超大型連続百名店小説『世界を変える方法』第1章:真の正義を生み出そう 5話(はし本/江戸川橋)

かつてカリスマ的人気を集め社会を変革しかけたアイドルグループ・檜坂46。同じく革命を目論んでいるフランス帰りの男・カケル(21)に招かれ、今再びこの国を変えようと動き出す。
*この作品は完全なるフィクションです。著者の思想とは全く関係ありません。こんなことしようものなら国は潰れます。

  

襲われた犯人は東京湾岸の倉庫に監禁された。持っていた物は全て没収され、庫内にも物が一切ない。外は電流の流れる有刺鉄線に囲まれており、脱出は不可能となっていた。

  

「大丈夫なんですかこんなことして…」
「いいんだよこれで」
「単純にゆうか…」
「俺のやりたいことに賛同した以上その発言は許さない。裏切るようなことしたら全員処すからな」
「それはそうとて、捕まりません?」
「今のサツのレベルじゃ強盗致傷なんて捕まえられない。マスコミも一度報道したきりで後追いはしない、だから世間の関心も向かないのさ」

  

そしてカケルは大きなプロジェクトの話を始める。
「あそこには今後捕まえた奴らをぶち込んで保管しておく」
「保管?人間を?」
「ああ。刑務所みたいだけど実態はよりハードだ。収容された害悪どもには一切のものを与えない。アイツらには何の自由も許さない」
「でも食事とかは与えるんですよね?」
「やるわけないでしょ」
「え、マジ⁈」
「飢えて野垂れ死ねばいい。一生消えない心の傷を負わせた害悪どもに人権はいらない」
「気持ちはわかりますけど、さすがにやりすぎですって」
「それくらいやらなきゃ納得いかない!被害者とその周辺の人物は一生苦しむ。でも加害者は数年自由を奪われるだけ。釣り合いとれてないだろ!」
カケルの剣幕に、檜坂メンバーは黙ることしかできなかった。正義を護りたいという意志は感じられるが、この世の秩序を乱す危険な思想であることは百も承知だ。ここでカケルと手を切りたい、でもそんなことしたら殺される。

  

「怠慢の警察と石頭の裁判官には退場してもらおう。これからは俺らで新たな秩序を築く」
「そしたら私たちは何をすれば良いのでしょうか?」
「プロパガンダだ」
「プロパガンダ?」
「メディアを通じて市民を俺らの思想に誘導する」
「人々を操る、ということですか?」
「その通りだ。この国を変えるには世論を操作する以外に方法がない。やり方は色々あるが、君たちには『楽曲』という武器があるよな。『ノイジーマイノリティ』とか『Discord』など、力強いメッセージ性のある曲の数々で人々の心を揺さぶった」
「そうですね」
「今もう一度、こういう曲を出すんだ」
「榎坂時代の路線に戻る?それはちょっと…」
「冬元先生にはもう頼んである。世の中の不条理にノーを突きつける歌詞を、強烈なメロディに載せて届けたい」
「話が早すぎる…」
「タイアップも頼んである。楽曲を披露できる場所も今まで以上に用意してもらったから、全力でやれよ」

  

そう言ってカケルは鰻重を差し入れた。どんなに警戒心の強い人でも、鰻重を差し入れさえすれば刃向かうことはないという考えだった。
「江戸川橋『はし本』の鰻重だ。180年の歴史がある老舗のうなぎ、味わって食うんだぞ」

  

臭みがなく、噛むと甘み旨みがよく出てくる上質な鰻に舌鼓を打つカケルとメンバー。驚くべきは値段の安さ。並なら4000円を切る。これでこのクオリティだからコスパは最高だ。

  

「店で食べる時は鰻重前のつまみも楽しめるからな。ヒレ串なんかね、ジャリっとした皮目とふくよかな身のバランスが最高なんだよ。野望が実現したらみんなで食べに行こうな」

  

メンバーを手懐けることに成功したカケルだったが、絶えず起こる憎き犯罪に心を痛める日々が続いていた。中でも性犯罪に関しては、人権の国フランスでの暮らしが長かったこともあって、日本での扱いに違和感を抱いた。教育業界も芸能界はじめ、あらゆる業界が性問題に汚染されている。何とかせねばと考えていた矢先、次の事案が発生する。

  

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