連続百名店小説『クイズアイドル 永遠に』第3問:くよくよしてる暇あったらクイズしようぜ!(くりや/二条城前)

人気女性アイドルグループ・TO-NAにおけるクイズスターであるコノが卒業を発表した。その卒業制作として、過去2回挑んできたクイズ旅「プレッシャーSTEADY」を地元京都で撮影する。コノと共に挑むのは、東大卒プロデューサーのタテル、そしてTO-NAのニュークイズスター候補であるカコ、レジェ、ニコ。果たして一行はノルマをクリアして日本一の中国料理にありつくことができるのか。

  

「まだ1つ落としただけだ。切り替えようぜ」
「でももう14時ですよ。4時間経ってるのに未だ2セット!」
「思ったよりペース悪いですね」
「だからこそ引きずっちゃ駄目なんだよ。早いとこ栗菓子食べて、次の出題場所行こう」

  

東福寺駐車場に停めてあったロケバスに移動して栗菓子を食べる。本当は栗おはぎが秋冬の名物であり購入したいところであったが、正月は販売を休止しているとのことで、代わりに栗型の最中と栗納豆を購入した。

  

最中の内部は栗餡を期待していたが、実際は小豆餡の中に微塵切りにした栗の甘露煮が鏤められている。甘露煮の栗は少しクセがあるものだが、それを上手くコントロールし栗の味わいを上手く溶け込ませている。餡も力強く、素朴ながら京都の和菓子の底力をみる。

  

栗を強く感じたい人には栗納豆を薦める。セット売りのみでの販売に見えるがバラ売りもしている(259円/粒)。こちらも甘露煮のクセが、グラサージュの蜜の甘さにより掻き消されて、栗本来の味わいが映える菓子となっている。

  

そして次の目的地は下鴨神社に決定した。東福寺からはバスを乗り継ぐ必要がある。
「京阪電車に乗れれば出町柳から歩けるけど、ダメなんですよね」
「ダメです」
「少しでも早く行きたいところだけど……くぅ!」

  

高島屋があり人でごった返す四条河原町にて乗り換え、河原町通を北上するバスで下鴨神社へ急行する。
「下鴨神社の中の甘味処が百名店だな。どれくらい混んでるのか」
「先行って番とった方が良いですかね」
「そうなると糺の森バス停で降りることになるな。……ニコ、少しは元気になったか。さっきからずっとどんよりして」
「全然貢献できてないですよね私……」

  

ニコはTO-NA屈指の頭脳派である。クイズ番組『西大后』の高校生大会でチームを準優勝に導いた際は、その美貌も相まって大バズり。名門大学に進学した後TO-NAに加入すると、クイズ業界からの注目を浴びるようになっていた。しかしグループ内での学力テストでは、それなりに優秀な成績ではあったのだが、コノ・カコ・レジェの後塵を拝していた。
「エゴサしたら、大したことねぇなこの女、とか言われてて。それが本当に悔しくて」
「酷いこと言うやっちゃ。何を期待してんだか」
「ちょっとタテルさん⁈その言い方もひど…」
「話は最後まで。クイズって難しいんだよ。問われる知識の幅が広すぎて、どれだけ対策しても負ける時は負けるんだ。『私でもわかるのに答えられないんだ、クイズ王の名が廃るね』なんて茶の間のお気楽さんは宣うけどさ、そんな展開無い方がおかしいから。全知全能の人間なんて居ない、失敗したら学べば良いだけの話。それを解らないでマウント取る奴は愚かだ、相手にする価値が無い」

  

口こそ悪いが説得力のあるタテルのおことばに、ニコは少しだけ勇気が湧いた。
「答えられないことは悔しい。でも落ち込んではいけない。のびしろだと思って受け止めます!」
「ニコにはいつもニコニコしてもらいたい。ニコだけに」
「上手くはないですね」
「でも大事なことですよね」
「新メンバーの想いを背負って、コノさんの門出を華々しいものにしてみせます!」
「その意気だ」

  

糺の森バス停にて下車し一目散に下鴨神社内の甘味処へと向かう。タテルらはテーブルサービスの店を想像していたのだが、実際は注文と会計を同じタイミングで済ませ、その場で提供を待って好きな席に座るフードコートスタイルであった。寒さを厭わなければ外にもたくさん席はあるため、サクッと堪能して帰れそうである。懸念をひとつ払拭して先に神社を参拝し、クイズが終わり次第訪れることとする。

  

葵祭の主要舞台としても知られる下鴨神社は国内外から多くの観光客が訪れていて、夕刻であっても駐車場は満車となっていた。

  

東西本殿は工事中だったようで詳しく鑑賞することはできず、生年の干支に対応した言社を参拝してミッションクリアである。

  

「私憧れだったんですぅ、下鴨神社に来るの」
「それは良かったな。神社大好きレジェなら絶対喜ぶと思ってた」
「いっぱいお願い事しちゃいました〜。今回のプレステ完全クリア、めざンモのヒット、TO-NAの紅白出場、コノさんのオールナイトニホンパーソナリティ就任」
「全部叶えてやろうぜ」

  

糺の森の中でクイズに参加してもらう人を集める一行。そこへスタッフがキーホルダーを手渡す。
「忘れてた忘れてた、1セットクリアする度にこの七福神キーホルダーを渡すんでした」
「7つ集めたら中華に行ける、ということですよね」
「ドラゴンボールじゃん。わくわくすっぜ」
「恵比寿様、七福神で唯一の日本出身ですよね」
「流石ニコさん。他は全てインドまたは中国由来の神様です。鯛と釣り竿を抱えている姿でお馴染みの恵比寿様は商売繁盛・五穀豊穣の神。TO-NAの更なる人気上昇、コノさんの実りある芸能生活を祈念します」

  

落としたくない第3問。教科は英語、ということになっている。

次の英題が表す日本の人気映画の作品名・シリーズ名を答えよ。
①Princess Mononoke
②The Eternal Zero
③Your Name.
④Cells at Work!
⑤Demon Slayer
⑥Bayside Shakedown
⑦Departures
⑧Spirited Away
⑨Antarctica
⑩The Boy and the Heron

「待て待て、これ英語だけの問題じゃないだろ」
タテルが指摘するように、単に日本語のタイトルをそのまま英語にしているとは限らない、というのがこのセットの難しいところ。その映画を知っているか、そしてそのあらすじまで押さえているか、試すものが多い。

  

「じゃあ⑨で!南極大陸!あれ、違う?え待って南極だよね……ごめんなさい、④で!はたらく細胞」
さらにここまで後半の番号を取れていたレジェも⑤の『鬼滅の刃』に甘んじる。カコも③の『君の名は。』を選択し一般人とタテル、コノに難問を託した。

  

「南極が確かなら⑨は『南極物語』かな?」
ニコのヒントを汲み取った一般人1人目が見事ファインプレーを決めた。しかしこの後、簡単な①②が駆逐されてしまう。次の解答者は⑦の『おくりびと』を正解するも、一般人ゾーン最後の解答者がお手上げ状態でそのまま時間切れ、2連続失敗となってしまった。
「仕方ないです、これは難しすぎた」
「タテルさんだったら何番行けてました?」
「⑧はわかる。⑥も何となく。コノは?答え言っていいから」
「⑥は湾岸を手掛かりに『踊る大捜査線』ですかね。⑧は神隠しだから『千と千尋の神隠し』。⑩は全然わからない」

  

⑩はそのまま訳すと「少年と(青)鷺」。宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が正解である。
「まずheronがわからない。わかっても鷺の出てくる作品が思いつかない。難問すぎるよ」
「南極物語もわからないです。私も南極大陸って答えてました」
「南極大陸はキムタクのドラマだよね。南極物語は高倉健さんの映画。踊る大捜査線2に抜かれるまでは邦画実写でNo.1の興行収入だった。国宝がね、さらに上いった」
「……」
「落ち込むなよニコ!良いパス出せていたじゃん。南極の英単語知ってただけでも褒められるべき」
「詰めが甘かった……くぅ!」
遂に泣き出してしまったニコ。そしてその横でカコも、生気を失った顔色をして俯いていた。

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