連続百名店小説『めざせポケンモマスター』No.007:テオブさまざま、あめさんさん(バニラビーンズ/馬車道)

ヤマシタタウンに住む18歳の少女・スミレ(cv.レジェ)。ポケンモマスターを夢見て旅を始める。最初の手持ちポケンモになったのは、優しい心の持ち主にしか姿を見せない希少ポケンモ・カビンゴ(cv.タテル)であった。

☆スミレの手持ちポケンモ(現時点)
・外に出てスミレと共に歩く
カビンゴ(アブノーマル派)
・カプセルに入れて持ち歩き
ムゲンシャ(ほむら派)
スーミュラ(アイス派)

  

「ムゲンシャちゃん、スーミュラちゃん、おはよう!どうだった、カビンゴちゃんのお腹の寝心地は?」
「シャー!」
「ミュラミュラ!」
「気に入ってくれて嬉しいよ。今日はバシャロードで遊ぼうね。映画館行ってアクティビティやって、お昼ごはんはハワイアンだよ!」
「ンゴォォォ!」

  

雨の降るバシャロード。駅前は昔ながらの港町の雰囲気が漂う一方、橋を渡ればスミレの言う娯楽施設の揃ったショッピングモールがある。カビンゴはハワイアンフェスでハンバーガーやシュリンプ、マラサダなどを爆食し、映画館では1kgのポップコーンをあっという間に完食した途端に爆睡してしまう。世話の焼けるカビンゴであるが、スミレは頭を撫で撫でしてとことん煽てる。

  

スクリーンから出てきたスミレ達を見かけたボケット団。
「あの甘々アザトガール、どんだけカビンゴを甘やかすのよ」
「いくら食べるのが商売とはいえ、あんだけ自由にさせてたらキューティーコンクールなんて無理よ」
「そういえば昨日も買い物してたよなアイツら。休んでばっかだな」
「何週休2日制なんかしちゃってんのよ。こちとら休まず働いてろくに金も貰ってねぇんだぞ」
「今日こそあのぐうたらカビンゴを捕まえてやる!」
「あ待って、チョット・ダケ・ヨコハマやってる!観にいこうよ」
「アタイら金無いんだよ」
「でも観たい!11人の女子高生の等身大の青春を!」
「あれアイドルの映画だろ?ファン以外観ないって、恥ずかしい」
「いいじゃん、誰も気にしないって」
「アタイが気にするんだよ!」

  

「おいおい、いざこざしてるうちにアイツらいなくなったニャ!」
「まったく、ミッチーが余計なことに興味示すから!」
「サッチーが1人で乗り込めば良かったじゃないか!くだらない喧嘩吹っかけないで」
「いいから言い合いやめるニャ!追っかけるニャあやつらを!」

  

食後の運動にとボルダリングジムを訪れたスミレ達。運動は苦手なスミレであったが、岩登りであればそこそこやれてしまうものである。ムゲンシャとスーミュラも軽い身のこなしで登る。カビンゴはどう考えてもホールドを壊してしまいそうなため応援に専念した。
「みんなよく頑張ったンゴ!」
「見ててくれてありがとう!じゃあ駅に戻りつつおやつ食べようか」

  

雨の降る中、橋を渡ると、チョコレート専門店のバニラビーンズが現れた。ここのイートインでおやつを食べようとするのだが、目の前でちょうど満席の札を出されてしまう。
「商品見ながら待ってようか」
「あのすみません、外でお待ちいただけますか?」
「へっ?」
「ご案内しますので。…傘をお持ちになって」
「傘…ですか?」

  

せめて天井のある領域で待てるものだと思っていたのだが、当たり前のように大雨の当たる外壁沿いまで誘導されてしまう。さすがのスミレも、態度にこそ出さないが不服そうであった。カビンゴは大きな蓮の葉を差しながらどっしり構えて待つ。
「QRコード読み取ってメニュー見れるって言われたけど、片手塞がっててやりづらい…」
「メニュー決まりましたか?」
「傘持っちゃってるから読み取れなくて!」

  

珍しくボケット団以外の人物に楯突くスミレ。するとカビンゴはその場で軽く飛び上がって地面を揺らし、スミレを目覚めさせた。
「し、失礼しました…もう少し考えさせてください…」
「かしこまりました」

  

その後何とかメニューに辿り着けたスミレ。13種類のタブレットショコラを食べ比べできる「チョコレートジャーニー」をカビンゴと共に注文する。
「カビンゴちゃん、さっきはカッとなって心配かけちゃった。ごめんね」
「大丈夫だンゴ。傘持ちながら待つのは大変だンゴ」
「こうやって雨の中カビンゴちゃんと佇んでいるの、トトロのワンシーンみたいで風流だね」
「ンゴ?」

  

「サッチー見てみろ、アザトガール達が大雨の中で見せ物にされてる!」
「可哀想ね。いい気味だけど」
「アザトガールはこれで風邪引いて明日以降もお休みね。そのままフェードアウトかなあ?」
「ずぶ濡れおばけともサヨナラバイバイね」
「私たちが捕まえてやるからな!おりゃー」
「待てミッチー。勝負を急ぐな、もう少し泳がせろ」
「はぁ⁈そんなことしたらまた逃げられるわよ」
「もっとずぶ濡れになって弱ったところを狙う!少しでも勝算を高めてから決行よ」
「そんな遠慮は結構!早く仕留めてやる!」
「待てよ」
「離せって」
「ああもう!こっちがずぶ濡れになるニャ!猫は寒いの苦手ニャ!」

  

10分程待って漸く入店したスミレの一行。冷たい雨に打たれた体を温めるため、セットのドリンクは温かい紅茶にした。

  

そしてチョコレートジャーニーの13粒が到着する。
「当店イチオシのテオブ達が各々の特性を活かして作り上げましたチョコレート。1〜8番食べ比べていただいて、9番目はその中のどれかと同じものになっていますのでぜひ当ててみてください」
「テオブには様々な亜種がいるんだよね。アース派テオブは木の実のような大地の味、ぶりっ子派は甘酸っぱいベリーの味、けむり派は大人のスモーキーな味、似てるようで全然違うのがステキ〜」

  

No.133 テオブ アブノーマル派*
天からの恵みであるカカオを神技で美しいチョコレートに変える。得意とする産地・含有量により様々な派にフォルムチェンジできる。

  

==========

  

「タテルさんとレジェさん、実際に1〜8番目のチョコを食べていただき、感想を吹き込んでください。そして9番目のチョコレートが何か当ててください。不正解の方は電気椅子です」
「うわぁ嫌だ…外したくない!」
「タテルさん、運命を共にしませんか?」
「どういうことだレジェ?」
「相談して答え決めましょう。私あまり詳しくないので、タテルさんに頼りたいです」
「まいったなあ。レジェに頼られるなんて嬉しいよ」

  

満更でもないタテルは早速、アブノーマル派のテオブCL55(コロンビア55)からいただく。優しい甘さですっと溶けていく。
・テオブDM60(アース派、ドミニカ60)
香ばしさがあるが、だんだんコクが出てきてやはりすっと溶ける。
・テオブHT68(ハーブ派、ハイチ68)
トロピカルと言われればトロピカルだが、個性はちょっと弱め。
・テオブBE70(ぶりっ子派、ベリーズ70)
後味が酸味。この辺りから甘さが控えめになる。
・テオブCL70(アブノーマル派、コロンビア70)
CL55の優しい味はそのままに、苦味とのマリアージュで魅せる。
・テオブEQ70(アース派、エクアドル70)
綺麗な味だなあ。
・テオブTT77(けむり派、トリニダード77)
スモーキーさがブルーチーズみたいな味わいになって現れている。
・テオブGN80(けむり派、ガーナ80)
ここまで来れば甘さは控えめであるが、コクがあることはよくわかる。かなり複雑なフルーティさ。

  

「さあ9番目のチョコはどれでしょう!」
「どうです、タテルさん?」
「まず前半3つのような甘さは無い。そしてTTのブルーチーズみ、CLの優しさは感じられない。GNの複雑さとも違う」
「となるとベリーズかエクアドルかですね」
「エクアドルよりかは個性を感じたかな。だからベリーズにします!」
「じゃあ私はエクアドルにします」
「ちょっと待って、答え合わせるんじゃなかったっけ?」
「答え合わせるとは言ってませんよ。参考にしたい、というだけです」
「ズルいぞそのポジション!まあいいけどさ!」

  

「それでは正解発表です」
「あぁ〜、こわ〜い!」
「…痛ってぇ〜!」
正解はエクアドルであった。タテルのみがビリビリを食らう。

  

「あ〜良かった!タテルさん、正解に導いて下さってありがとうございます」
「良かったねレジェ。俺は再起不能だよ。七人のパティシエに怒られる!」
「大丈夫ですよ、立ち上がってください。ほら、手貸してください」
「…まったく、悪い気はしないな」

  

==========

  

「おいミッチーサッチー、何してるニャ?」
「ん…寒過ぎて寝ちゃってた!」
「ああ体が震える…ハックション!」
「外で寝るから風邪引いたニャ!」
「カビンゴ奪う体力が…」
「今日はもう帰ろ…」
「いやーんばかーん…」

  

ボケット団に遭遇せずに済んだスミレ一行は引き続きチョコレートを味わう。みなとみらいブレンドは多様な甘さがそれぞれの深度で刺さってきて、TTで感じたブルーチーズみもたしかにある。

  

「みんなはフレーヴァー系の方が好きかな?」
「シャー!」
「ミュラー!」
ベリーベリーは穏やかにフレーヴァーが広がる。一方キャラメルは味と食感共にハッキリとしている。クッキー&ニブは食感のコントラストがボヤけていて却って面白い。

  

くしゃみが出そうで出ないスミレ。
「大丈夫ンゴ?」
「…きゅん」
「くしゃみしてるンゴ。風邪引いたンゴ?」
「大丈夫だよ〜」
「暖かくして帰るンゴ」
「シャー!」
「ありがとうムゲンシャちゃん、カビンゴちゃん」

  

少し寒い思いはしたものの、ボケット団に襲われることも無く平和に休日を過ごしたスミレ達。たまにはこういう日があっても良いものである。

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