妄想連続百名店小説『彩とLOVE AFFAIR』7. JUST A MAN IN LOVE(シーガーディアンⅡ/元町・中華街)

グルメタレント・TATERU(25)が、モデルとしても活躍するアイドル・アヤ(24・綱の手引き坂46)と繰り広げる、夢のような禁断の横浜デート。

  

「マリンルージュで愛されて大黒埠頭で虹を見て…」
サザンオールスターズのファンであるタテルは、聖地を前に興奮していた。
「よっしゃ、飲むぞ〜!」月餅10個と肉まん4個を平らげたアヤも気合い十分。

  

メニューを見るタテルは、少し訝しげな表情で店員に問う。
「あれ?ラブアフェアってカクテル、ありませんでしたっけ?食べログのメニュー写真で予習したんですけど」
「ラブアフェアはウチにはないですね…」
「そうですか…」
おまけに電波が入らないため、スマホで検索することもできずモヤモヤするタテル。どうやらこの近くにあった「スターライトバー」のメニューが紛れていたみたいだ。

  

「アヤはバー初めて?」
「うん、初めて。何頼めばいいかな?」
「強いお酒とか飲んだことある?」
「ない」
「なら飲みやすいのから始めよう。店員さんに聞いてみる」
「それだと『ヨコハマ』がオススメですね。オレンジジュースが入っていますし、扱っているお店はこの近辺でも少ないです」
「じゃあそれを2つ」

  

「ん!飲みやすいねコレ」
カクテルでは掟破りであるはずの、ジンとウォッカを使った複数ベース。さらにアブサンも少量加えられていて強めのカクテルに思えるが、実際はオレンジジュースとグレナデンシロップにより飲みやすい仕上がりになっている。アヤは3口で飲み干した。
「おいおい、速いって。飲み放題じゃないんだから」
「すいませ〜ん、バンブーをお願いします」
「しょうがないな…僕はウォッカベースの何かを」
「でしたら、メニューにないんですけど『バラライカ』はどうでしょう。レモンジュースとホワイトキュラソーを使っています」

  

こちらは打って変わってドライなカクテルで、タテルはチビチビと嗜んだ。
しかし同じくドライ系のバンブーを、アヤは5口で飲みきる。

  

「ミリオンダラーお願いします」
「ギムレットください」
「ブラディーメアリーを」
「マティーニ」
「大丈夫?それマジ強いって」
「X.Y.ゼェッート!」
「マジンガーZみたいに言わないで!どうしたんだアヤ、キミって酒豪だったのか?」
「いつもはそんなに飲まない。けど今日は飲みたい気分」
するとアヤは突如号泣する。
「今まで嫌なこと、いっぱい言われた。傷つくこともたくさんだよ」
「…」
「でもタテルくんに出会えて、自分に正直になれた」
「アヤ…」
「だからもうくよくよなんてしない。私は最強!」
「喜んでいいのかわからないよ〜」

  

ピッチの速いアヤに合わせた結果、元来酒に強いはずのタテルもかなり酔ってきた。まさしくサザンの歌の通り、タテルはシーガーディアンで酔わされた、美酒にも、アヤにも。

  

閉店時間まで飲んだ2人。アヤは眠ってしまった。
「もう、飲みすぎだってば…」
仕方なくアヤをおぶり部屋へ帰す。

  

「タテルく〜ん、どこ行くの〜」
「どこって、俺の部屋に戻るんだけど」
「え〜、寂しい。まだ離れたくない…」
「さすがにおしまい」
「いいじゃん、今日1日楽しかったもん」
クライミングを楽しみ、夢のことで喧嘩し、身を挺して不審者に立ち向かい、お互い足裏を見合った2人に、もう怖いものはなかった。
「仕方ないか、一緒に寝よう」
「最後の夢、見させてください」

  

夜が明けると、アヤの姿はなかった。枕元には、一万円札と手紙が置かれていた。

  

夢を見させてくれてありがとう。今日からまた現実でお仕事頑張ります。チートデイになったらまた会おうね♡

  

タテルの首筋に、夢の跡が光る。

  

電話が鳴った。
「ご苦労だねタテル」
電話の主は、綱の手引き坂46総合プロデューサーの冬元だった。
「楽しかったか、アヤとのデート」
「はい、楽しませていただきました」
「それは良かった。じゃあ3日後の会議、よろしく頼むよ」

  

–完–

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です