連続百名店小説『ビリヤニ道』३:魚介ビリヤニを試してみる(SEABIRD COLONY/銀座)

人気女性アイドルグループ・綱の手引き坂46のメンバーであるナノは、在日ビリヤニ協会会長ジャンプールによって「ビリヤニ大使」に任命された。綱の手引き坂アンバサダーのタテルと協力しながら、ビリヤニの布教と美味しいビリヤニ作りに勤しむ。

  

キッチンに連れて来られた2人。
「そこにある服着てください」
「あ、はい…」
「赤いスカーフ。ビストロMAPSの衣装みたいです」
「タクキムになった気分だ。ちょ待てよ」
「はいはい料理しますよ〜。まずはビリヤニの基本的な作り方から!」

  

①まず、バスマティライスを2時間程水に浸します。これは事前に我々の方でやっておきました。
②ローリエと共にバスマティを茹でます。茹で終わったバスマティは水気をよく切ります。
「バスマティライスは日本のお米と違い香りが特徴的です。これだけは譲れません」
③具材を準備しましょう。チキン、野菜をヨーグルトやスパイスと共に混ぜ合わせ、カレーのようなものを作り上げます。
「スパイスは我々自慢のミックススパイスを使ってください。辛さを抑えたかったら仰ってください」
「あ、我々は辛くても問題ございません」
「日本人に合わせるとはいえ、本場の味は最大限活かしたいので」
④バスマティと具材を鍋に交互に入れ、鍋を密閉して蒸し上げます。この調理法のことを「ダム」と言います。
⑤出来上がり。この時絶対に混ぜないでください。米の色の違い、それは味の違いでもあります。それを楽しむのがビリヤニの醍醐味です。

  

2人が作り上げたビリヤニを皆で試食する。
「あ、美味しい美味しい。初めてにしては上出来だよ」
「ありがとうございます!」
「ビリヤニは元々お祝いの料理です。こだわりは色々ありますが、食べ手の喜ぶ顔を思い浮かべること、これは絶対忘れないで!」
「はい!」

  

「さて、今回のゴールは究極のビリヤニを作って美食家の方に認めてもらうことです。ここで満足している暇はありません」
「そうですね…」
「例えばどんなヴァリエーションが考えられますか?」タテルが質問する。
「チキンの代わりに魚を入れる、というのもアリです」
「日本人はお魚好きですもんね。私のサインも魚をモチーフにしています」

  

色紙にサインするナノ。
「素晴らしい!会長室の棚に飾っておこう」
「ありがとうございます!」
「今回リストアップした店だと、銀座のシーバードが魚のビリヤニやってますね。予約して行ってみましょう」

  

銀座五丁目のソニー通り。昨今話題の八代目義兵衛の隣にある雑居ビルの3階にその店はある。銀座のイメージとは裏腹に猥雑とした雰囲気であり不安になる2人。
「写真ではスタイリッシュだけど、実際はちょっとごちゃごちゃしてる…」
「でも味は良いと思いますよ」

  

この日予約したのは休日の海鮮ビリヤニランチ。まずラッサムが供される。単体だと酸味が強すぎるが、食中に飲めば丁度良い味でスルッと入る。

  

本題のビリヤニ。ジャンプールの言っていた通り、ライスの香り高さにまず目を見張る。
入っている魚は鰆。じっくり火を入れているからふっくらしており、旬で脂のりも良い。だがパクチー、そして休日限定のいくらトッピングが米と魚の良さをぼかしてしまっている。

  

「ああ、やっぱビールが欲しい。頼んじゃおう」
「審査員の方々もビール欲しがりそうですね」
「美味しいビール選びも頑張ろう。肝臓壊さない程度に」

  

ビリヤニの相棒ライタはもろヨーグルト。甘みを足した方が日本人向けになると考える2人。
「食感のあるもの。例えばにんじん…」
「にんじん〜炒めてにんじん!」
「炒めたにんじん?キャロットラペ的な?」
「ちょっと違いますね。ごめんなさい」
「やっぱ果物が良いかも」

  

その他脇役について、猪肉のカレーは、コクこそ標準的であるが肉の臭みがあまりなく食べやすい。

  

インドの野菜炒め・ポリヤル。小休止に丁度良いじゃがいもである。

  

アチャールは山菜祭りだが、山菜のもつ雰囲気とアチャールの辛みがあまりにもしっくり来ない。ゆで卵も至って普通である。

  

「鰆もちょっと脂多すぎるかな…」
「でも今日はおかずが多かったので、ビリヤニ単体なら丁度良いかもしれません」

  

帰り際、近くにある熊本県のアンテナショップに立ち寄る2人。
「あれ、あの人見たことあるぞ」
「某熊本出身人気アイドルじゃないですか」
「確かにそうだった…」

  

「初めまして。綱の手引き坂のナノです」
「ナノちゃん!観てますよよく」
「嬉しいです!あそうだ、ひとつ聞きたいことありまして」
「はい」
「熊本で有名な農産物ってあります?」
「ともだちができた…」
「すいかの名産地!スイカですか!」
「おっ、確かにスイカは合いそう!」
「スイカを使って何かするんですか?」
「実は私達今ビリヤニを究めておりまして」
「ビリヤニ!最近流行り始めてますよね」
「そうなんです。そのお口直しとして、ライタというヨーグルトみたいな食べ物がありまして、そこにスイカ入れたら良さそうだと思いました」
「へぇ〜、あんまよくわからないけど…」
「良かったら名刺受け取ってください!私達ビリヤニ大使の活動、応援していただきたいです!」
「それはそれは、もちろん応援しますよ!」
「ありがとうございます!」
「熊本のスイカ、活用していただけると嬉しいです!」

  

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