連続百名店小説『クイズアイドル 永遠に』第6問:20歳の祝いにクイズしようぜ!(ロッキングチェア/京都河原町)

人気女性アイドルグループ・TO-NAにおけるクイズスターであるコノが卒業を発表した。その卒業制作として、過去2回挑んできたクイズ旅「プレッシャーSTEADY」を地元京都で撮影する。コノと共に挑むのは、東大卒プロデューサーのタテル、そしてTO-NAのニュークイズスター候補であるカコ、レジェ、ニコ。果たして一行はノルマをクリアして日本一の中国料理にありつくことができるのか。

  

ここで話を初日夜に戻す。日本料理を堪能した一行は、明日の出題分を稼ぐためバーを訪れることにした。一行の中で最年少のレジェが元日をもって20歳になったことにより、全員が合法的に酒を飲めるようになっていた。

  

京都はバーの街である。食べログ百名店に選ばれているバーは11軒と、大阪や横浜よりも多い。その中でも星が高く、かつ今の時間でも空いている店を選び、電話で空きがあることを確認して押さえてもらった。少し暗くて混沌とした路地の、バーとは思えない町家みたいな構えの建物が目当ての店である。京都という土地柄か外国人の客も多く、ウインナーを摘みながら厚岸や70年代80年代ウイスキーを嗜んで1人で2万円強支払った強者もいた。
*劇中では5人で訪れていますが、実際のロッキングチェアさんは4人以下での来店というルールです。5人以上座れるテーブルが恐らくありません。

  

ロッキングチェアのある窓際の席は埋まっていたが、テーブル席を確保してもらっていたためそこに座る。いつも東京ではメンバーのクラゲとクラシックなカクテルを嗜み俳句を詠んでいるタテルであるが、京都の店に来たからにはそこでしか飲めないオリジナルカクテルを味わうこととする。

  

そして20歳になって3日しか経っていないレジェ。誕生日のその日にシャンパーニュを飲んでみて、いける口であったため今宵のバーデビューとなった。
「初めてのバーなら、フルーツカクテルなんか良いかもね」
「大好きですフルーツ。苺のカクテルにしようかな」
「俺は蜜柑にしよう。ポートワインに京都の日本酒まで入って、これ絶対に飲んでおいた方が良いね」

  

旬の蜜柑に、世にも珍しいロゼのポートワインを合わせたカクテル。蜜柑自体が良質なものである上、ポートワインが刺さることにより深みが出てくる。さらに伏見の日本酒「富翁」が加わり優しく甘みを縁取る。それぞれの材料が存在意義を持って1杯を織りなす素晴らしいカクテルである。

  

「レジェちゃん、20歳おめでとう!」
乾杯に合わせ、コノが代表してレジェにプレゼントと色紙を贈呈した。
「嬉しい〜、ありがとうございます!こんな良いバーでお祝いしてもらえるなんて」
「レジェには大人びた空間が似合うぜ」
「飲み方も上品」
「一口の量がちゃんと大人。カコを見てみなさい、もう半分以上飲み干してる」
「速っ。さすが酒豪」
「やめてくださいよコノさん」
「レジェを見習って、ゆっくり飲みなさい。俺のなんて、ポートワインの深みがあるからゆっくり味わいたいものだ」

  

コノはにゅーじやの京都限定ハンドクリーム、カコはネイキのレッグウォーマー、ニコはビックマックの新春限定デザインクッキー缶をプレゼント。
「タテルさん……はいつもくれないですもんね」
「何あげていいかわかんないとか、誕生日に物あげる必然性がないとか」
「気が利かないですよね」
「だから別れるんですよ京子さんと」
「ちょ待て。ちゃんと用意してある。でも間に合ってないんだ、明後日にはTO-NAハウスに届く」
「何が来るんですか?」
「オーダーメイドの何か、とだけ言っておこう」
「本当だとしたら楽しみ〜」
「今年の目標は全員に誕プレを渡すことだ。絶対喜ばせてやる、文句は言わせないぞ」

  

日本酒を使ったカクテルが自慢、と受け取ったタテルは続いて花あかりを注文。新春らしいものを、とマスターが苦心して編み出したオリジナルカクテルとのことである。純米吟醸の日本酒を骨格として、菫の香りも入ったサクラヴェルモットでフローラルに。さらにエルダーフラワーリキュールがマスカット様の甘みを加え、ビターズで引き締める。

  

レジェはクレオパトラという名のカクテルを味わっていた。ここまでプレステ本編では飄々と難問を解いていたが、日本料理店でのクイズで最下位に沈み、翌朝氷水の刑を喰らうことになってしまったことを悔しく思っていた。表ではぶりっ子やキュン台詞などでファンを魅了する明るい印象のあるレジェだが、裏ではとてもクールで真面目。夜な夜なパフォーマンスの反省をして、気付けば朝になっていた、ということもざらである。
「どうして2択を外してしまうのでしょう……」
「それは永遠のテーマだよな。当たる確率は50%なはずなのに間違えてばかり」
「嫌になっちゃいます」
「ならいっそのこと、2択が当たる確率は5%だと思い込んでしまおう。50%は高すぎて要らぬ期待をしてしまう。5%なら期待しない。当たったらラッキー、ってなる。その方が気楽だ」
「思い切り良いですよねタテルさん。私なんてずっと反省しちゃう」
「それも悪いことじゃない。止めることはない。ただ考えすぎると間違った選択肢を選んでしまいがちだ」
「考えすぎると間違える……確かにそうです!」
「考えすぎないことにより去年末俺は良い結果を得た。レジェにも勧めるよ、少しの『テキトー』さを」

  

タテルはさらりとウイスキーを注文した。京都周辺のウイスキーならやっぱ山崎だろう、でもそれならGINZA SIXでいつでも飲めるだろう、とか迷い出す自分を無視して、新年に相応しい特別ボトル・日の丸ウイスキー百世不磨を選んだ。ホワイトポートのトニック割りを頼んだレジェと改めて乾杯してから飲む。

  


シェリーの中でもクリームシェリーという甘味を足したものの樽で熟成させたウイスキー。シェリー樽熟成らしいレーズンっぽい甘みに、クリーミーな味わいがどかんと載る。それはまるでザッハトルテや今どきのパンケーキのような光景。唯一無二の力強いウイスキーである。
「間違えなかったようだな俺」
「私もです。白いポートワインなんて珍しいですよね」
「ああ。ポートワインに白もロゼも無い赤だけだ、と思ってた。楽しんでくれたようで何よりだ。少しは元気出たか」
「元気出ましたよ〜。楽しむことを忘れない。頭の回転の速さで、み〜んなのことメロメロにさせます!」
「レジェは酒入っても変わらないな。何だよこのあざとさ。あざと可愛いいと酒って鉄板の組み合わせじゃん。おまけに頭脳派ときた。俺がいちばん好きな…」

  

「タテルさん、もう1軒行きますか?」
「あ、そ、そうだな。ごめんコノ、放置してしまった」
「私の卒業企画ですよ。もっと構ってください」
「コノの口からそういう色仕掛けの言葉出てくるの珍しい」
「色仕掛けじゃないです。次の店では回していいですか?」
「了解。回してくれ」

  

——

  

コノ家での一幕に話を戻そう。レジェは氷水から解放された足を懸命に温めていた。得意ジャンルとはいえ⑩を当てた喜びを噛み締める。クイズスターのニコも大絶賛であった。
「よくご存知でしたね。かっこよかったです!」
「京都だからお寺や神社の問題が出るかな、と思って予習したんだ」
「それでよく一宮市の一宮を」
「一宮市の一宮、面白いかなと思って」
「対策がお上手です。私も見習わないと」
「学力テストでもマグロの学名答えてたもんな」
「学名調べるの好きなんです〜」
「普通調べない。只者じゃねえよレジェは」

  

一方のニコも、コノの従姉妹Bから羨望の眼差しを注がれる。高校時代はクイズ界隈においてスター的存在であったニコを、Bも当然認知していた。
「問題が出る前に押して正解したのが特にかっこよくて」
「あれね。自分でもよく思い切ったと思ってる」
「前書きだけで時事問題だと判断して仙台育英と答えた。その度胸を見てから、すっかりニコさんに首っ丈です」
「ありがとう。嬉しいよ、私に憧れてもらえるなんて」

  

そんなBは葛藤を抱いていた。高校生クイズでは勝てても、村内のクイズ大会では勝ち上がることができないでいた。大衆に迎合せず地道に知識を積み上げる猛者を見て、自分は本当はそんな強くないんだ、と嘆く日々。その影響は受験勉強にも及び、京大模試ではB判定で安定していたがここ最近はD寄りのC判定に甘んじていると云う。
「そんな、全然弱くないよ。自分を信じな」
「でも……」

  

見かねたタテルがひとつ提案をする。
「スタッフさん、Bをクイズ旅にお供してもよろしいでしょうか?」
「あ、いいですよ」
「うお、まさかの二つ返事。どうだB、一緒にやるか?」
「いやあ、ちょっと……」
「今のまま劣等感を抱いても状況は変わらない。成功でも失敗でも構わない、挑戦をしてみたらどうだ」
「……はい、やってみます」

  

次の出題場所は京都タワーに決定した。Bを連れて京都駅に向かう一行。仕事始めで忙しい人も多かったが何とか4人を集め出題にこぎつける。上級問題ということで、集めた4名を先頭に配置し、その後はカコ→レジェ→ニコ→B→タテル→コノ、という順にした。

  

ドボン問題:47都道府県全てには無いものを選べ
空港(定期旅客便がある)
電車が走る路線
高速道路のサービスエリア
百貨店
餃子の王将
動物園(日本動物園水族館協会加盟)
水族館(日本動物園水族館協会加盟)
五輪金メダリストの輩出(団体含む)
乃木坂46・櫻坂46・日向坂46のメンバーの輩出
一級河川
標高500m以上の山

「悩ましいぞこれ」
「大丈夫、大丈夫……」

  

一般人ゾーンで空港、動物園、坂、王将が開く。
「いやあ怖いな。うぅ……山」
「わかんな〜い。でもやっぱり水族館」

  

憧れの的ニコは自信満々で百貨店を開ける。山形にのみ無いという、薄氷の選択肢である。
そしてBの順番。先程まで不安がっていたが、安堵の表情で電車を選択。徳島県に電車が走っていないことを見事見抜いていた。
「すごいなB!よく当てた!」

  

しかし9番手タテルは不安に駆られていた。
「SAって東京に無いよな。いや、不安だな。中央道にあったかな。あ〜わかんないや、金メダリスト!」

  

タテルはドボンを引いてしまった。上級第2セットは失敗に終わる。
「やっちゃった!SAで良かったんだ……」
「確か京都にも無かったような」
「そうです。タテルさんコノさんの言う通り、東京と京都、そして長崎にもSAはありません」
「Bの好プレー潰したぁ!何で自分を信じなかったんだ……」

  

その他選択肢
空港→神奈川・京都など、王将→北東北など、水族館→奈良・佐賀、動物園→山形・佐賀など、河川→沖縄、山→千葉

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