連続百名店小説『めざせポケンモマスター』No.025:ユイガオープンけっしょう!だいじょゆうにいどめ(ジェラート フィレンツェ/みなとみらい)

ポケンモマスターの道を歩み始めた、ヨコハマシティヤマシタタウンに住む19歳の少女・スミレ。優しい心の持ち主にしか姿を見せない希少ポケンモ・カビンゴを筆頭に個性豊かなポケンモ達を揃えている。
☆スミレの手持ちポケンモ(現時点)
・外に出てスミレと共に歩く
カビンゴ(アブノーマル派)
・カプセルに入れて持ち歩き
ユーカク(ほむら派)
スーミュラ(アイス派)
ハムライピ(ダーク派)
ムテキロウ(アルティマ派)
・そもそも自分自身
スミレジェ(ぶりっ子派)

  

灼熱のユイガビーチオープン、いよいよ決勝戦の幕開けです!決勝を戦う2人をご紹介しましょう。まずはヨコハマシティヤマシタウン、キューティーコンクール優勝も目指す奇跡のカビンゴ使い・スミレ!自慢のカビンゴを武器に2人の相手を圧倒してきました。その姿はまるで大横綱オーノーサト!
そんな新進気鋭のスミレに対抗するのが、ヨコハマシティトツカタウンから参戦のレジェンドトレーナー・レイ!トレーナー歴35年、俳優としてもレーサーとしても活躍する大物が、長年の相棒レンボーを引っ提げユイガビーチオープンに電撃参戦。10年ぶりの大会参戦というブランクを感じさせない試合展開で、準決勝では今年のビギコン覇者・ナギを経験の差で倒しました。
相性だけで見ますと、ぶとう派のレンボーがアブノーマル派のカビンゴに対して有利です。しかしカビンゴは準決勝、ハーブ・ぶとう派のヒタチヤマにまさかのフライ派の技を繰り出し大ダメージを与えました。どちらが勝つか全く予測不可能、非常に楽しみな決勝戦です。

  

「カビンゴちゃん、レイさんのレンボーは強い。特にあばれんぼうサンタに注意よ。それ以外にも様々な即興技が出てくるかもしれない。でもカビンゴちゃんなら大丈夫。良い戦いができるよ」
「ナギさんの思いも背負って頑張るンゴ」

  

大勢の観客が見守る中戦いが始まる。ぶとう派の技を先に食らうと不利になると判断し、先攻を取りたいスミレであったが、くじの結果レイの先攻となった。
「あばれんぼうサンタは未だ出さないわ。いけレンボー、とくめいリサーチ!」

  

「アブノーマル派の技だ」
「アブノーマル派の象徴カビンゴにアブノーマル派の技を……」
カビンゴは少しだけダメージを受けたが、これくらい受け止めて当然である。

  

「いけカビンゴ、ハナイキアラシよ!」
「ボオォゥッ!」
「来たわねフライ派の技。流石カビンゴちゃん、そこそこ食らったわ。でも勝負は始まったばかり。耐えられるかな?レンボー、あばれんぼうサンタ!」
「ンゴォォォ!」
「だいぶ食らった……でも負けないわ」
「負けないンゴ。まだ半分くらい余力あるンゴ」
「頼もしいわ」

  

「カビンゴ、おおきなはらのしたでよ!」
「レンボー、けんなるつるぎだ!」
「カビンゴ、デストロイヤーよ!」
「レンボー、サヤマシュートよ!」

  

互いに譲らぬ展開。スミレは差していた日傘を傍に置き、レイは溢れる汗をキッチンペーパーで拭う。
「いけカビンゴ、おなかかいかいだ!」
「えっ、おなかかいかい?」
「何故今これを?」
案の定レンボーには大したダメージを与えられなかった。

  

「レンボー、もう一度あばれんぼうサンタよ!」
「ンゴオォォ!」
「まだまだ平気よ。だってさっきのおなかかいかい、相手にダメージを与えつつ体力を回復させる技だから」

  

「1ターンを犠牲にしてまで体力回復を選択した。どうなんだこのスミレの作戦は」
「悪手じゃない?最初からデカい技打てばいいのに。何控えめなことやってんだよ」
「次で決めないと終わりかもね。レンボーにはかなりの余裕が見える」

  

ここで改めて派相性を考えよう。ぶとう派にこうかてきめんを取れる技の派はフライ・マジカル・ぶりっ子の3派。このうち、ぶりっ子派の技は習得していなくて、フライ派のハナイキアラシは同じ相手に対し2度繰り出すと威力が半減する。残るはマジカル派の技だが、あれ、マジカル派の技といえば……?

  

「カビンゴ、ムラムラルージュよ!」
公式戦では3度目となるムラムラルージュの使用。過去2回は繰り出しても相手のHPを削りきることができず苦杯を嘗めたが、スミレのカビンゴならではの特殊技として殊更磨きをかけていた。
「ボオォォォォッ!」

  

「レンボー、戦意喪失!スミレの勝ち!」
「……やった〜!優勝だよカビンゴちゃん」
「ムラムラルージュが決まって嬉しいンゴ!」
「よく頑張ったねぇ!ありがとう、初めての大会優勝もたらしてくれて」
「スミレさんのコーチングのお陰だンゴ。一緒にやってこれて嬉しいンゴ」

  

「スミレさん、天晴れですわ。完敗です」
「レイさん!良いファイトをありがとうございました」
「若い子には負けるものか、と思ったけど、私もまだまだね」
「いえいえ。貴重な経験になりました」

  

No.057 レンボー ぶとう派
あばれんぼうポケンモ
お江戸に蔓延る悪は見逃すまい。刀をぶんぶん振り回し、浮世の平穏を守る正義の味方。暴走のしすぎには注意。

  

大会の後は観客を巻き込んでのおやつタイムである。ヨコハマシティミライタウンのランドマークとうにある、休日ともなると子連れでごった返す人気のジェラート店が特別に出店。出場者および観客全員に1種類ずつジェラートが振る舞われる。ベスト4に進出したナギらは2種類、準優勝のレイとレンボーは3種類、そして優勝したスミレとカビンゴは5種類味を選べる。
「色んな種類あって迷っちゃうね」
「僕は果物系が食べたいンゴ。暑い時期の西瓜とか桃は最高だンゴ」
「桃はプレミアムフレーヴァーだって。普段は追加料金がかかるものよ」
「絶対食べるンゴ。追加料金には弱いンゴ」

  

券を貰いフレーヴァーを店員に告げようとした時、後ろから悲鳴がこだました。そこにはボケット団が立っていて、観客のジェラートを片っ端から強奪していた。
「何をするんだ!」

  

「何をするんだ、と言わ(以下略)
「予告通り来てやったぜ、ユイガビーチによ!」
「おいボケット団よぉ、子供もいるんだぞ、空気読めよ!」
「えっ、スミレさん……」初めて見るヤンスミのすがたに戸惑うレイ。
「空気なんてどう読むんだよ!」
「アタイら読み方わかんねえ。学校出てないから」
「お勉強くらいちゃんとやりましょうね、ボケット団ちゃん」
「おのれぇなめやがって!」
「ジェラートとポケンモはアタイらのものニャ」

  

ボケット団は改良版吸引機を振り回しポケンモを吸い取る。
「吸い取る吸い取る吸い取るニャ」
「責めるならアザトトガール責めなさぁい。散々おちょくられた仕返しよ」

  

「きゃっ!」
「レイさんのレンボーが……テメェらいい加減にしろ!いけカビンゴ、デストロ……」
「僕疲れたンゴ。技出せないンゴ」
「そうだよね……どうしよう」

  

「スミレちゃん、私のズバピカ使わせて」
「ナギちゃん⁈いいの?」
「緊急事態よ。私に任せて」
「あら、ズバピカじゃないの。弱そうね」
「見た目だけ華やかで中身は空っぽ。ちょいと踏んづけて終わりね」
「いけサムリナ、スコシモサムクナイワ!」

  

「ズバピカ!」
「はぁ⁈アンタ全然英語できないね、じゃねぇよ!」
「ズバピカってそんな口悪かったっけ?」
「英語できない人には厳しいのよ。サッチー、もうちょっと真面目に勉強してよ」
「ミッチーだっておバカじゃないの」
「うるさいわね、勉強なんて中2からしてないわ!」
「してないじゃねぇか!」
「ボケット団の活動に全てを懸けてるから!サッチーはどうなのよ。一生懸命やってんのかよ」
「何よ急に。一生懸命に決まってんだろ、馬鹿にすんな」
「……酷いわ!ミッチーの嘘つき!」
「何泣いてるんだよ」
「そうニャ!何が気に障るニャ!」
「アンタらのことなんか知らない!勝手にしろ!」
「お、おい……」

  

すったもんだの間に、攫われたポケンモ達は容器を破り脱出に成功した。ズバピカを先頭に、怒ったポケンモ達が総動員でミッチーとドラネコを襲う。
「ズバピカ、ズバリデンキデショウよ!」

  

「ギャーッ!し、死ぬ!」
「いっそのこと死んでしまいたいニャ!」
「テレビの前の皆は死ぬなよ!」
「いやーんばかーん!」

  

平和が戻ったユイガビーチ。カビンゴも無事にジェラート5点盛りを手に入れた。白眉はやはり桃。プレミアムを謳うだけあって独特の青い香りを表現できている。ほうじ茶のスクープと少しくっついていたが相性は悪くない。
果実系では梨もさっぱりした果実味で心地良い。西瓜も美味しいが、少し香料のわざとらしさを感じたと云う繊細なカビンゴ。
真夏の屋外とはいえ、さっぱり系だけだと物足りないのでほうじ茶を。茶の味の濃さが、爽やか系揃いの中でアクセントとなる。そしてアサイーヨーグルト。ヨーグルト味という重みと爽やかさを兼備する要素が加わることによりバランスの良い5種盛りとなる。
「でもコーンフレークは要らないンゴ。味気ない割に存在感が強すぎる、柔らかくてしっとりしたものに代えるンゴ」
「まあ。お贅沢で可愛いねぇ」
「お口が肥えて申し訳ないンゴ」

  

「ナギちゃん!ボケット団からみんなを助けてくれてありがとう」
「……相手が勝手に喧嘩して有耶無耶になっただけ」
「落ち込んでる?ごめん…」
「全然絆を築けていなかった。ズバピカに対して、同じ目線で接することができなかった。弱いのよ私……」

  

「弱くはないわよ」レイが指摘する。
「ズバピカとの戦い、骨があって楽しかったわ。反省することはあっても、弱くて負けたというのは変な話よ」
「レイさん……」
「ナギさんもスミレさんも、1年足らずでここまでポケンモと信頼関係築けるのは凄いことよ。私もね、レーサーから俳優に転身して初めてゲインしたポケンモがこの子でね、愛着はあったんだけど全然言うこと聞かないの。でもいつかレンボーに進化させて一生涯の相棒にすると誓ったの。そしたら仲良くなれて進化もして、あばれんぼうサンタという唯一無二の技も身につけた。今では自慢の相棒よ。一緒にバス乗り継いで、甘いもの買いに行くのが楽しいの」
「理想の関係性だ」
「ナギさんも、この経験をバネにズバピカに向き合って。進化したらこの子、最強のポケンモになるわよ」
「はい!」
「スミレさんのカビンゴは言うこと無しね。こんな若いうちから手持ちにして、しかも主に懐いて従順。毛並みも綺麗!」
「最高のコンビだンゴ」
「2人とも、楽しいファイトをありがとう。あそうだ、すごく美味しそうなクッキーの店あるんだ。今度一緒に買いに行かない?」
「是非是非!」

  

初めての大会優勝により、ポケンモマスターへ向け一つ箔が付いたスミレ。しかし間も無くとある別れが訪れることを、彼女は知らない。

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