連続百名店小説『東京ラーメンストーリー』108杯目(つけ麺 和/竹ノ塚)

人気女性アイドルグループ「綱の手引き坂46」の元メンバー・京子と、綱の手引き坂→TO-NA特別アンバサダーを務めるグルメ芸人・タテル。2人がラーメンについて語り合うYouTubeチャンネル『僕たちはキョコってる』が人気を博している。
かねてよりバス旅に憧れていたタテルの夢を叶えようと、バスvs鉄道対決旅のオマージュ企画をYouTubeでやることになった。バスチームのタテルと鉄道チームの京子が都内の最新人気ラーメン4軒を巡りながら対決を繰り広げている。道中各チームにラーメン通芸人が1名ずつ加わり、鉄道チームにはなんと大物芸人「水行末の風来末」が参加している。

  

〜③ご恩→④和〜

  

最後のチェックポイントであるつけ麺和では、ゴール地点の発表が行われる。加えて、和に先着したチームがタクシー代1000円を獲得できるルールが告げられた。

  

「タクシー代欲しい!駅から離れたところがゴールだとしたら絶対タクシー乗りたい」
遅れる鉄道チームは先を急ぎたいが、野方駅から竹ノ塚駅まで直線的には進めず厄介な乗り継ぎを強いられる。とりあえず高田馬場まで出て、JRまたはメトロを使って北千住に向かう必要がある。
「地下鉄はちょっと遠回りな気がするんですよね。山手線でヒグレザトまで行って…」
「京子ちゃん京子ちゃん、それ『にっぽり』って読むんだよ」
「えそうなんですか。全然知らなかった、またタテルくんにバカにされる…」
「いいじゃん、それが京子ちゃんらしさなんだから」
「地下に潜る時間ももったいない。JRで行きましょう」

  

バスチームはタテルの目論見通り栗原町で下車。竹の塚へ繋がる尾竹橋通りに入っていった。すると間も無くバス停を発見し、咄嗟に持っていた鞄で時刻表を隠す。
「太川さんがやるやつやれた!しかも地元で!竹ノ塚駅行きありますね。時刻は…全然無いぞ!」
「やっちゃった?」
「14:07は行ったばっかだ!15時台は無い!16時台も無い!…19:57まで無い!」

  

バスチームの快進撃は遂に果てた。
「竹の塚まで歩いて行きましょう。30分かからないと思います」
「俺はいくらでも歩くよ」
「ありがとうございます…」

  

するとタテルは歩調を速めた。
「これも太川さんスタイルなので!少しでも速く歩いて先着取りましょう」
「だからって速すぎやしませんか?」
「じゃあ先行ってますね。東武バスの路線図もらってきます!」
「お、おう…」
「店の場所わかりますか?」
「それは大丈夫だと思う!」
「じゃあお先に!」

  

鉄道チームが竹ノ塚駅に到着した。
「えーっと東口を出て」
「京子ちゃん逆!西口だよ」
「えーっと…」
「西友の裏手だね。焦りたくなるけど落ち着こう」

  

閉店時間の14:30を過ぎていたが、この企画のためだけに店を開けてくれていた。待ちなくすんなり入店する。
「嘘でしょ、タテルくんがいる!しかももう食べてるし…」
「遅かったね京子。どうせまた乗り換え迷ったんでしょ」
「迷ってないから!めっちゃスムーズ!」
「構ってる暇ないから。早く食べなさい」

  

余裕をこいているタテルであったが、不安が無い訳ではない。ゴール地点までの乗り継ぎが怠くなりそうだからである。
「ゴール地点は水元公園中央広場。鉄道空白地帯で有名な場所ではありますが、バスで東に進むのも一筋縄ではなさそうです」
「タクシー代1000円をどう活用するかだね」
「東武バスだけで行くなら、青井六丁目、中川四丁目、と乗り継いで水元神社前バス停まで行って他にバスがあるか。無ければタクシーですかね。ちょっと乗り継ぎが多くてタイムロスが不安ですけど」
「仮にこの中川からタクシー乗るとしたら?1000円ならまあまあ近づけそうだけど」
「それアリですね。足りない分は脚力で勝負しましょう!」

  

方策が見えたところで最後の課題・特製つけ麺がやってきた。いわゆる濃厚つけ麺の類で、鶏や豚といった動物性のドロっとした味が主体であるが、キレが良いから覚悟していたほど食べ疲れはしない。

  

豚チャーシューは特徴があまり無い一方、鶏チャーシューは生姜風味が効いていて美味しい。海苔は色味からしてひ弱に見えるが、スープにつけると良い感じにほぐれる。
「にんにくを入れるとスープのコクが引き立ちますね」
「でしょ?これがまた美味いのよ。葱は入れないの?」
「スープ割りしてから入れますね。少し食べてみよう…あまり辛み出てないですね。青みが強いかも」

  

まだ料理の出てきていない鉄道チームを尻目にそそくさと退店するバスチーム。ちょうど綾瀬行きのバスが控えていて急いで乗り込む。

  

「水元公園ってどこだ?…駅からすごく遠い」
「タクシー代取れなかったの痛いなぁ」
「申し訳ないです風来末さん」
「謝らなくていいよ全然。それよりゴールへの行き方詰めよう」
「このカネマチ(?)ってところまで行って、ひたすら歩きですね」
「体が重たいな。でも歩き不可避の旅だからね、覚悟はしておきますよ」

  

バスチームに遅れること20分、鉄道チームも漸くゴールの水元公園に向け出発した。北千住駅までは10分で行ける。
「常磐線は改札出て…」
「京子ちゃん、千代田線のところ金町方面各駅停車って書いてあるけど」
「あそっか、各駅停車は地下からでしたね。危ない危ない」

  

一方バスチームのタテルは方策を推敲する、
「青井から中川は環七を走るんですけど、極端に本数が少なかった記憶があります。ちょっと運転手さんに聞いてみますね」
「青井から亀有方面はバス終わってますね。葛飾車庫に乗り継ぐには綾瀬まで乗っていただいた方が確実です」

  

運転手の助言を受け、綾瀬五丁目で下車する。
「乗り継ぎは…10分以上ありますね」
「10分かぁ!何とも言えない」
「ソワソワしますよね。今のうちにタクシー呼んでおきましょう。本家に倣えばスタッフさん、迎車料金は1000円に含まれませんよね?…よし、手配します!」

  

金町駅に降り立った鉄道チーム。
「風来末さん、ちょっと速足になりますけど大丈夫ですか?」
「もちろん大丈夫さ」
「タテルくん普段から速歩きで、私もそれについてってるので結構速いですよ」
「勝つためには必要なことだからね。ついていくよ!」
「ありがとうございます!」

  

葛飾車庫のバス停に降りたバスチームも、タクシーに乗り込み最終仕上げに入る。
「視聴者の皆さんは絶対バスが負けると思ってる。でもバス旅マスターは奇跡を起こす力を持っている。俺は太川さんの後を継ぐバス旅マスターだ。見てろよみんな、奇跡はもうすぐそこだ!」

  

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