連続百名店小説『クイズアイドル 永遠に』第8問:最終試練のクイズしようぜ!(すば/清水五条)

人気女性アイドルグループ・TO-NAにおけるクイズスターであるコノが卒業を発表した。その卒業制作として、過去2回挑んできたクイズ旅「プレッシャーSTEADY」を地元京都で撮影する。コノと共に挑むのは、東大卒プロデューサーのタテル、そしてTO-NAのニュークイズスター候補であるカコ、レジェ、ニコ。果たして一行はノルマをクリアして日本一の中国料理にありつくことができるのか。

  

京大志望のアキは冬季講習があるためここで離脱。再び5人となった一行に通達がやってきた。

  

前半の劣勢を跳ね除け、見事6ポイントまで這い上がってきました。おめでとうございます。しかし最後の1セットを易々とクリアし、幅広い分野へのご利益がある福禄寿ストラップを獲得して日本一の中国料理にありつく、なんてことはさせません。
ここからは全て○×問題を出題します。一般人の方々を集める必要はありません。5人で2周し、10問正解すればクリア。1問でも間違えたら失敗となります。

  

「常識クイズの範囲内で外すとネット民のおもちゃにされるプレッシャー、④辺りから急に難度が上がり襲い来る不安。○×はマジで怖い」
「最後の試練ですね」

  

さらに、ここからは訪れる百名店もくじ引きで決定する。百名店から出題場所となる名所へ、そしてまた次の百名店へ、時間のとられる移動が増える虞がある。ここは少しでも急いで、1問でも多くチャンスを増やしたいところである。

  

最初に指定された百名店は、清水五条駅最寄りの立ち食い蕎麦屋である。大徳寺からはバス1本で行けるものの距離はある。
「逆にすごいよな。どこ行くにしてもバスが繋がるの」
「京都の自慢のひとつですから」
「東京だと地下鉄かJRですもんね」
「バスの運転手さん、人手足りているのでしょうか」
「全然足りてないみたいよ」
「ですよね」
「この動画でもアピってこうぜ。京都でバス運転してみませんか、って」
「良いですね。現状知ってもらって」
「外国人も清水から祇園辺りに集中していてそれ以外はそこまで多くない、とか」
「思ったよりオーバーツーリズムは感じないですよね。行く場所が多少マニアックなのもあるとは思いますが」
「大徳寺とか行かないもんね。言っちゃ悪いけど地味ではあるし」

  

大徳寺から40分強かけて蕎麦屋に到着。伝統渦巻く京都において革新的な蕎麦を提供する店であり常時行列ができている。あの寺門ジモンも通っているという店であり、元も子もないことを言うと東京の渋谷にも店舗がある。立ち食いではあるが、席は大きなテーブル2つのみであり、一度に入れる人数は頑張って16人。回転は意外と良くなく、行列の長さの割には待つと思った方が良い。慣用句帳を読んだり世界地図を眺めたりしながら1時間弱待つ。
*筆者は日曜の14時過ぎに訪れ、十数人の列で30分強待ちでした。

  

ご飯ものには牛丼や青のりバターの出汁ごはんがあり、立ち食い蕎麦屋でありながら洒落た酒もラインナップされているし、隣の建物には系列店のカフェバーもあってハシゴしたいところであるが、時間の節約、そして高級中華のために胃袋を空けておきたいという事情があるため蕎麦だけで我慢する。注文と会計を済ませ、番号札の番号を呼ばれたら自分で蕎麦を受け取る。

  

肉そばを受け取ったタテルは器を手元に置こうとするが、テーブルは中央が地味に窪んでおり、傾斜の途中に器が立つことになって中身が溢れ出してしまいそうになる。器を持って食べれば良い話であるが、タテルのような猫手には厳しいものがある。結局おかしな体勢になりながら下品に啜る他なかった。

  

しかし料理自体は真に革新的で美味いものであった。蕎麦だけ食べてみると仄かに蕎麦の香りが残っている。具材に溢れたかけそばの中ではマスキングされがちな蕎麦本来の香りが確とあるのだ。鰹が香る出汁だが、関東のような濃い返しの効いたものとは違い、しみじみと、でも確かに旨味を感じる。たっぷりのお肉にもその優しさが染みていて、温玉の黄身がコクを足しつつ全体を纏める。一行はさらさらと小腹を満たした。

  

「時間使っちゃった!早く出題場所行きましょう!」
「近いところでお願いします!祇園とか清水寺とか……」

  

選ばれたのは蹴上インクラインであった。ここからバスで30分。何とも言えない距離感である。
「何ですかねインクラインって?」
「わからない」
「inclineは『傾斜』という意味ですけどね」
「坂なのかな。南禅寺が近いね」
「南禅寺も行きたいですね。湯豆腐であったか〜くなりたい」
「南禅寺で湯豆腐食うのも俺の夢の1つだったなあ。でも百名店から外れるから叶わず」
「プライベートで来ましょう」
「そうだな。コノにガイドしてもらおうかな、地元民とっておきの店を。でも忙しいか」
「それは未だわかりませんよ」
「忙しくなってほしいねコノには。トークが真っ直ぐ面白くて、人の良さも滲み出ている。一緒に仕事する人達を楽しませて癒してくれる存在、喉から手が出るくらい欲しいだろうな皆」
「嬉しいこと言ってくださりますね……」
「泣くのは早いぞ。コノの未来のためにも、最後の試練は落としたくない。よっしゃ、気を引き締めるぞ」

  

蹴上インクラインに到着。ここはかつて、琵琶湖の水を京都に運ぶための水路「琵琶湖疎水」の一部であった。36mの高低差はそのままだと船が通行できないためインクラインという傾斜鉄道を敷いていた。全長582m、建設当時は世界最長の傾斜鉄道であった。舟運の衰退により戦後に使用停止されたが、レールが復元され観光名所として人気となっている。2025年8月には琵琶湖疏水施設の構成資産として国宝に認定された。

  

復元されたレールのため、その上を歩いても松本伊代や早見優のように咎められることはない。最上部まで登れば問題への挑戦権獲得である。レールの上で平均台みたくバランスを取ってみたり(難しすぎた)、大股で1歩1枚石畳を乗り移ってみたりしながら無邪気に登っていればあっという間に最上部である。桜の時期ともなれば圧巻の景色が現前するものだが、末枯れの木々の中であっても、遺構というコンテクストもあるから趣深い。

  

「DIVerse時代の曲を思い出すね」
「車輪の下に泣く君は、ですか?」
「よく知ってるねニコちゃん。アルバム曲だよ」
「当たり前じゃないですか。ものすごく沁みるんですよあの曲」
「だよな。俺はDIVerseの音ゲーで知ったけど、泣けるね」
「卒コンで歌いましょう。バックにここでの写真映して」
「いいじゃん。Stand by Meみたいな感じで撮ろう」

  

記念写真が撮れたところでクイズタイムとする。解答順はカコ→レジェ→ニコ→タテル→コノとした。

  

〜日本地理○×クイズ〜

①東京ディズニーリゾートは東京都にある
「何度ネタにされたことか。千葉県なので×です」
②日本には県が40個以上ある
「47とどうふけん。都、道が1ずつで府が2だからぁ、ま〜る」
③日本三景のひとつ天橋立は京都府にある
「これはもう○」
④スキージャンプ競技場で有名な白馬村は長野県にある
「去年4度も長野県に行ったからね。○っすよ」

  

⑤五稜郭は札幌市にある
「待って、ヤバいかも。五稜郭って札幌だよね。あれ違う?え?」
「周りの皆さんはノーリアクションでお願いします」
「札幌……じゃないのか。×!」
「ふぅ、危ないぜ。函館だってば」

  

1周目を何とか乗り切り、カコに戻って2周目。
⑥日本三名園とは偕楽園、六義園、兼六園のことである
「やばい全然知らない。なんか『六』の主張が激しい。わざとやってるのかな……×」
「よっしゃよっしゃ。六義園じゃなくて後楽園。それも東京ドームのとこじゃなくて岡山の」

  

⑦日本で最も距離の長い高速道路は東名高速である
「え〜?東名って長いよね。長い長い。○」

  

不正解。最終試練第1セットはレジェの手により失敗に終わった。
「ごめんなさ〜い!」
「私も東名だと思ってました」
「東北道が圧倒的に長い。川口から青森だもん」
「タテルさんその通り」
「仕方ない。横浜から出たことなかったもんなレジェは」
「本当にごめんなさい……」

  

折角なので残りの問題もやってみる。

  

⑧四国で最も人口の多い県は香川県である
「小さいけど人口は多かったり。○」
「残念。愛媛の方が多いです」

  

⑨今日(2026/1/5)現在、駅名に 「旧」がつく駅が実在する
「旧白滝が確か廃止されて無くなったはず。×」
「残念!神戸市に旧居留地・大丸前という駅があります!」
「知識が中途半端すぎた……」

  

⑩北海道は面積の大きい島全世界ランキングベスト10に入っている
「北海道って意外と大きいですもんね。だから○?」
「流石にそこまで大きくない。本州なら○なんですけどね」
という風に、後半がズタボロすぎて失敗する運命であった。

  

「よし切り替えよう。わかっただろ、○×の厳しさ」
「そうですね。1回でも多くやりたい」
「責任を1人に擦りつける結果にならなくて良かったよ。切り替え切り替え!」

  

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