妄想連続百名店小説『彩とLOVE AFFAIR』5.あの時代を忘れない(同發本館/元町・中華街)

グルメタレント・TATERU(25)が、モデルとしても活躍するアイドル・アヤ(24・綱の手引き坂46)と繰り広げる、夢のような禁断の横浜デート。全7話。

  

日は暮れ、夕飯の時間となった。しかし断続的に食べている2人は、あまりお腹が空いていなかった。
「じゃあ刺激求めに行く?中華街来たらやっぱ…足つぼでしょ!」
「足つぼ⁈あれ痛いんだけど…」
「つなあいであるような足つぼマットとは全く違う。人の手で押してもらう方が気持ちいいぞ」
「行くか…」

  

あまり乗り気ではないアヤを連れ、鵬天閣脇の路地に入っていった。無機質なビルの、狭く急な階段を登った先に、足つぼの店がある。

  

受付で代金を支払い、2人は靴下を脱ぐ。
「お、足の指が長い。さすがモデルさん、美人の足裏だ」
「どこ見てんのよ!」
「失礼。見たくなっちゃって。足裏専門家の血が騒ぐのよ」
「何、足裏専門家って。私の足裏見たいだけでしょ」
タテルは図星だった。

  

「強さはどうしますか?」
「僕足つぼ初めてなんでとりあえず激痛で」
「え〜、タテルくんチャレンジャーね。私は真ん中くらいで」

  

「あ、痛ってぇ!ムリムリムリ、激痛はダメだ」
「じゃあ少し弱めますね」
「あ、痛い痛い痛い!本当に足つぼって痛いのね!」
「ほら言わんこっちゃない。食べすぎよ。もっと痩せなきゃね」
タテルを挑発するアヤにも、魔の一撃が。
「痛ったぁ!」
「食べなさすぎ。デブより痩せの方が不健康だからね」
「でもいいね足つぼ。今度メンバーと一緒に来よう」
「その時は俺も一緒に…」
「ダメよ!ヘンタイ足裏専門家はお断り。もし来たら激痛コース60分ね」
「ヘンタイ言うな!」と言いつつどこか嬉しそうなタテル。

  

足つぼを受け足取りの軽くなった2人は中華街の大通りに戻った。
「俺がオススメの店紹介してあげる」
「タテルくん頼もしい。中華街って店いっぱいあってどこ入ったらいいかわからないもん」

  

行列にハマってしまった。団体客で2階3階は埋まっていたのだ。1階にある4卓を、当日客で回す。
「あれタカハシさん、全然戻って来ないな。別館見てくる、っていったきり」後ろに並んでいた中年男性達があたふたしていた。
「あの、別館は目と鼻の先ですよ」いてもたってもいられず指摘したタテル。
「そうですか…なんで戻って来ないんだろう。あ、帰ってきた」
「やってませんでした」
「別館は休業中みたいですね。ここに並んでいた方が良いです。待てば入れますから」
「タテルくんってほんと優しいね」アヤが言う。

  

10分くらいしてタテル一行が席に通された。そしてまもなく、隣の席に中年男性達も通された。店員は忙しそうに動いており、中華街特有の少し上から来るタイプの接客である。
「俺はもう決めてる。パーコーカレーだ。メニューに載ってないやつ頼む俺!」
「タテルくんって、優しいけど鼻につくね」冷静にツッコむアヤ。
「あ、皮付き豚バラ肉チャーハンがある…ここの皮付き豚バラ肉、絶品なんだよね」
「そうなんだ。でも私、チャーハンはいらない。皮付き豚バラ肉だけでいいや」
「そっか。あとシュウマイも頼もう」
「シュウマイってなかなか食べないね。シウマイ弁当くらいだ」
「シウマイ弁当?あまり好きじゃない、俺はいつも横濱中華弁当だな」
「もうタテルくん!いいじゃん人の好みくらい!」

  

紹興酒を手にしたタテルは、メニュー選びで悩む隣の中年たちが気になっていた。
「皮付き豚バラ肉食べてください。ここのは絶品ですよ。チャーハンと合体したやつもオススメですよ」
「へぇそうなんだ。ありがとう。君若いのによく心得ているね」
「いえいえ、食べること好きなので」
「そうか、若いうちから食を究めるなんて素晴らしい。将来が楽しみだ。そこにいるのは彼女さん?」
「はい、そうです」
「彼女さん、この人いいパートナーになると思うよ。大事にしてあげて」

  

料理がやってきた。
「うわ、やっぱ崎陽軒のシウマイとは違う。貝柱の旨味が立ってる」
「ホントだ、出来立てのシュウマイってこんな感じなのね」
「豚バラ肉どうだ?」
「美味しい。皮の感覚、病みつきになる。でも危ない、どんどん食べたくなっちゃう」
「チャーハンも頼む?」
「いや、いらない。ここから先は我慢させて。太っちゃう」

  

「大丈夫だよ食べなさい」隣の中年男性も加勢する。
「ネットの声より生の声が大事だ。それを踏まえてもう一度考えてみて」
「…食べる。でもタテルくんも少し食べてね」
「もちろんさ。俺いつも、オカンの残飯処理班だから」

  

パーコーカレーがやってきた。ケンミンpresents焼ビーフンショーで紹介されていた中華街のカレー。中華ダシの効いた、とろみのあるカレーだ。
「普通のカレーとどう違うのかな」
「なんか通常のと比べてスパイスの1つ1つが沸々と立っている感覚。面白いけど、玉ねぎ多いな…」
「タテルくん、ドロッドゥロッのカレーの方が好きそうだもんね」
「まあな。パーコーは、衣がカレー風味だ。お肉は、おぅぅ!」
「タテルくん?」
「骨がある。奥歯の窪みでグキッて噛んだ。痛ってぇ…」
「虫歯の詰め物か。私もよくやっちゃう。大丈夫、そのうち治るから」
「そう?…ま、普通にカツカレー食べた方がいいな」

  

「豚バラチャーハン、美味しい!彼女さんも食べてみて!」
中年男性達の後押しもあり、楽しい夕食となった。

  

NEXT

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です