連続かき氷小説『アイツはゴーラー』5

不定期連載『アイツはゴーラー』
アイドルグループ「綱の手引き坂46」の特別アンバサダーを務めるタテル(25)は、メンバー随一のゴーラー(かき氷好き)・マリモ(19)を誘い出し、美味しいかき氷探しの旅を始めた。

  

梅島駅を越え、今度は北に約500m。足立区の雰囲気には似つかわしくない一流パティスリーが現れた。向かいの駐車場に車を停め店に入る。
「あら、素敵なケーキが並んでいますね」
「とても足立区とは思えないでしょ」
「何回言うんですか?いいじゃないですか」

  

「今日食べるのはかき氷。とりあえず席座ろう」
天然氷を使ったかき氷。オーソドックスなものもあるが、この店自慢のケーキ風に仕立てたものが特徴的だ。
「かき氷に合うのは苺系かな。よし、俺はショートケーキ氷」
「私はティラミス氷で。あとケーキセットもお願いします」
「よく食うな」
「ケーキも美味しそうだったんで」

  

「初めての足立区、楽しいです」
「そんな気に入ってもらえるとは思わなかった」
「タテルさん、足立区に恨みでもあるんですか?」
「恨みというか、俺すごい嫌われてるんだよね足立区の人間に」
「どういうことですか?」
「わざとぶつかられるし、ちょっと目が合うとヤられる」
「足立区に限った話じゃないですって」
「ホント気をつけてよ。1歩外を出たらそこは常識の通用しないヨハネスブルク。自分の身は自分で守るんだぞ」
「いい加減にしてください!もっと楽しい話しましょうよ」
「じゃあ今度『ぶっ翔んで足立区』撮ろうと思ってるけど、来る?」
「何ですかそれ?」
「綱の手引き坂メンバーに足立区の美味しいものを食べてもらうツアー」
「いいじゃないですか。もちろん行きますよ」
「詳細決まったらみんなに伝えるね」

  

ショートケーキ氷がやってきた。たっぷりの苺ソースと生クリーム、そしてスポンジも入っている。まさしくショートケーキだが、氷の口溶けがよくスルスルと入る。苺ソースはよく煮詰められていて甘さが凝縮されている。

  

「タテルさん、かき氷もケーキもとても美味しいです。足立区にも良い店あるんだ、って誇りに思ってくださいよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
「次は鎌倉行きません?」
「鎌倉?ずいぶん遠いけど」
「タテルさんとナオさんがやっていたドラマ『nao』、感動しました。由比ヶ浜の近くにいいかき氷屋さんがあるので、聖地巡礼したいです」
「いいね。行こう行こう」

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