連続バレンタイン小説2024『日仏ショコラバトル』仏-1(AGNES & PIERRE/Rodez)

フランス帰りの革命家カケル。人気女性アイドルグループ「檜坂46」を率いている。日本に帰って初めて迎えるバレンタインのシーズン、フランス時代を恋しく思いサロン・デュ・ショコラへ足を運んでいた。

「随分いっぱい買ってますね、カケルさんっ!」1人の女性が声をかける。

「あれ、naじゃん。どうしてこんなところに」

「どうしてって…単純にチョコ大好きだから」

「俺と同じガチ勢だ。素晴らしい趣味してる」

「ありがとうございます」

「何買った?…『アニエス エ ピエール』?聞いたことないな」

「私も全く初耳です」

「調べてみよう…ロデーズか。地味なところだな」

「でもすごいらしいですよ。カケルさんお酒お好きですよね?これ買っていったらどうでしょう?」

「お、2箱買えば十分シェアできそうだな。よし、大人メンバーで一緒に食べよう」

  

2月12日、深夜ラジオ出演のため集まっていた4人のメンバー・mrh、drn、na、sikと共にチョコを食べる。

「カケルさんありがとうございます。本当は私達がカケルさんにあげなければいけないのに」

「どういうことよそれ」

「だってヴァレンタインデーだから…」

「ヴァレンタインデーにはチョコを贈る決まりなのか?」

「日本ではそうですけど。フランスは違うんですか?」

「恋人の日、くらいのイメージだ。贈り物は何でも良い」

「男性が女性にあげるのも普通なんですか?」

「もちろんさ。日本のバレンタインはただのチョコあげっこだ。真の意味を理解しないで乗っかる奴が多すぎる」

なんて言いつつもチョコレートを差し出すカケル。

  

「フランスの小さな街で気を吐くショコラトリーのリキュールショコラ。味紹介は入ってないから売場で撮った資料送る」

「味紹介入ってないの不便ですね」

「それがフランスのやり方なんだよ。チョコ好きで知られるコリエ・タスク氏も苦言を呈していたけど変わらない…」

「どちら様ですか?」

「そこ突っ込むか…アナウンサーだよね?」

「知らないです。お母さんに聞いたらわかるかな…」

「まあいいや、食べようぜ」

  

シャンパーニュ、ウイスキー、ラム、アルマニャックが2粒ずつ、中央にハーブリキュールが1粒。詳細を語りたいと思ったが、果実味こそあれどうも皆似たような味だしそもそも小粒だしで書き分けられない。酒をガナッシュに混ぜるとどうしても中途半端にザラついた口当たりになってしまい、それがほぼ全ての粒において印象に残ってしまう。唯一判別できたのはハーブ酒で、ハーブの香りはやはりボンボンショコラによく合うものだと実感した。

  

「酒好きの出来心で買ってしまった。酒主体のショコラは金輪際買わないと誓わないと。みんなも気をつけるんだぞ」

「私達は別に…カケルさんがこだわり強いだけです」

「そ、そうか…まあいいや、じゃあ明後日のMV撮影終わったらショコラパーティの本番、みんなでやろうぜ。サロショ常連の店の商品だから間違いないだろう」

「楽しみですねぇ」

  

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