超大型連続百名店小説『世界を変える方法』第2章:言論の自由を健全化しよう 3話(菊見せんべい総本店/千駄木)

かつてカリスマ的人気を集め社会を変革しかけたアイドルグループ・檜坂46。同じく革命を目論んでいるフランス帰りの男・カケル(21)に招かれ、今再びこの国を変えようと動き出す。
*この作品は完全なるフィクションです。著者の思想とは全く関係ありません。こんなことしようものなら国は潰れます。

  

「酷いな…見てよコレ、俺が捕まえた性犯罪者に対するヤホコメ」

  

そんな服装する方が悪い
触ってください、って言ってるようなものだよね
証拠ないだろ。コイツの自演の可能性だってある

  

「うわ…被害者なのに何で叩かれてるの?」
「もちろん犯人を断罪するコメントも一定数あるが、こういう意見が罷り通ってしまうのがこの国の現実だ。そもそも性犯罪者に対する刑罰が甘すぎるし、性犯罪を告発することを悪とする風潮が強い。アメリカでは終身刑になるような犯罪が日本では無罪同然だ」
「いや、無罪はさすがに…」
「執行猶予なんかついちゃって、かすり傷にもならないだろ。ほんで今話題のジャネーノ問題だって、ヤホコメ民はマスコミ潰しに躍起。肝心の性犯罪とか性加害からは目を逸らすしむしろ邪魔するような物言いする。果たしてこれが健全なのか?国際社会の一員として恥ずかしくないのか⁈」
「…」
「色々酷いプラットフォームはあるが、公共性が高いくせにヘイトを数多放置しているのがヤホコメだ。まずはここから潰す」

  

ある日、ネットワーク戦略室にて作戦の様子を見守るカケル。
「カケルさん勘弁してください、せんべいはダメでしょ」
「そうか?」
「せんべいの欠片がキーボードの隙間に入ったら動き悪くなるの、わかるでしょう?」
「なるほど。じゃあ後で控室で食べるね」
「お願いしますよ。じゃあ早速やっちゃいましょう。まずは個人を潰します。例えばこのコメント」

  

ジャネーノや冬元の一味を紅白に出すな。あんなお遊戯会見たくない

  

「何もわかってねぇ。テメェは一生集団行動でも観て軍歌でも聴いてろ」
「特殊なシステムにより、煩雑な手続きを踏まずともIPアドレスを知ることができます。サイバー攻撃をしかけてみましょう」
「すごい。こんなお手軽にできるものなんだ」
「これで相手はネットワークにアクセスできなくなりました。犯罪者1体消滅です」
「迷走中のハンターみたいな数え方すな。でもこれを一人一人やっていくのは大変だろ」
「だからもちろんヤホー本体も攻撃します。たださすが天下の大企業ですから、セキュリティは堅…くないぞ!」
「この国のデジタルシステムは脆弱だもんね。まあこれも出る杭を打って優秀な人材を潰すネット民の功罪さ」

  

これによりヤホーはサイバー攻撃を受け、ヤホコメ及びヤホー見栄袋へのアクセスが停止した。カケルが千駄木で買ってきたせんべいで祝杯をあげる団員達。
「程よい醤油の香り…やっぱせんべいは手焼きに限る!」
「普通のせんべいとの違いがわからないな…」食に一家言のない団員は首を傾げた。
「じゃあ甘せんの方食べてみたら?」
「いただきます…あ、結構食べやすいですね」
「ざらめせんべいみたいなものかと思ったら上品な甘さで」
「醤油味が甘さと融合していて不思議な感覚だよね」
「緑のやつは何ですか?」
「甘せんの抹茶味だ」
「抹茶ですか。どれどれ…わ、思ったよりお茶の味だ」
「面白いだろ。俺はこれが一番好き」
「まさかせんべいでこんなに盛り上がれるなんて、カケルさん見る目がありますね」
「そうか?口コミサイトで調べただけだ」

  

カケル共が呑気にしている一方で、攻撃を受けたヤホーは大慌てであった。復旧の目処が立たぬまま1日が経つと、カケルは「アパーランドの皇帝」を名乗り犯行声明を出す。

  

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