東大卒の肩書きを活かしクイズ番組でも大活躍するグルメタレント・TATERU(25)が、「宮崎美子の再来」と持て囃される気鋭のクイズアイドル・カゲ(綱の手引き坂46)と繰り広げる東北1泊2日の旅。全7編。
「問題」
考案者の名前から命名された、デメルなど
「ザッハトルテ!」
「不正解」
「えっ?ザッハトルテでしょ?」
「押すタイミングが不正解。遅すぎ。『デメル』の『デ』が聞こえた時点で絶対に押されるから」
自分の選択肢は間違えておきながら、人には厳しいネット弁慶のタテル。
「シュトラウスに着いた。カゲは不正解なのでザッハトルテは食べられません!」
「鳥渡!」
「嘘だよ、食べて食べて!」
しかしこの日は火曜。イートインは閉鎖されていた。仕方ないので市役所裏の公園の四阿で食べることにし、2番目のいとこ素数コンビニでコーヒーを発注した。
「じゃあザッハトルテから。外側は…ガナッシュに近いな。砂糖のざらつきがそこまでない。喉に引っ掛からなくて食べやすい」
「ていうか私、寒いんですけど…」
「何言っとる!アメリカ大陸横断スーパーハイパーウルトラめちゃすごナンバーワンクイズの決勝はニューヨークの屋外だ!これくらいの寒さ、慣れろ!」
「はい!…」
太だ当たりの強いタテル。
その他の商品は1つを半分こして食べた。火曜限定のエクレアは、チョコクリームはよくできていたが生地がモサついていた。シュークリームはミルクの味が強く、タテルには却って新鮮であった。
カゲは薑入りホットドリンクで体を温める。一方のタテルはアイスカフェオレだ。秋の東北は、暑がりのタテルには丁度良かったのだ。
パウンドケーキには口に余るくらいたっぷりのココナッツが入っていた。南国の果実の味もあり面白い。一方アップフェルシュトゥルーデルは、林檎王国青森にありながら林檎らしさが無かった。
沢山のスイーツを食べ、2人の躰は温まった。次の目的地に移動する列車まで時間があったため、海辺の景色を堪能することにした。
二等辺三角形の建物が目をひく観光物産館アスパムで100円の林檎ジュースを買い、裏手に回る。そこに広がるは、凛々しい陸奥湾の青であった。
「右に見えるのは下北半島で…」タテルは嘘をついた。そこに見えるのは夏泊半島。下北は遥か奥だ。
「左には船がある。クイズプレイヤーなら見ておきたい資料館だ。行こう」
そうして2人は、ねぶたの家ワ・ラッセと八甲田丸を堪能した。八甲田丸の手前の広場でタテルが指を鳴らすと、突如としてどろんこクイズのセットが現れた。
「さあ2ndステージです。今からカゲにはYes-Noクイズをやってもらいます!」
「え?いきなり?」
「いいから、上着脱いで跣になって。不正解なら青森に置き去りです」
「行くぞ、問題」
去年2022年の紅白歌合戦で石川さゆりが歌った曲は『津軽海峡・冬景色』である。YesかNoか
カゲはNoの方に走って行った。皆さんご存知の通り、これは正解だ。
「すごい…よく当てたな。普通Yes行くよな」
「この津軽の地で態々問題出すということは、Yesだと思うじゃないですか。でも逆に、Noの方が良いんじゃないかってやるのが、QuizHookのやり方」
タテルは罰として、鉄道系YouTuber・桂太郎の若く歌謡碑から流れる音に合わせて『津軽海峡・冬景色』を絶唱した。音痴のタテルは取り巻きに野次られ、終いにはYesの先にある池に突き落とされた。
「タテルさん、あと30分で電車来ますよ。早く着替えて行きましょう」