルはオマージュ元に準拠。オマージュ元未登場の曲は某まとめWikiの予想曲リストを参照して掲載)

  

ナレーション「神連チャン達成まで残り5曲。続いて、レベル6」

  

〜LEVEL6〜
Wherever you are/ONE OK ROCK
/DISH//
③勿忘/Awesome City Club
④innocent world/Mr.Children
瞳そらさないで/DEEN

京子「じゃあここでデュエットやろうか」
タテル「そうだね。せーの、オーサムシティクラブサンデ!ワスレナ!」

  

大吾「京子ちゃんやってなかった」
ドアノブ「嫌やもんそりゃ」

  

ナレーション「今回から男女タッグモードでは、最低1曲男女デュエットで歌わなければならないルールを導入。どちらか片方でも外せばもちろん即終了、2人の絆を試す厳しいルールである」

  

〜ファミレス店員とスーパーの店長〜
京子「ガスト店員の土志田です」
タテル「スーパーアキダイ社長の秋葉です」
ドアノブ「どういう組み合わせ⁈」
タテル「いやあ最近キャベツが高いね、1玉1000円だってよ」
京子「そんなするんですか⁈まあでも店長も嘆いてましたね、また値上げかよって」
タテル「雨が降らないからキャベツの生産量は減ってしまう。この季節は他のお野菜も美味しいので積極的に食べてほしいですね。あ、あんなところに蕪が!」

  

テンジクネズミ若原「あやめ雪マンだぞ!」
山家「若原さん⁈何してんですか?」

  

〜フリップネタを披露するあやめ雪マン〜
〜仏頂面のタテルと京子〜
大吾「笑えや!」
ドアノブ「相変わらず笑いのセンスがないのうコイツら」
若原「ねむ〜い!」
京子「あどうぞスタジオの隅で寝ていてください」
山家「そういうことちゃうねん!」
タテル「美味しいお野菜をお得に食べて、健康に春を迎えよう!」
ドアノブ「お前が総括すな」

  

ナレーション「そんな激安スーパー社長から、ある重大な発表があるという」
濱内「政界進出?」
山家「違うやろ」

  

———

  

デュエット曲の選曲に悩むタテルと京子。そんなある日の仕事終わり、家で映画『花束のかわりに愛を込めて君に』のテレビ放映を観る。
「俺恋愛モノ観るの苦手なんだよね。他人の恋愛観て何が楽しいのか」
「そんなこと言わないで。面白いからこれ」
「京子が言うなら観るよ。…あ、結構小ネタ多いんだね」
「テンジクネズミさんの単独ライヴだって、めっちゃセンス良い」
「2人の関係性エモい。恋って良いもんだなぁ…」
「すっかりハマってるじゃん。さっき恋愛モノなんてつまらない、って言ったくせに」
「改めるよ」
「でもこれこの後別れちゃうんだな」
「マジかよ⁈それは寂しすぎるって」

  

クライマックスのシーンにて、タテルと京子は感涙した。あんなに幸せだったカップルが別れを選ぶ悲しみに共鳴し、結びに登場した「愛し合っていた頃の証跡」に哀愁を覚える。

  

「これって主題歌何だっけ?」
「主題歌は無いけど、この映画をイメージして作られたのが『勿忘』だったかな」
「そうなんだ!あれって男女混声だっけ?」
「そうじゃない?歌ってみようか」
「何か運命感じる。やってみるか」

  

翌日、新宿御苑前のラーメン店「MATSUI」の列に並んでいた2人。前には25人の並びがあって長時間の待ちを覚悟するが、昨日観た映画の考察を話し合っていれば時間はあっという間に過ぎゆくものである。
「詩的な出逢いをして詩的な同棲をしていた2人が、散文的な社会に毒されて詩を忘れた。なんて悲しいことか」
「タテルくん、ちょっと何言ってるかわからない。サンブンって何?」
「面白みが無くて退屈なこと。楽しみを見出せずにいる、って感じかな」
「理解した」
「出逢った頃の2人はお互い好きなことして暮らしていこうとしていた。だけど現実はそれを許さなかった。普通の仕事を始めたら社会の荒波に揉まれ疲弊して、好きなことに打ち込む余裕がなくなった」
「そうなっちゃうものなのかな?」
「新米の社会人は自己犠牲が当たり前。でも一度きりの人生、自分らしく楽しく暮らしたいよね」
「わかる。私もオーディションに落ち続けて夢を捨てかけていたからすごく共感した」
「俺も最初は綱の手引き坂の人たちと共演することを夢見て芸人をしていた。まさかこんながっつり絡むことになるとはね、不思議な運命だよ」

  

後ろの欧米人が距離を詰めるのも、前の中国人が終始ビデオ通話で大声撒き散らすのも厭わず映画の話をすること1時間。漸く軒先に立つことができた。換気扇の風が吹いてくるのでここが一番寒い。

  

5分程して入店が許され、タテルは特製醤油とチャーシューめし、そして日本酒の食券を購入した。
「欲張っちゃって。また太っちゃうよ」
「せっかく長い時間並んだからさ、満喫したくて」

  

この日の日本酒は、信州上田の山三。150年の歴史があるが2年前まで製造を中止していたという蔵である。歴史を感じるどっしりとした味わいと、若々しいフルーティな味わいを両立している。

  

「店主の方、高級中華の職人さんみたい」
「わからない。タテルくんの世界観は私でさえ捉えきれない」
「へぇ〜、柴崎亭出身なんだ」
「柴崎亭か。ドラマの共演者さんと一緒に行った」
「大喧嘩して別れてた時だよね。俺が食べに行こうとしたら京子がいて、一目散に逃げちゃったよ」
「私呼び止めたんだけど。聞こえてたでしょホントは」
「聞こえてた。でも逃げた、京子が新しい恋を始めたと勘違いしたから」
「何で別れること考えちゃったのかなあの時。今となってはバカバカしく思えてさ」
「それ言ったら俺だって、去年強がって別れたの、悪手だと思った」
「もう絶対別れない。2025年もよろしくね」

  

ラーメンがやってきた。スープを口にすると、動物性中心の旨味から醤油の味わいがピカーンと射す。このスープには純米酒も使われていて、そのせいかはわからないが日本酒との相性も良い。これは只者ではないようだ。
麺は色合いも噛み応えも優しくスルスルと入る。スープの旨味がよく染み込み一体感も抜群である。
鴨肉は少し野生児の名残があるが、完成度の高いスープと驚くほど馴染む。

  

豚肉は他の要素と比べるとインパクトは薄い。同じく豚肉を使ったチャーシュー丼は上品な仕上がりであり、控えめな性格の豚なのかもしれない。

  

「あの2人、どうしたら別れを回避できたのかな」
「俺が思うには、もっと早く決断していれば良かったんじゃないかな」
「決断?」
「あんな投げやりな形でやらざるを得なくなる前に、意を決するべきだったと思うな〜。だからさ、俺らも、ね」
「わかった。年齢的にもそろそろしないとね」

  

———

  

タテル「今回神連チャン達成いたしましたら、私タテルと京子は結婚します!」

  

大吾「勝手にやれ」
ドアノブ「公共の電波使って言うな」
濱内「いいじゃないですか。神連チャンからの結婚、感動の展開ですって」

  

京子「私たちも2回くらいね、別れちゃった時があって。その時お互いなんだかんだすごく寂しかったんですよ。愛し合えているうちに入籍して、家族になりたいと思いました」
タテル「恋愛は生ものですからね。熱いうちに決意しないと」

  

ナレーション「大喧嘩で別れたこともあった。TO-NA騒動で別れを選んだこともあった。でも2人のお互いを想う気持ちは絶えることがない。神連チャン史上初、デュエットで歌うレベル6、果たして?」

  

ドアノブ「もしここで失敗したら破局?」
大吾「破局だろうが結婚だろうが神連チャンを利用すな」
♤何かを求めれば…
濱内「あ、ここはタテルくんだけか」
山家「この後女声パート入ってくるはず」

  

♤♡春の風を待つあの花のように…
濱内「有村架純と菅田将暉に見えてきた」
ドアノブ「ちょけるな!ファミレス店員とアキダイの社長や」
大吾「変な画。町内会のカラオケやん」

  

♤♡咲かせるさ 愛の花を 花束を
タテル・京子「あ〜良かった!!!」
濱内「ナイス共同作業!」
京子「意外と高かった〜!何とか歌いきれた!」
タテル「大吾さん、ドアノブさん!神連チャンしたらご祝儀ください!」
京子「おかまたちさんは任意でお願いします」
大吾・ドアノブ「嫌じゃ」

  

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